天使だけど、羽根が生えたので飛ぼうと思ったら下界に落下しました

もも吉

地上に落ちた天使

第1話 獣狩り



 光の矢を引き絞る天使が狙う先に一匹の大型魔獣がいる。


 魔獣はライオンと羊の2つの頭部に体はライオン羽根が生えて、蛇の尻尾が生えたキメラだった。


 まだこちらの気配には気が付いておらず。

 天使は静かに狙いを付けていた。


 獣型の弱点である腹を狙って矢を放つ。

「くたばれ!」

 ダンジョンの通路の奥から、壁の隙間を躱して進む光の矢がキメラの腹に深々と突き刺さる。


「がぁああああっ!」


 瀕死の一撃にキメラはたまらず、声を上げてよろけて一歩下がった。

 しかし、そのような一撃を食らったにも関わらず、こちらを威嚇し続ける。


「ぐああ。光の矢!おのれ天使めぇ!このわしを殺しに来たのかあああああっ!」



「さすがだな、ランクBの魔獣だ。矢を受けてもまだ喋れるのか。」

 剣士のリュディガーがぼやく。


 器用に光でできた矢を尻尾で掴んで引き抜く。


 ブシャ!


「ぐ・・・」


 天使は驚いていた。

 この魔獣の中には予想以上に上位の悪魔がいるらしい。

 普通の魔獣ならば、この時点で戦う力は無くなって、逃げてしまうか倒れ込むかするはずだ。

 悪魔が憑いている場合は、死ぬまで抗う事になるだろう。

 非常に厄介である。


「チッ。一発じゃダメか。」

「ライナー!もう一回だ!次は頭をやれ。」

 戦士で大きな盾を持つジークベルトが叫ぶ。


 ライナーと呼ばれたのは私だ。

「やってるよ!」



 天使である私は、光を集めて武器にすることがで、矢じりの光が多いと、より強力な貫通力が生まれる。

 頭は固いからより多くの光が必要だった。



 致命傷を負って尚、生への執着と敵への怒りで狂ったキメラは、猛スピードで寄ってきて、近くのリュディガーに襲い掛かる。


 リュディガーは転がってやっとのところで難を逃れたが、当たれば即死だろう。

 天使が光を溜めるまで、どうにか凌がなくてはならない。



「フレイヤ!回復を頼む。」

  ジークベルトは司祭のフレイヤにヒールをかけてもらいながら、自身も魔法の強化と加速をかけ直す。



「オラッ!」

 叫びながらリュディガーがキメラの足をロングソードで払うとキメラは当たる前に後ろへ下がった。


「クソッ!あんなにデカいのに一つも当たりやしねぇ。」


「焦るな。あいつには地味に耐えて削るしかなかったんだ。ライナー!頼むぞ。」


「こっちは強化も加速も掛けてあるんだ。それても当たらねえ。」



 私は暗いダンジョンの光集めに苦戦していた。

 ダンジョンでは光を集めるのは夜でも簡単なのだが、この相手にはそれを阻害する悪魔の能力がある。


「もう少し耐えてくれ。クソッ!忌々しい!」



 その間にもジークベルトの魔法スキルの盾をキメラが前足の引っ掻きで削る。

 スキルの盾と物理の盾があるが、このキメラの前では心もとない。



「密集してたら吹っ飛ばされるし、離れると集中して攻撃してくるし、最悪だなコイツ。」



 ライナーに襲い掛かろうとするキメラをジークベルトが盾で殴りつけるが、反対に引っ掻かれる。


「ぐわっ。いてえ。」


 キメラのパンチが物理の盾を砕いて、腕が折れたかと思うほど痛い。

 おまけに破片が飛んで、顔に当たって切れた。



 その魔獣以外に、このエリアには定期的にモンスターが沸いてくる。

 この部屋も周りの通路からモンスターが現れるため、それへの対処も必要だ。



「ナイトストーカーが来るわよ!」

 フレイヤが叫ぶ。


「あー。仕方ない。私がやるわ。」

 とキメラに集中していて、対処するのは自分しかいないと気が付いて、祈りを捧げ始める。


 普段なら天使である私が対処すべき相手であるが、今に限っては手が離せない。



「すまない。頼んだぞ。」

 私は、ナイトストーカーがやってくる通路の入り口に近かったが、光を溜めながらその場から離れる。



「まだか。ライナー!」

 ジークベルトは盾が壊れ始めていて、剣で応戦し始めている。



「もうすぐだ・・・。」


「砕けろ。」

 光を溜めた矢が光を放ちながら、キメラの頭に伸びる様に当たる。

 静かに飛ぶ矢だがその破壊力は大きく、当たった瞬間にキメラの頭蓋に穴を穿ってって血が飛んだ。


 ドサッ

 と倒れて、ぴくぴくしていたが、直ぐに動かなくなった。




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