第12話 動揺する俺

俺はすっかり動揺していた。秋良が俺にキスした、しかも何かエッチなやつ…。そしたら俺の身体が妙に騒がしくなって…。それもそうだし、俺の性癖を俺より秋良が分かってるってどうゆう事⁉︎しかもフェロモン出てるって何⁉︎


俺はすっかりいっぱいいっぱいになって、手を伸ばして机に転がっている俺のメガネを拾った。そんな俺に追い討ちを掛けるのは椿だ。


「…ゆきちゃん、その伊達メガネだって、発情期越えれば必要ないよね。」



俺がハッとして椿を見ると、椿はちょっと罰の悪そうな顔で俺を見つめていた。俺は自分が今まで築いてきた高い壁が音を立てて崩れ落ちていく様な気がして、何だか泣きたくなった。聖は泣きそうな俺の側に寄ってきて、眉尻を下げて言った。


「雪、部屋に戻るなら俺送ってくわ。今の雪は、フェロモン出過ぎてて他の奴らには我慢できないかもしれないから。」


俺は頷くと聖の後をついて行きながら、秋良の部屋を出ようとした。その時秋良が俺の背中に低くて優しい声で言った。


「きっともう薬飲んでも効かないぞ。明日は学校休んで、夜になったら俺たちに連絡しろよ。…待ってるから。」



自分の部屋の前で俺は強張った顔のまま、何か言いたげな聖に俺の頭を撫でられるがままにさせると、聖に見送られて部屋に入った。


鍵を閉めて、俺はベッドに丸くなった。余りにも多くの事が起きたせいで、俺にはゆっくり考える時間が必要だった。 


俺はさっきのキスがきっかけなのか、それとももう薬の効果が切れたのか分からないけれど、身体の奥がウズウズと落ち着かなくなっていた。気持ちいいと気持ち悪いを行ったり来たりしながら、考えた。


このままなし崩しに友達のあいつらを発情期の相手にするのは気が引けた。俺のバカみたいな姿を絶対見せたくなかったし、最悪最終手段としてとしか考えられなかった。たとえあいつらが望んでいたとしてもだ。



俺は意を決して、スマホの履歴から電話を掛けた。


待つ間もなく、相手は直ぐに出た。もしかして彼も俺の状況を予想してたんだろうか。俺は既にふわついている身体を起こして、彼に言った。


「迎えにきて下さい。もうヤバいかも。…うん。裏口に30分後。分かりました。」



俺はメモを秋良に残すとテーブルに置いた。母親に連絡して、約束の5分前に裏口へ向かった。幸いにも誰にも会わずに済んだ。さっき聖が言った言葉が気になっていたから、結構ドキドキしていたんだ。


なんだよ、フェロモンて。そんなヤバいもん、俺が出してるのかよ。自分じゃ分からないのかな、俺だから分からないのかな。どうも俺はそっちの感受性がニブニブっぽい。そういえばさっきもディスられたし。


そんな事を考えてる間に迎えの車が来て、俺は安堵のため息と共に乗り込んだ。




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