おたま

味噌汁を注ぎながら思い出す

我が奥さんが言うには

義父はこう教えたそうだ

 おたまで取りすぎるな

 こぼしやすいから

我が奥さんが子どもの頃のエピソードである


まったくのおっしゃる通りで

がめつい娘婿は取りすぎてコンロを汚す

そりゃIHだから台拭きで済むけど

サッと一拭きで済むけど

失態は失態である

亡き義父も見ておられよう

おたまからはみ出したワカメとかが

つゆを滴らせてコンロを汚す

全部を掬い上げてくれなかった と

なじるようにコンロを汚す

健気な報復である

粗末にしてはならない存在からの報復である


さて この事態が何を示唆するのか

言わずもがな使用者の人間性

つまりは私めの性格

ですなあ

欲張っておきながら

全部をつかみ切れない

自分で選んでおきながら

持て余す

なんて

情けなや



町はお盆の時期

義父はお戻りだろうか

そうなら手を合わせて報告しよう

 お義父さん

 この詩は反省文です


              2021.8.14

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