第81話 ゴーレムと魔宝石の名前
「早速このブーメランを地の魔宝石と
〈了解しました〉
命のブーメランのサイズは人間の
オーソドックスな『く』の字型で、薄くて軽い作りになっている。
魔鉱粒子コーティングが施されている表面積はそんなに広くない。
魔宝石として持っている力もそこそこだろうから、
「ガンジョーさん、街の地の魔宝石って呼び方……スマートじゃないと思いませんか?」
ふいにマホロがそんな疑問を投げかけて来た。
「地の魔宝石は世の中に複数存在する物……。だから、区別するために『街の』をつける。それなら、この街ならではのネーミングを考えませんか?」
「うーむ、それは確かにそうだね。もしこれから二つの目の地の魔宝石が手に入ったりしたら、『二つ目の街の地の魔宝石』みたいなくどい呼び方になっちゃうもんなぁ」
「そうですよね! そこで私は考えました! この噴水の下に埋められている地の魔宝石の名前は、ラブルピアと地属性を合わせて『ラブルアース』と名付けようと!」
ラブルアース――この街の大地という意味か。
ストレートでわかりやすく、耳に馴染む感覚もある。
「よし、これから街の地の魔宝石はラブルアースにしよう。ガイアさん、ラブルアースと命のブーメランの
〈完了しています。同時に命属性の魔力を
「流石はガイアさんだ。もうそこまでやってくれたんですね。これで後はその命の魔力で植物がグングン育つのを待つだけだ」
「どれくらい成長が早まるのか今から楽しみです! それとこの命のブーメランこと命の魔宝石にも何か名前を付けませんか?」
「それはシルフィアの持ち物だから、すでに名前があるかもしれないよ?」
俺とマホロはグイッとシルフィアの方に視線を送る。
すでに名前があるかどうか確認しないとな。
「う~ん、特に名前など付けていないし、親から聞かされてもいない。私はただ単にブーメランと呼んでいたぞ」
「なら、この命の魔宝石の名前は『ラブルハート』です! ブーメランの形も見方によっては少し長くて細いハートに見えなくもないです!」
まあ、確かに『く』の字のブーメランってハート型に近い……よな?
ラブルハートというネーミングもピッタリだと思う。
「地の魔宝石と命の魔宝石……ここまで名付けたなら、灯台の火の魔宝石にも名前をつけないとな。元々はおじさんの息子さん――ヘンリックさんの腕輪だから、後で何か特別な名前がないか確認する必要はあるけどね」
「その、おじさんというのは何者なのだ? たまにガンジョーたちの会話に出て来るが……」
「あの灯台を設計したすごい人さ。教会の隣に木を植えた時にシルフィアも会ってるんだけど、あの人はなかなか自分の名前とか過去をしゃべらない人でね」
俺はおじさんことクラウス・エーデルシュタインさんについてシルフィアに説明する。
栄えていた頃からこの街に住んでいる人で、鉱山のガス事故で息子さんを亡くし、その亡骸を鉱山に置いたままこの地を離れられないと残り続けていた。
今は俺が息子さんの亡骸を廃鉱山から運び、この地に霊園を作って
そして、息子さんへクラウスさんが送った腕話……そこに使われていた火の魔宝石を荒野を照らす灯台の光源に使っている。
「なんと……素晴らしい父親もいたものだな……」
シルフィアは目を潤ませて話を聞いていた。
「ぜひともまた会って話がしてみたいものだ」
「おじさんは教会の前に住んでるから、シルフィアのツリーハウスとははす向かいの関係さ。きっとこれからも会う機会がいくらでもあるよ」
おじさんの話がひと段落したところで、マホロが火の魔宝石に仮の名前を付ける。
「ラブルフレイム! 街を照らす炎の名前にふさわしい名前だと思いますが、おじさんに確認を取ってから決定とします!」
街に力を与えてくれる三つの魔宝石に名が付いた。
特別な名前があると、またさらに愛着が湧く気がするな。
「シルフィア、このブーメランはもう
「逆に言えば、またジャングルに出かける時などは、街に置いていかねばならんのだろう? ならば、どこか置き場所を決めてそこへ置いておく方がいいと思うぞ。私に持たせておくと、癖で持ち出してしまいそうだからな」
「ふむ、それも一理あるか……。それじゃあ、とりあえずは教会の方で保管しておこうと思うよ。シルフィアのツリーハウスのお隣だし、この街に盗むような人はいないとはいえ、セキュリティ面で安心出来る場所だからね」
他の魔宝石たちと違って命のブーメラン……じゃなかった、ラブルハートは持ち運びやすい。
それに表面に粒子がコーティングしてあるだけだから強度も心配だ。
教会の中で大事に保管しておくのがベターだろう。
「また必要になったらいつでも返すよ。その時は気軽に言ってくれ」
「ああ、気遣い感謝する」
「では、次の名所に行きましょう!」
置き場所の話が終わったところで、マホロが宣言する。
そういえば、名所巡りの最中だったな。
でも、もう結構いい時間だし、シルフィアも疲れてるだろうからそろそろ……。
「次の名所は……私たちの住む教会です!」
なるほど、流石はマホロだ。
ちゃんとそういうところもわかった上での判断が出来る!
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