2-11

 もちろん、昇二と光瑠には報告した。光瑠は聞いていて、泣きだした。


「蒼 必ず、迎えに行ってね 絶対に、幸せにしてあげてよ 君しか出来ないんだから」


「蒼 俺は、この前、自分のことだけを考えろって言ってしまって、すまなかつた。多少の犠牲を払ってでも、彼女を手に入れるのも有りだな お前にとっては宝物だものな」と、昇二も言っていた。


 僕は、その後、授業のこと、就職のことに集中していった。夏には、インターシップに出て、就職も順調に進んでいたが、心の中では、このままでいいのかという風に、自分にも問いかけていたのだ。


 秋になって、僕は、我慢できなくなっていた。美鈴をもう一度見たいと思っていた。昇二に頼んで、夜、連れて行ってくれと頼んだ。彼は、高校卒業した時に、運転免許を取っていたのだ。


「構わないが、会って、話をするのか?」


「いや 遠くから見るだけだ 様子をもう一度見たい ホテルは10時に上がらせてもらうって話だから11時頃、駅に着くと思うんだ」」


「わかった 蒼の頼みだからな この貸しは返せよな」


 僕達は、改札が見える道路に車を停めて、待っていた。30分程待っていると、美鈴のお父さんらしき人が確認出来た。それから、間もなく、電車が着いたみたいで、何人かが出てきた。


 見えた。美鈴だ。ストレートのパンツにジャケットを羽織っている。小走りに出てきて、お父さんに寄っていった。


「おい すげぇ美人になったのぉー あれは、美鈴かぁー」と、昇二が驚いていた。


 美鈴は、お父さんの腕をうしろから組むようにして、横道にそれて行った。幸せそうな父娘に見えた。


「仲が良さそうだったな 安心したよ ありがとう 昇二」


「なんの 俺も、美鈴の元気そうなの見れて、安心したよ」


「昇二 僕は、決めたよ 父さんから彼女を引き離すことはできない。仮に、美鈴を連れて、どこかに行くなんてしたら、彼女は悩むに決まっている。 昇二、一緒の会社を目指すと言って居たけど、すまない」


「わかるよ まぁ 競争相手が減ってホッとしたよ 俺は、そのまま進む 別の会社に居ても、競い合うことは出来るもんな」


「うん 中小の方が、思い切ったこと出来るかもわからないしな 美鈴、待っていてくれ」


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