Harlequin
はな
第1話 ハーレキン診療所
1999年、11月。ロンドン郊外。
そこに 「ハーレキン診療所」という名の小さな予約制の病院はあった。
小さいながらに、医長であるジェノバ・ハーレキンの腕は一級品だという噂だ。女医ではあるが、腕前は確かだと。
しかし小さいためか取材の一つもなかった。いや、全て断わられていたのだ。
そのハーレキン診療所の前に女は一人立ち、深呼吸をした。さらさらのブラウンの長い髪にオレンジがかった茶の瞳が印象的な女だ。
「ハーレキン……? おかしな名前ね」
女はしばし首を傾げた。ハーレキン=道化師。そんな姓があっただろうか。聞いたこともない。
道化師を名乗る女医、ジェノバ。明らかに胡散臭い。しかし女に残された道はここしかなかった。
すうっと息をい込む。そして、扉にゆっくり手をかけた。
◆ ◇ ◆
「あら」
久しく開くことのなかった扉が開かれたことに少し驚きを感じつつ、ハーレキン診療所医長ジェノバ・ハーレキンは、つかつかと入ってきた二十代半ばほどの女を見た。
「こんにちわ。もしかして、クーニアちゃん、かしら?」
入ってきた女に見覚えがなく、ジェノバは一応そう聞く。女が予約を入れてあるクーニアではないことくらいわかっている。クーニアはまだ十二、三歳のアジア系の少女だからだ。
「いいえ」
案の定、きっぱりとした否定の言葉が返ってくる。
「そうなの。じゃあ悪いけど帰ってくれる? ここは予約制なのよ。予約してなければ診療は受けられないわ」
今日の予約はクーニア一人だ。あとは誰もいない。
「失礼な人ね、わたしは患者なのに追い出すの?」
「見えないわよ、患者には。お元気なのでしょう?」
ジェノバは、そう言いながらかけていた銀縁の眼鏡をくいっと指で押しあげた。その反動で、着ていた白衣がしゅるりと音をたてる。
女は、そのジェノバの行動が気に障ったらしく、顔をしかめてまっすぐに歩み寄ってくる。身なりが良く傲慢そうなその態度から、彼女がお金特ちの令壌らしいことがうかがえる。
その女のあからさまな態度に、ジェノバは嬉しくなってしまう。そういう傲慢な人間は大好きだ。愚かすぎるから。
「わたしは、胸が悪いのよ」
「そう。では専門の病院に行くことをオススメするわ。ここでは治療出来ないの」
ある、特別な場合以外には。
「うそ。知ってるのよ、わたし。わたしの友人がここで腎職をもらって助かったのよ! あなた、違法に人工臟器を造って売っているのでしょう⁉︎ 告発されたくなかったらわたしに心臓を移植してちょうだい! 心職くらいあるのでしょう」
「あらあら。腎臟ということは、マリーちゃんのことかしら?」
「そうよ」
マリー・アン。一ヶ月ほど前にジェノバが腎職を移植して命を助けてやった娘だ。彼女は確か、どちらかというと貧しいものの部類に入る娘だ。
「彼女とあなたが友人だとは知らなかったわ」
「そんなことはどうでもいいのよ。告発なんてされたら困るでしょう? わたしにはドナーがいないのよ。お金はいくらかかってもかまわないの。心職をちょうだい」
「マリーちゃんも、人に言ってはいけないって言ったのにね。それとも、あなたが脅して言わせたのかしら? 今みたいに。さっきのも脅しよね?」
愚かだ。この娘は本当に愚かだ。自分のことしか考えていない。だから愚か者は好きだ。
「関係ないこと言わないで!」
「……仕方がないわね、わかったわ。高くつくわよ?」
「いいわ、心臟が手に入るのなら」
くすっとジェノバは笑った。人を馬鹿にしたような笑いだ。
その笑いに、女は顔をしかめた。
「あなた、名前は?」
「テレーゼ。テレーゼ・スフィクトン」
聞き覚えのある名だ。彼女は何代も続く大富豪スフィクトン家の令壌らしい。
「そう、テレーゼ。わたしはジェノバ・ハーレキンよ。よろしくね」
ジェノバは華やかに笑って見せた。さっきまでの人を馬麗にした笑みはきれいに消えている。
そう、獲物を捕らえるための罠は、きれいなほうがかかりやすい。
「じゃあ、早速だけど。今ここに心臟は一つしかないのよ。今日移植する予定のクーニアちゃんの分よ。テレーゼ、あなた、クーニアちゃんからその心臓を買いなさい。とびっきり高く、買っておあげなさい」
「買う!?」
「そうよ。今ここにある心臓はクーニアちゃんのものよ。欲しければ買い取りなさい。そうしたらすぐにでも移植してあげるわ。ああ、ちゃんと適合するから安心して」
自分の命か、他人の命か。テレーゼが取るのは……。
「わかったわ。彼女はどこにいるの?」
「ここからたいして時間はかからないところよ。住所を教えてあげるから、行ってらっしゃい」
さっとジェノバは紙とペンを取り出して、クーニアの家の住所を書きつける。
「いいわねテレーゼ。とびっきり高く買うのよ。彼女の命なんだから」
「わたし、お金には困ってないのよ」
地図を受け取り、テレーゼはふっと笑った。勝者の浮かべる、優越感に満ちた笑みだ。ジェノバが一番好きな笑みだ。
「行ってくるわ」
そう言ってテレーゼはさっさとジェノバに背を向けて歩き出す。やがて扉の閉まる音がした。
「勝者はどちらか、わかっていないのね……」
ジェノバは小さくつぶやき、くっくと笑った。目は 細められ、口もとは奇妙な形につり上がっている。
「自分の命がー番大切。なにを犠牲にしてでも。そうでなくちゃならないわ、ふふ」
勝者はいったい誰か。それをジェノバは知っている。
「せいぜい高く買ってきておあげなさい……」
◆ ◇ ◆
「ここね」
テレーゼは一軒の小さな家の前で車を降りた。運転手には外で待っているように言ってから、ドアに歩み寄る。
その家は、テレーゼの常識で言えば、はっきり言って豚箱だった。入るのさえもためらわれるほどだ。しかし、入らねば心臓は手に入らない。
「失礼。クーニアっていう人はいるかしら?」
ノックもなしに突然扉を開く。そこには、驚き顔の母親らしき人物と、四人の子供たちの姿。子供は女二人男二人で、皆まだ小さい。その中の一人、年長らしき少女がベッドに寝かされている。
「クーニアは、わたしです」
そう答えたのはベッドに寝ている少女だ。早く移植をしなければもう命も長くはないのだろう。やつれてしまっていて、息を吸うのも苦しそうだ。
「あの、お嬢さま。娘に何か?」
「ええ。このお金で売ってほしいものがあるのよ」
そう言って、テレーゼは自分の持っていたかなり大きめのバッグを雑に床にほおった。バッグの口を開く。
母親は絶句してしまった。小さい子供たちのほうはなんだか良くわからないらしく、お金だー、と言って騒いでいる。
「かるく億の単位はあるはずよ」
「そっ、そんな……そんな、お売りするものなどありません!」
「あるわ。売ってほしいのはクーニア、あなたの心臓なの。今日移植してもらうはずの心臓よ」
「そんなっ!」
テレーゼの遠慮のない言葉に母親が卒倒する。あまりのことに倒れてしまった母親を、三人の子供たちが心配そうに取り囲んでいる。
「ねえ、クーニア。売ってちょうだい」
「でっ、でも」
当のクーニア本人も驚いているらしく、まともに言葉を継げないでいる。
「見たところ、あまり裕福そうではないわね。でも、あなたが心臓を売ってくれれば、お母さまや妹弟は幸せに暮らせるのよ」
こんな豚箱で生活しているくらいだ、お金はのどから手が出るほど欲しいはず。お金をちらつかせればすぐに食いついてくるだろう。
「お母さま方を裕福にしてあげたくはなくって? あなたが後どれくらい生きられるかはわからないけれど、みんなを幸せにしてあげたいでしょう?」
クーニアが生唾を飲み込んだのが見えた。その瞳は、バッグの中のお金に釘付けになっている。
(なんて恐かなの……)
億の金は決して安くはないが、テレーゼにとってはすぐにまた手に入れられる金額だ。命ほどの価値はない。
「あの……お姉さんも、心臓がお悪いのですか?」
「そうよ。わたしは心臓が悪いの。幸いにもまだ元気だけれど、ことは急を要するわ」
心臓が悪い。だからだんだんと身体も弱っていく。そしていつかはこの娘のように衰えて死んでいく。
それは、テレーゼには許せないことだった。まだまだ遊びたいし、すてきな恋もしたい。将来は名門の金持ちと結婚して遊んで暮らす……。
「そうですか」
クーニアは考え込むようにうつむいた。ややして、顔を上げてテレーゼのことを見つめる。
「お姉さんの身体を治すためです、わたしの心臓を使ってください」
「あら、いいのね。 ありがとう」
やはりテレーゼの読みは当たっていた。ことは万事うまくいっている。
「じゃあお金はあげるわ。せいぜい贅沢に暮らしてちょうだい」
「いいえ。お金なんていりません」
「はぁ? なにとぼけたこと言ってるの!?」
お金がいらないなんて。 ただの馬鹿だ。
「お姉さんに心臓はあげます。 元気になって下さい」
(タダでくれるっていうの? なんて馬鹿なのこの娘は)
