とある世界の創世の物語

初めに純粋な力と小さな欠片が無数にあった

それは少しずつ一所に集まり、真っ白な大きな球体になった

長い時をかけて球体に意思が芽生えた

最初に思ったことは、「孤独」であった

白い球体は、自らの身体から4つの小さな球体を作った

それは、白い球体の周りをただただ回り続けた

5つの球体は、周りにあった減りもせぬ力と小さな欠片達を取り込みながらそこにあり続けた


また長い時をかけて白い球体は思った

「退屈」であった

まず小さな球体達に色をつけた

燃えさかる色、揺蕩う色、芽吹く色、吹き抜ける色であった

少しだけ「退屈」は薄くなり、また長い時が過ぎた


白い球体は、「退屈」がまた大きくなるのを感じた

自らの形を、色々な形に変えることを覚えた

それに合わせて、小さな球体達ももぞもぞと形を変えていった

白い球体は、大きな翼のある姿に

小さな球体達は、翼のない姿になった


白い球体だった翼のあるものは、音を出せるようになった

小さな球体だった翼のないもの達は、それを真似した

その音は、やがて言葉となり意志を伝えあった

翼のあるものは、名前をつけようと言った

翼のないもの達は、名前が欲しいと言った

翼のあるものは、自らを「光」と呼んだ


燃えさかる色のものを「炎」と呼び、揺蕩う色のものを「水」と呼び、芽吹く色のものを「命」と呼び、吹き抜ける色のものを「風」と呼んだ


光と炎と水と命と風は、何かを作ろうと言った

光は周りにある減りもしない力と小さな欠片をあるだけ全て集めて自らの身体よりも大きな大地を作った

それは、昔の光の様に球体をしていた

その球体に、水が大きな水溜まりを作って遊んだ

次に、命が大地を盛り上げて休憩した

炎が水の身体を暖めようとして、風が手を貸した

光は、大地に降りずに隅々まで見て回っていた

やがて光は、自らの身体から大地よりも小さな球体を作りそれを浮かべて大地の周りを回らせる遊びを覚えた


少し小さくなった光は、また少し形を変えて大地に降り立った

小さな山を作り、休憩場所にして少し眠った

炎は、いくつか山を作りその下に潜り込んだ

水は、水溜まりの中に溶け込んで眠り

命は、大地と水に溶け込んで見えなくなり

風は、大地を駆け巡って光の球体を追いかけた


しばらく大地は変化もなくただあり続けたが、眠っていた光が目を覚ました

光は、炎と水と命と風が大地に溶け込んで見えなくなった事を悲しんだ

その悲しみは闇を産み、大地の周りを回り続ける球体よりも遠い場所で広がっていった


光は、自らに似たものをいくつも作った

炎と水と命と風に似たものもたくさん作った

作られたもの達は、似た姿のものたちで集まっていった

光の事を光龍と呼び敬い、炎と水と命と風を精霊と呼んで有難がった

光龍を称えて言葉を話し、炎を称えて火を起し、水を称えてそれを飲み、命を称えて子を作り、風を称えて歌を作った


炎は、火に宿り作られたもの達を暖め

水は、作られたもの達を潤し

命は、食べるものを与え

風は、色々なものを運んだ


作られたもの達は、自らを人と呼び

大地に広がり、火と水を使ってものを食べ、子を成して命を繋ぎ、風と共に大地に帰っていった

それを、ずっと繰り返していた

光は、ずっと少しずつ増えていく人を見ていた

飽きもせず、ただ穏やかに、大地に広がる炎と水と命と風の面影をずっと眺めていた


やがて、多種多様な命が生まれていった

光に似た姿のもの、尾ひれがついて泳ぐもの、翼の生えたもの、大地に潜るもの、4つ足で大地の上を駆けるもの、自らは動かず生きるもの

それに合わせて、人も色々な姿に変わっていった


光は、悲しみも孤独も退屈も忘れていった

楽しかった、嬉しかった、飽きなかった

それでも、闇のことを忘れた事は無かった

遠くにいても、近くにいるように思えた

闇は常に光に寄り添っていた

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