俺のボディーガード様!
煌烙
1.人生最大の失態
日本一有名で、日本一の財力を持つ株式会社である。洋服ブランドや電化製品、家具、レストラン等々、さまざまな事業を行い、それが全て超一流であるが、一般層から富裕層までの支持を得ており、日本でその名を知らない者はいない。さらに海外進出も広い範囲でしていて、世界にもその名が広まりつつある。
もともと裕福な西園寺家を初代社長が会社の土台を築き、二代目が成功を収め、会社を大きくした。
これが俺の爺ちゃんと父さんだ。そして、俺-西園寺
そんな俺は今日から高校生。小中と私立のお坊ちゃま校だった。だから高校もお坊ちゃま校だと思っていた。しかし、父から言われて受けたのは、県立
そして、何故か俺は父さんから入学初日から謎のミッションを受けている。まだそのミッションの内容を知らないのだけれど、それは俺に渡したこの封筒の中の紙に書いてあると言っていたし、まあ、大丈夫だろ。
さてー、学校の前に着いたし、ミッションを確認するとしよう。封筒の封を切って中から紙を取り出す。
「んーと? なになに?」
《ボディーガードを見つけること。以上。》
「……………………………………は?」
ボディーガード? 俺、ボディーガードいたよな?
「要さま、
「うおわっ!? ……黒澤、いつからいたんだ…?」
「今さっきでございます、早速不幸発動お疲れ様でございますね、要さまがお弁当をお忘れになったのでお届けに」
「お、おう、サンキュー……。てか、よく俺の考えてたことわかったな」
「幼い時から見ておりますので、その程度分かります」
流石だな…黒澤。でも、そうか。黒澤とは別に本格的なボディーガードを付けろってことか。
しかし、ここで疑問が浮かぶ。
「父さんがボディーガード用意してくれりゃ済む話じゃねぇの?コレ」
そう口に出すとすかさず黒澤が答えた。
「西園寺家の男が生まれながらの不幸体質ゆえの風習のようなものですよ」
「なんだその謎風習」
そう、西園寺家の男は何故か不幸体質で産まれてくる。かく言う俺も不幸体質で、小さい頃からすぐ怪我をしたり、行事は雨になったり、修学旅行で必ずと言っていいほど人助けをしなきゃいけない状況になって迷子にされたり……。俺よくこの15年間死なずに生きてこれたよ。
だからといって、この謎な風習をする気にはなれないとぼやいていたら黒澤が口を開く。
「ご安心ください、要さま。要さまだけではございません。旦那様もボディーガードを自分で見つけたと仰っていました」
「へぇ、そのボディーガード誰だったんだ?」
「それが…………奥様だとか」
「はぁ!? 母さん!? 父さんも物好きだな」
「あ、そういえば大旦那様も大奥様がボディーガードだったとか」
「爺ちゃんもかよ!!」
興味本位で聞いた俺を殴ってやりたい。聞くんじゃなかった。西園寺家の男子大丈夫か? 許婚もいただろうに、野蛮な女に惚れるなんて相当な物好きだ。
つまり、なんだ? 俺も異性のボディーガードを見つけて結婚しろとでも言うのか!? あの
まあ、とにかく、父さんの真の目的はおいておくとして。
「黒澤」
「はい」
「いつまでいるんだ?」
「あ、失礼いたしました。私は帰りますね。要さま、高校生活1日目、楽しんで下さいね。グッドラック、でございます」
キランッ、とウィンクして黒澤は帰っていった。だがな、黒澤……。
毎度思うが、顔と言葉が全く一致してねぇよ。言葉はふざけてんのに、なんであんな真顔と真剣な声色で言うんだよ、逆に怖え。
はぁ…、それにしてもボディーガードか。ボディーガードなんてそう簡単に見つかる訳ないよなー。
顎に手を当てながら考えて、学校の門をくぐろうとした、その時。
「きゃぁあああああ! ひったくりよ!」
そうそう、ひったくりの方がよっぽど見つか…………ってひったくり!?
声の方へ振り返ると、ひったくり犯と思われる男が俺の方へと走ってきているではないか。
よし、ここは俺が習った空手でも披露するとしますかね。と意気込んで構えた瞬間、後ろから声をかけられた。
「そこの男子、下がっていろ」
「えっ?」
振り返ると竹刀を竹刀袋から出している黒い長い髪を高い位置で1つに結っている女の子がいた。その子が竹刀袋と荷物を雑に投げたので、反射的に受け取る。
「お、おい!」
「なんだ、持っていてくれるのか、有難いな」
集中しているのか真面目な顔をした彼女は俺の前に立つと、竹刀を構えてひったくり犯を見据えた。
「そこの女ぁあああ! どけぇええええ!」
「どかない。その荷物、返してもらう」
そして美しく鮮やかに胴を決めると、ひったくり犯が荷物を手放し、倒れた。それと同時に、宙に舞った荷物を見事に受け止めるという完璧な所作。
「荷物を取り返してくれてありがとうございます!!」
「どういたしまして」
ズキューーーーン
荷物を取られた女性も俺もその剣道女子に釘付けになってしまった。その美しく華麗な笑顔を見てしまったから。
その後、警察が来て事件は一件落着。竹刀袋と荷物を返そうとタイミングを見計らって俺はその剣道女子に声をかけた。
「あ、の……」
ただ荷物返すだけだろ。何緊張したんだよ、大丈夫。だけど、あの笑顔を忘れられない。
「ん? ああ、さっきの。荷物、ありがとう」
ふっと微笑んで荷物を受け取り、竹刀を袋にしまう彼女のその所作に目を奪われる。俺の視線に気づいたのか、彼女はハテナを浮かべた顔で俺に向き合う。
「……? まだ何か?」
そして、俺は人生最大の失態を犯す。
「あ、あの……俺と結婚して下さい!!」
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