3.報酬はクリームパン
クラスが同じになり、自己紹介の時間で彼女の名前が判明した。
剣道部に所属予定で、中学で全国大会に出場しているほどの実力者で、剣道2段持ちらしい。いや普通にすっげぇ。ボディーガードとしては申し分ない。申し分ないのだが………………。
「…………西園寺、視線がうざい」
入学してから1週間、席が前後ということもあって、授業でペアを組まされたり、先生に当てられるとお互いに次が自分になったりするおかげで日常会話はするようになったものの、それ以外の時間はすっげぇ警戒されてる…………。
くっそ、俺があんな失態をしでかしたせいで、頼めるもんも頼めなくなったじゃねぇかよ……っ! 俺のバカ! …………てか、別にこだわる必要なくね? ほか探せばいいじゃん。そうだそうしよう。……見つかんねぇな。やっぱ剣持に頼むか……。ということを繰り返している。
しかも最近の俺の不幸もやばいんだよな。車に轢かれそうになるわ、絡まれる回数増えるわで困ってんだ。だからボディーガードが早く欲しい。
かといっていざ交渉しようと声をかけると。
「剣持……あのさ」
「嫌だ」
この一点張りである。あー、マジどうすりゃいいんだ。何かいい案はねぇかな……。絶対受けてくれるような……。………………そうだ!
「剣持」
「だから嫌だと……」
「お前の好きな条件付けていいから!」
ダメ元で手を合わせて頼むと、剣持は少し考えた様子で口を開く。
「……なんでもいいのか?」
「おう、なんでもいい!」
「それなら…………
「……え、そんなんでいいの?」
「坊っちゃまだからお前にとってはこのクリームパンは安いと……」
あ、やべぇ。怒ってる。でも、ぎろっと睨んでくる剣持も可愛……じゃなくて、弁解!
「あ、いや、違う! そうじゃなくて、たった1個で引き受けてくれんのかなーって」
「1個なわけあるか、1日1個だ」
「…………マージか」
「嫌なら…………」
「いや、それでいい! お願いします!!」
部活以外の時間は空いていて、下校も仕方なく一緒に帰れる時は帰ると言ってくれた。俺、なんか尻に敷かれてんな。まあいっか、クリームパンもらえるって分かっただけですっげぇ嬉しそうにしてるし。ほんと、可愛い。
不幸体質のせいで他人との交流を必要最小限にしてきた俺にとっては初めての友人だから、恋なのか、友情なのか、まだ分からない。けど、これだけは言える。
剣持のことを大事にしたい。
って本人に伝えたらまた不快そうな顔しそうだから言わねぇけど……。
というか1個300円のパンは高いのな、覚えておこ。つか、毎日買って持ってこいってことだよな。黒澤に買っとくように頼んどくか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます