第249話 赤き魔物は囁く。
「あぐ……――ッ!」
ティアが現れた。
さっきまで何も無かった空間に、突如として出現――
そして、俺の斬撃を受けた。
彼女は、時間差で
それも、俺達が来るよりもかなり遅く。
あまりに大きな差を付けて。
俺の刃が雪を斬る。
ティアに向かい、振り下ろされた。
しかし、彼女の身は――斬られなかった。
彼女は、両腕を突き出していた。
咄嗟に、その前腕の鎧で刃を受けたのだ。
「な、何の……ッ!」
並大抵の反応速度では無い。
彼女に掛かった呪い――スキルキャンセラーの効果で、ティアには何のスキルも無い。
それなのに、今の攻撃を見切って、受けるとは……。
だが、刃に載った衝撃までは、ダメだった。
受け止め切れていない。
「あ……あぁああああああああ……ク――ソッ!」
気弱な彼女らしくもない暴言が聞こえた。
そんな気がして、次には、もう飛ばされている。
飛ばしてしまっている。
俺が、吹っ飛ばしてしまった彼女が、宙を舞う。
その軌道の先――半透明な人型が現れ、雪を弾いている。
そこに、誰かが――『出現』してきていた。
「おっ、やっと
シルフィが瞬間移動してきていた――最悪のタイミングで。
時間差にも程がある。
彼女は驚く間もなく、飛んできたティアの膝を腹に食らう。
もちろん、ティアが意図して、食らわせた攻撃ではない。
全ては、雪原の赤が仕組んだ事だ。
ヤツが本物と思わせた声は――幻。
「あの声は幻聴……俺に誤認させて、攻撃を誘発させたな。
【……アハッ】
シルフィが、あそこに瞬間移動してきたのも偶然ではない。
雪原の赤は、偽の声で俺にティアを狙わせた。
計算した軌道に攻撃を向かわせ、ティアを飛ばして、シルフィに当てさせた。
この敵、かなり頭が回る。
もしかすると、魔女よりも――強い。
【アレを、偽の声……とか、貴方は言いますのね】
きっと『
この敵は、俺のスキルに影響を及ぼしている。
【可愛い思考……それで、ホントに可愛い顔をしていますのね……今は】
「……今は?」
まるで、過去を知っているかのような――
過去の俺を知っているかのような言い方。
それが引っ掛かって、聞き返してしまった。
【ええ……『今の私』が、ああなるのも、無理はありませんわ――今の貴方なら】
「何の話か、分からないぞ――化け物」
【貴方に会えて嬉しいという話です――転生者】
「……は」
転生者と呼ばれ、心拍数が跳ね上がる。
俺は、コイツ自身とは初対面のはずだ。
洗脳された被害者と会っていても、『雪原の赤』本人とは対峙していない。
だから、
俺が転生者である、と。
動揺に、足がすくむ。
今、対峙している相手は何者か。
底知れない恐怖があった。
過去に感じた事の無い――未知への恐怖。
コイツは……何者だ?
【やはり……ねえ】
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