第2話 俺ももふもふだけどさ
「なんだよ、椿に付き纏われてんの?雪。珍しいじゃん。椿、いつもはハーレムくっつけてんのに。」
学年で1、2を争うガタイの良い男である秋良が、教室の入り口の方を見ていた俺に聞いて来た。
俺は秋良の前の席に座りながら、言った。
「んー、何か聖のガセネタに踊らされたみたい。」
秋良は俺を椅子ごと自分の方に向けると、俺の顔を見つめながらしつこく聞いて来た。
「聖のガセネタってなに?あいつ鼻だけは効くんだよ?ガセじゃないんじゃない?」
「ガセだっつーの。だって、俺がもう直ぐ発情期来るとか言うんだぜ?来る訳ないっての。ほら、椅子元に戻せよ。本当馬鹿力なんだから。」
そう言ったものの、眉間に皺を寄せて、考え込んで動かなくなった秋良にため息を吐いて、結局自分で元に戻したんだけど。今度秋良に仕返ししなきゃな。
大体、何でみんなして、俺の発情期がどーこー気になる訳?
自分達はとっくに発情期済ませて、今じゃ万年発情期みたいなくせに。本当、このもふもふの世界はいつになっても慣れない。いや、思春期以降特に慣れない…。まぁ、俺も、もふもふではあるんだけど。
実際、俺が発情期来てないのは学校では有名な話なんだ。早く発情期来るのが偉いとか、偉くないとかは無いけど、高2にもなって、来てないのは珍しいかもしんない。
実は俺、誰にも言ってないけど、発情期止める薬飲んでるんだ。だってさ、俺の姉貴が中3で発情期来た時、ほんとヤバかった。声が大きいとか、それ以前に別人みたいになっちゃってさ。清楚で綺麗系だったはずなのに、淫乱な女になっちゃって。
俺そん時小学生だったから、すっかりトラウマになっちゃって。頭ではわかってるんだけど、心が拒絶するっていうか。自分もあんな風に訳わかんなくなるとか怖すぎる。
そもそも俺、ここに生まれる前、こんなもふもふの世界じゃない世界の人間だった記憶があるもんだから、ちょっと違和感半端ないんだよ。
この世界は先祖が獣人だったせいか、いわゆる発情期があったり、先祖がどんな動物系だったかで性格や、体格、得意なこと、見目、案外影響されててさ。そう言う俺も、もふもふ出身だけどね。
バレてないと思うけど、ちょっと希少種系だから狙われるのかなって感じ。本当はもっとレア系かもで、見目だったら誤魔化せるから、親には絶対バレるなって言われてる。何でも誘拐される勢いらしくて。マジやばいよね。先祖だし関係ないじゃん?
まぁ、先祖が肉食の強い系はヒエラルキー的にやっぱり家柄が良い奴らが多くて、後ろの席の秋良も先祖はクロコダイル。だから鱗川って言ったら結構大きな会社経営してるし、秋良は呑気な次男だけど、長男は生徒会長とかやってたし。身体大きいだけで圧強くて、ほんと羨ましい。
そう考えてる俺の背中を食い入るように秋良が見つめてるなんて、その時は全然思いもしなかったんだよ。
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