第二話
基本的に長期休暇の過ごし方は人それぞれだとは思うが、大体はまず主に二つに分かれる。
それは簡単に言うと「家に帰る」か「帰らない」かの違いだ。
ちなみにアリアは……当然の様に帰るつもりはない。
アリアのお兄様は魔法省が管轄している寮に入っているし、そもそもいる部署がいる部署だし、そもそもまだ一年目で仕事も多い。
学生の頃ならばともかく、今は「長期休暇」は存在していないというのが現状だ。
だから、お兄様がまだアリアと同じ学生であればまた話は変わったかも知れないが、お兄様がいないのであればアリアがあの家に帰る理由はない。
それに、学校に入学してから一度も手紙を出していないのに何も言ってこない両親に対して思う事もない。
「……」
いや、入学当初は「送った方が良いかな?」なんて思ったが、今は何とも思っていない。
それに、送って来ない事に対して何も言ってこないのだから期待するだけ無駄というモノだろう。
アリアはお兄様と「入れ違い」という形で魔法学校に入学したため、会うのはかなり久しぶりだ。
「お、お久しぶりです。お兄様」
「アリア、久しぶりだな」
学校からすぐ近くにある喫茶店で本を読みながら待っているお兄様に声をかけると、お兄様も笑顔でそれに答える。
――懐かしい。
その笑顔を見て、アリアは思わず泣きそうになった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「――本当に久しぶりだな。元気そうで良かった」
「お兄様も……お元気そうで。お仕事の方はどうですか?」
そう尋ねると……。
「それはこちらも聞きたい事だが、仕事の方は……大変だが、充実はしている。ようやく慣れてきた……というところだな。アリアはどうだ」
「私……ですか?」
お兄様の仕事……ひいては毎日が充実しているのは、お兄様の様子を見れば分かる。家にいたころよりも随分と楽しそうだ。
「いや、単純に学校生活はどうだろうと思ってな。入学前に殿下からアリアの事は任せて欲しいとは言われていたが」
「そう……だったのですね」
多分。お兄様はアリアがイジメられていないか……など色々と心配だったのだろう。
「大丈夫です。お兄様がおっしゃられた通り、殿下が目を光らせて下っている様ですから」
そう言うと、お兄様は「そうか」とどこかホッとした様子で紅茶を飲む。どうやらアリアの言い方や声の調子から嘘ではないという事を判断したらしい。
「ちょうどこの間は試験が終わりまして……」
そこでアリアは言葉を区切った。いくら学校の話題とは言え、試験の事を自分から言ってしまった事に口に出した後に気が付いた。
「――ああ、試験か。なかなか大変だっただろ。結果はどうだった」
「え、あ……。二、二位……です」
アリアは少し言い淀んでしまったが、自分から出した話題だ。今更引くに引けず、そのまま素直に答えた――。
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