第9話 ゴーレムと誕生の秘密
「こほん……! では、最初の最初から話しますね。早朝、メルフィがジャングルへ出かけた後、私はゴーレムの素材となる瓦礫……それも出来る限り質の良い石材を集め始めました」
マホロは語り始める。
時系列的に言えば、俺がまだ生きて元の世界にいた頃の話を――
「必要な分の石材を教会まで運び、その石材を中心とした魔法陣を描き、最後にお母様のペンダントを置いて、私はゴーレムの創成を開始したんです!」
「ちょっと待ってください!」
マホロの話をメルフィーナさんが
「まさか……お母様の形見をゴーレムの素材にされたのですか!?」
「えっ、形見を俺の素材に……!?」
メルフィーさんに釣られて俺も驚く。
この反応を見れば、その形見が大事な物だったとわかる。
「はい、素材にしました。あのペンダントに使われていた魔鉱石は非常に純度が高く、強い地属性の魔力を宿していました。ゴーレムのコアにする素材として、あれ以上の物はこの瓦礫の街では手に入りません」
マホロの
「ですが、マホロ様……。ゴーレムのコアに使った魔鉱石は二度と元には戻りません。あのペンダントはお母様の……マオ様の残した数少ない思い出の……」
「それでも、構わないんです。お母様との思い出が大事じゃないわけじゃありません。ただ、今この状況であのペンダントを眺めるだけの装飾品にしておくのは、あまりにももったいない。それならば、私たちの生活を少しでも楽にするために使った方が、きっと亡きお母様も喜ぶと思うんです」
今のマホロからは貴族の令嬢の風格を強く感じる。
家を追われ、瓦礫の街に逃れ、母の形見を手放してでも生き残るという強い意思。
それがあったからこそ、俺はゴーレムとして生まれてこれた……そんな気がする。
「……マホロ様のおっしゃる通りです。私の考えが浅はかでした!」
メルフィーナさんは深々と頭を下げる。
マホロは彼女の頭をすぐに上げさせ、優しく語りかける。
「いえ、メルフィの言っていることは間違いではありません。それにメルフィの方がお母様と過ごした時間が長いのですから当然の怒りです。何も相談しなかった私を許してください」
今度はマホロが深々と頭を下げる。
メルフィーナさんはどうしていいものかわからず、あたふたしている。
「いっ、いいえ! 私に相談していれば止めていたと思います。これでいいのです……! どうか頭を上げてください!」
マホロと一緒にこの街まで来たメルフィーナさんの忠義は厚い。
2人がわかり合えたところで、話題は俺のことに移る。
「話を戻しますね。この街の瓦礫と、お母様の形見と、私の魔法で生まれたゴーレムが……このガンジョーさんです!」
さっきから一転、普通の少女のようなテンションで話し始めるマホロは本当にすごい子だと思う。
俺なんか自分の体にそんな大切な物が使われていると知って、内心ビクビクしている……!
「ガンジョーさんは元々別の世界で人間として生きていた方なんです。でも死んでしまって、その魂だけを私がゴーレムの心として呼び寄せたみたいなんです」
「異世界から……魂を!?」
メルフィさんにとっては驚きの連続だな……。
ジャングルから帰って来てすぐで疲れているところに申し訳ない。
「しかも、ガンジョーさんはガイアゴーレムで究極大地魔法を使えるんです! その結果があの防壁であり、この修復された教会なのです!」
「ガイアゴーレム!? 究極大地魔法!?」
なんかリアクション芸みたいになってる……!
それだけ俺が例外的存在ってことなんだろうけど、実感はあまりない。
「ふぅ……大体のことは把握出来ました。まだ理解はし切れてませんけど……」
そう言いながら、メルフィさんは俺の方に向き直り頭を下げた。
「マホロ様のために働いていただき、ありがとうございます。これからもどうかマホロ様のことをよろしくお願い致します」
「こちらこそ、よろしくお願いします。マホロには終わるはずだった命を救ってもらった立場ですから、力の限り彼女のことを支えていく
俺も頭を下げて挨拶をする。
これでメルフィーナさんとも普通に接していけるだろう。
「どうか、私のことはメルフィとお呼びください」
「じゃあ、俺のこともガンジョーで……」
「いえ、そこはガンジョー様とお呼びします。呼び捨ては
「あ、はい……」
本人がそう言うなら致し方なし。
従者としては様付けの方が馴染むのかもしれない。
「さて、お話が終わったらご飯です! もうリンゴ食べていいですよね?」
「ええ、すぐに皮を
メルフィさんが取り出したのは、ところどころ錆び始めているナイフだった。
おっと、これで皮むきは良くないな。
「ナイフ、直しましょうか?」
「えっ、あっ……はい、お願いします」
俺はナイフを受け取り、ガイアさんに
わずかな錆を落として刃の形を整えるくらいだから、ほんの数秒で
「はい、どうぞ」
「すごい……! 新品のようです!」
メルフィさんはリンゴの皮をするすると流れるように剥いていく。
皮が1本の帯のようになって、まったく途切れることがない。
俺はその手先の器用さがすごいと思うばかりだった。
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