第5話 メトロノーム的な感情

 双極性障害で一日、22錠の薬を飲んでいる。今月も4日連続で寝れない日があり、先生に相談して2錠増やした。増えることはあっても減ることはない。そんな治らない病気だ。


 双極性障害はうつとそうを繰り返す。その転換点はわからないが、自分がそう状態であることはわかるようになってきた。うつ状態では文章は書けない。よって今はそう状態気味であると言える。うつよりそうの方が危険だ。なにせそう状態は周りの人が馬鹿に思える。自分が偉くなったようにも感じる。とにかく交戦的だ。


「山口さん、マスクはきちんと付けて」

「付けても動くからズレるんですけど…」

「何を!言われた通りにしろ」

「……」


 派遣会社の担当者に連絡した。「威圧的にこう言われた」「直属の上司ではない」等伝えた。

「わかりました。山口さん。任せて下さい」

その言葉通りにその上司は上の方からお叱り受けたと聞いた。

このやり取りをそう状態ではない僕からしてみればありえないことだ。すいませんと言ってマスクを着けなおせばいいだけのことだ。

上司に逆らって何の得があろうものか!

これがそう状態の怖さであり公言することの取り返しのなさの後悔である。

 ガソリンが入ってない車のアクセルをめいいっぱい踏み続けた代償だと諦めている。もう発症して16年になる。公にできない病気なので一生隠し続けなければならないのは辛い。


 僕が病気なのはモグもトラさんも知っているが普通に接してくれる。このガラスを細かく砕いて血液に流し込んだような血筋は母、母の弟と母方の血統と思われ、将来、トラさんに流れ込まなければいいがと願っている。


 僕が失礼した上司には改めて丁重にお詫びをした。病気がしたことなのでとは言えないけど……。病気も含めて僕だから……。


 これだけの薬を飲み続けているから長生きはしないと思っている。お父さんが62歳で亡くなっているから、60歳。あと10年くらいかなと思っている。だからなのかわからないが「死後の世界」とか「輪廻転生」とかが知りたくなっているのかもしれない。もしかしたら死ぬ準備を知らず知らず行っているのかもしれない。今の危うい世の中では10年も難しいのかもしれないね。まあこれも因果応報なのだろうけど……。

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