10.軋轢・中 ゠ 贅沢と不仲の話
「
「
「随分と大仰に言うなあ。それでは私のほうが、王様のような
「
「そうまで言われてしまうと、こちらも恐縮なんだがな」
敵であるはずの自分が、ここまで歓待されるのも、やや不自然な話だし、申し訳なくも当然思う。
ただそれよりも、出された料理がとにかく
「しかしそうすると、この
ほかに大麦や
しかし、このような白い粒々については、
質問に、女侍従長はこう答える。
「
「米? これが、米なのか?」
私は
確かに姿形は似ている。
しかしあれは色が紫、もしくは黒だったように思う。
それに米は、
それこそ粗末な食材の代表だったはずだ。
「
「しろまい?」
「
「そんな米が有ったのか」
「詳しい話は存じ
「うん?」
いま微妙に、違和感を感じる言葉を聞いた、気がする。
「指揮? 指示では
「キュラト様は、何でも御自分で
「……?」
はて。
今のはどうにも、含みのある言い方だった。
「……任せるところは任せてるでしょう」
「
ふたりはそれきり黙り、しばらく見合っていたが、やがて少女は食事に
少女とその周囲との間に、何らかの
しかしそれが何なのかはもちろん、目で見て
まああの、医務室のあれらについては、ちょっと何かが違う気もするが。
それでも、絶対の権限を持つ王であろうが、いや。
むしろ、配下へ命令を下す立場なのだったら、
不和を
そのあたり、この少女はどう折り合いをつけているのだろうか。
そう考えていたところで、ふと思い当たるものが
「そういえば、だな」
やはり王様らしくない物として、
指されたほうは
「はい?」
「毒見はさせないのか?」
「え、あ、そのこれは、何といいますか、調理番が何度も味見を……」
「キュラト様」
「……はい」
結局また、少女は
可哀そうな事をしてしまったが、これはもう私も、少女へは余計なことを
ただまあ、毒見した結果の判断までには、それなりの時間を要する。
そんな事を
かと言ってそれでも、調理係による味見というのは毒見の代わりには、ならないのではないか。
もちろんそれは調理係を疑えという事ではなく、毒など
ゆえに毒見とは、それを
もしもほんの
まあ
少女に
「……」
美味である。
何の味かは
しかし、次のひと口を
そうして確かめるように、継いで
何が起こったのか、よく認識できない。
私は
「
「……」
私が反応できないでいれば女侍従長は
ふたたび
また目の前に
「
これは、参った。
私も食生活に関しては割と、
しかしそれにしたって、どんなに美味な物を食べさせられたとしたって、だ。
まさか
それはもちろん、美味な物もまた
その感動を言葉にして正確に表すとするなら、この言葉しか無い。
私は率直に言った。
「最近の魔王は、
「全くで
そう調子よく合わせてきた女侍従長を、少女はするどく
逆襲を
なんというか、まあ。
しかしそれでも、質素では
少女も私もそれほど時間掛からず、食べ
食後に味わった
内容としてはもちろん、文句もつけようが無いほど満足の行くものではあった。
が、見れば女侍従長がもう早、使用済みのその食器を台車へ下げ始めており。
──カチャン、カチャン。
どうも
そんな事を思っていると女侍従長が、作業をしながら説明を加えた。
「
「うん? さっきはこれでも、かなり手が掛かっているような事を言っていなかったか?」
「
「ほう」
「
「そうか。
私がそう
ふむ、
いや、これといって悪い人物にない気がするのだが、少女はこの女侍従長とは、
と、そんな感想とも
「
なんとなく
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