第四話


「ところで一つ聞きたいのだけどさ。新婦さんはアリアと同じ貴族……だよね?」

「はい」

「話を聞く限り貴族の中でも位が上……なのかな?」

「そう……なのでしょうか?」


 探りを入れる様に聞くキュリオス王子に対し、アリアの反応はかなり微妙だ。


「あら、自分のお兄様のお相手なのよ? 気にならないの?」

「気にならないかと聞かれれば……嘘になりますが」


 しかし――。


「私もお兄様にその様なお相手がいると言う事を知ったのはつい最近でしたので……」

「そうだったの?」


 多分。お兄様はアリアだけでなく周りに相当気を遣っていたのだろう。


「先ほども説明いたしましたが、お兄様は自分の事は基本的に後回しにしがちで……本当はこの間の休暇の際に言おうか迷っていたそうなのですが……」

「ああ、なるほど」


 その時にアリアが何かに悩んでいる事に気が付いていた。


 しかし「既に卒業してしまった自分ではどうする事も出来ない」と悟ってその事を王子に話した。


「休暇中……私に余裕がなかった事を悟ったお兄様は私が落ち着いたタイミングで結婚するつもりだった様です」

「お相手の方も良くお兄様の事を分かっていらっしゃるのね」

「……そうですね」


 多分、自分以上に……。


「色々と落ち着いたから話した……という事だね」

「そう……ですね。今は我が家もお兄様の功績によって『伯爵家』になりましたし、色々と大変そうではありますが」

「そうよね」


 今まで男爵家だったのにいきなり『伯爵家』になったのだ。当然今まで通りとはいかない。


 しかも、お兄様はまだウォーレン家の当主となって日が浅い新米当主だ。


「ですが、領地の管理などに関しての知識はお相手の方が昔から教わっていたらしく知っているそうですし、二人で上手くやっているそうです」


 正直、お兄様だけでは上手く回らなかっただろう。


「そっか。それは良かった……ん?」

「――ちょっと待って」


 アリアの説明に、クローズと王子は納得した様に頷いたのだが……。


「あのさ、アリア……」


 なぜかキュリオス王子はそこで言葉を区切る。


「どうされましたか?」

「少し、あなたに聞きたい事があるのだけれど……」


「はい」


 改まってどうしたのだろうか。


「あなたの……」

「はい」

「えと、お兄様の結婚相手ってひょっとして『ミリカ・ルージュ伯爵令嬢』かい?」


 王子にそう言われ、アリアは素直に「はい」と頷く。


「あの、何か問題が――」


 二人そろって「はぁ」とため息をついていたため、心配になり尋ねると……。


「ううん、問題はないよ。何も」

「そうね。大きな問題はないわ。むしろ……今の説明で納得がいった……というべきかしら」


 アリアは二人がなぜこんな風になっているのか分からず首をかしげていると……二人は何も知らないアリアに「ルージュ家」について教えてくれた。

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