幼馴染がヤンデレだったけど可愛いから実質アドバンテージ

烏の人

第1話 監禁したい

 高校生の昼休憩と言うのは様々である。それこそ1人、1人の青春と言えよう。そんな中でも僕は幼馴染である天里あまさと 信乃しの、通称シノと恋バナをするという選択肢をとっていた。


「いや、でもあれだよね。ハルだったら監禁したい。」


 さて、どれなんでしょうか。ハルと呼ばれている僕の名は原川はらかわ 晴人はると。そんな僕はただ興味本位にシノの異性の好きなタイプを聞いていただけなのだが。何故僕の名前が出てきて、その上“監禁”と言う単語が出ているのだろうか?


「監…禁…?」


「監禁。だってハルってさ、弱い癖して無駄に強がりだし。目を離したらどっかに行っちゃいそうで怖いじゃん?」


 まてまて、僕は子供かなにかなのか?と、言うかそもそもとしてそうじゃない。


「僕は、シノがどんな人がタイプなのかを聞いただけのはずだったろ?」


「うん。だからこれって言うタイプはないけど、強いて言えばハルなら監禁したいかなって。」


 さて、いきなり構えられた重すぎる愛の鈍器ではありますが華麗に躱すとしましょう。


「僕も子供じゃないんだが?」


「子供じゃないから、悪い虫がつくんじゃない?」


「………悪い虫?」


「あれ?知らないの?女子の恋バナだと結構ハルって名前挙がってるよ?」


 はーい、躱すどころじゃなくなりましたー。本来であればその話を詳しく聞きたいところではありますが、どうも監禁の一言が頭を離れないのでやめておきまーす。

 さて、華麗に躱すも何もとんでもない事実が色々と発覚しております。僕はどうしたらいいのでしょうか?


「そ、そうなんだな。」


「まぁ、安心しなよ。私がどうにかするから。」


 どちらかと言うと貴女がどうにかなっているようではありますが、まぁいいでしょう。いや、良くないか。


「どうにかするって………と、いうかそもそも情報量が色々多すぎて入ってこないんだよ………。」


「監禁?」


「1番はそれだよ。監禁ってなると………正直困る。」


「………ハルって私のこと嫌いなの?」


 びっくりするほど素のトーンで喋るんだから………怖いよシノ。実際嫌いとかじゃない。価値観の違いだろう。


「なんて言うかな………この世には監禁されたいって思ってる人の1人や2人はいて、需要と供給のバランスが僕たちでは釣り合わなかったというだけの話だから別に嫌いではない………。」


「じゃあ好き?」


 その質問に沈黙を返すことは許されないのだろうか?いや、普通だったら恥じらいながらコクリと頷けばそこからよくあるラブストーリーが始まるのだ。だのにこやつは何故に監禁と言うもっとも鋭利な刃物を突きつけてきたのだろう?いいか、これは脅しだぞ?さてと、とっとと答えないとマジモンの刃物突きつけられそうだから考えよう。


「仮に、僕がそれで好きといったらシノは僕をどうする?」


「うーん………どうにもしないと思うけど。無意識になにかするんじゃないかな。」


「はは………無意識ってのは怖いな。まぁ、その好きか嫌いの二択で答えると好きだよ。」


「Likeの方?」


「そっちよりだね。」


 僕が『そっちより』と答えたのには1つ明確な理由がある。何と言うか、男のある一種の本能でもあるし、今まで一緒に過ごしてきた思い出補正もあるが………シノが可愛い。


「その言い方だとLoveも混ざってる?」


「まぁ………そうだね。」


「そっか………。」


 ………おいおい、こんなに気まずいのかよ?何がどうしてこんな空気になるんだよ?よくもまあ青春を謳歌しているリア充共はこの空気を乗り越えることができたな。本当に脳内がどうなってるか知りたいよ。

 いや、多分あれだな。この空気になる方が特殊なんだろう。それにしたって僕はこんな空気耐えきれんぞ?


「え?じゃあ何?付き合う?」


 あぁ、僕も何言ってんだろう。自分でもわかんなくなってきたんだけど。


「それだったらさ、私のものになってよ。」


 ………さて、今の一言。僕の頭のネジを飛ばすには充分な破壊力だった。そうして僕の平均的な頭が告げる。もういっそ楽しんじまえ、と。そうしてだ、僕はこう考えた。

 『可愛い幼馴染からの狂気的な愛は事実上のアドバンテージでしかない』と。

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