第三話

 その騒動は犯人は受付の今井という女性。ゴルフ場では前から彼女の言動には不安なところもあったが、人手が足りず雇用し続けていた。


 彼女は営業マンである高木と付き合っていたものの、彼は受付の苅間とも交際をしていたことが発覚。

 高木は今井と別れたかったが別れられずそれに悩んでいたところを苅間が相談を受けて付き合うことになった。しかも他のスタッフもそれを知っていたのだ。


 それを知った今井がコーヒーの中に洗剤を入れていたのだが……実は今回だけでなくここ数ヶ月は雑巾で絞ったお湯や二度出しのコーヒーなどバレない程度にやっていたが今回は度が超えてしまった。回を増すたびにエスカレートしていった形である。


 洗剤は致死量を超えてはいないが死んだ女性スタッフは誤って気管支に運悪く入り込み咳き込んで気管支炎を患わせて死んでしまった。

 死んだスタッフは今回の交際に関することは全く知らなかったのである。痴情のもつれを全く知らない人を巻き込んでしまったということだ。





「職場恋愛もほどほどにしないとね」


 そう帆奈はシバの前で呟くとシバはギクっとした。署に戻ったがまだ書類が片付いていない。


「そうかなぁー」

「さらに聞いた話だと高木は既婚者。苅間、今井と不倫していた。あんなサイテーな男がいなければこんな事件起きなかったのに……」

 シバは息を呑んだ。


 そこへ数人の女性警官が他の部署からやってくる。

 お菓子を差し入れにきたとのことで一緒にコーヒーを出してくれるそうだ。


 シバはその場から逃げたくなった。じつはやってきた女性警官たちと関係を持っていたからだ。ほとんどは一夜限り。シバはあまりタイプでなかったようでフェードアウトしたのであった。


「シバ、どこ行く」


 こっそり去ろうとしているシバの腕を掴む帆奈。目つきはとても鋭い。がすぐに微笑む。


「コーヒー出してもらってるから飲みましょ」

「いや、俺は別の部屋で残った書類を」

「ん? そんなのここでやればいいのよ、コーヒー飲みながら」


 女性警官たちが近づいてくる。シバは目を合わせない。


「冬月さーん、クッキー食べます? そしてこのコーヒー」


 その差し出されたコーヒーは何故か異常に泡のようなものが浮いている。


 倒れた従業員たちの証言のほとんどがコーヒーに浮いた異常の泡だったことを思い出した。


 女性警官たちはシバをじっと睨みつける。シバは居た堪れなくなってその場から走り去った。


「ちょっとぉ……冬月刑事どっかいっちゃったー」

「どーしたんだろぉ」

「あーあ、つまんないのぉー」

 すると帆奈が彼女たちの前に立ちクッキーを食べた。


「ねぇ、今度ご飯食べに行かない?」

「は、はい……」

 女性警官たちは帆奈とシバの関係は知っているが、帆奈は彼女たちにとって若手女性でスピード出世したという憧れの存在でもある。


「あと何人か呼んで欲しい人いるんだけど」

 帆奈は微笑んだ。

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