テレーゼの健康のために、自分の命を差し出すなんて。
「いいのよ、お金はあげるわ。そんなお金、わたしにとってははした金よ。 いいから黙って取っておきなさい。じゃあね」
テレーゼは一方的にそう告げて家を出る。背後でテレーゼを引き止めるクーニアの声がしたがそれは無視した。
心臓をもらうというのに、タダで、なんていうのはなんだか後ろめたい気がしたのだ。それに、タダでやるなど気持ち悪いではないか。 命なのに。
「これでいいわ」
つぶやいて家の前に止めておいた車に乗り込む。
「ハーレキン診療所へ行ってちょうだい」
◆ ◇ ◆
「お帰りなさい。話はついて?」
診療所に戻ったテレーゼを迎えたジェノバに、彼女はしっかりと領く。
「とびきり高く買い取ったわ。これで心臓をわたしに移植してもらえるのね」
「ええ。クーニアちゃんの命と引き換えにね」
さらりと言われたその台詞にテレーゼは顔を曇らせた。
「それは皮肉のつもりなの? 心臓はわたしが譲り受けたのよ。お金はお礼として置いてきただけ」
「皮肉なんて、そんなつもりじゃなくってよ。でも、そう。譲ってもらえたのね。いいことだわ」
そう言ってほほ笑むジェノバはなんだかやたらと嬉しそうに見える。人の命にかかわることのなにが嬉しいのかはテレーゼには理解できそうになかった。
「じゃあ、移植しましょうか」
「今!?」
「そうよ。あいにく心臓は日持ちがするほうじゃなくって。 造り出してからすぐに移植しなければいけないわ」
ジェノバはそう言って、こっちにいらっしゃいと奥の部屋へ続く扉へテレーゼを誘う。
「ほら、見てご覧なさい。これが、クーニアちゃんのために造った心臓よ」
奥の部屋の中央のテーブルの上にあったものは。
「……心臓」
心臓、だった。 なにかの液につけられている。おそらく保存液なのだろう。そして、心臓はその液の中でどくどくと脈打っているのだった。
「これ、ホントに……?」
「今更なぁに? これは本物よ。ある遺伝子が作り出すアクチビンっていう物質の濃度を造りたい物質によって調整してあげて、まだ役割の決まっていない細胞にかけてあげるの。そうするとね、心臓や肝臓、筋肉、血液細胞なんかを自由に造り出すことができるのよ」
「すごい……」
「ええ、そうでしょう。これをクーニアちゃんに造ってあげたの。ただ、これを造るに当たってはものすごく莫大な費用がかかるのよ。 だから、高いの。クーニアちゃんに払ったお金とは別にお金はいただくけれど、いいかしら」
「ええ。ええ、いいわ。わたしにこれを移植して」
人工臓器移植。違法だけれど、これで助かる。そんな思いがテレーゼのほおをゆるめた。
「性能は安心していいわ。ちゃんと実験済みよ。移植しても、きちんと機能するわ」
ならば、安心。
「早速お願い。いつでもいいわ。家には使いを送って入院の準備をさせるわ」
「その必要は、ないのよ」
そう言いながら、すうっとジェノバの瞳が知められる。 唇を薄く引き廷ばして笑う。なんだか、いやらしい感じのする笑みだ。しかし、テレーゼはそれには気がつかない。
「わたしの腕がいいという噂は聞いていなくって? すぐに終わるし、今日中に家に帰れるわ。時間はそれなりにかかるから、運転手はうちに帰しておきなさいな。終わったら電話をかしてあげる」
「そうなの。じゃあそうするわ」
「ええ」
ジェノバは領き、クックと笑う。
「世間知らずは命取りよ……」
「え、なにか言った?」
「いいえ」
ジェノバが小さくつぶやいた声はテレーゼには届いていなかった。
「じゃあ、始めましょうか」
◆ ◇ ◆
テレーゼはゆっくり歩いてみた。どうにも落ち着かなかったが、手術は大成功だとジェノバは言った。
クーニアの胸におさまるはずだった心臓は、今はテレーゼの胸の中にある。
「どうしたのテレーゼ。そんなに歩き回ってはいけないわ」
「落ち着かないのよ」
本当に落ち着かなかった。今ある心臓が自分になじんでいないような気がするのだ。どくどくどくと脈打つ心臓の音がやけに大きい。
「最初はそんなものなのではなくって? それはもともとクーニアちゃんのものだったのだし、気持ち的に違和感があって当然じゃない?」
「そうかしら……」
どくどく、どくどく。
「––––––––あっ!!」
「どうしたのテレーゼ?」
「心臓が––––––––」
痛い。心臓が痛い。 否、心臓が痛いのではない。胸が痛いのだ。
「胸が痛いわ! 痛い!」
「そう……」
「助けて、痛いわ! 早く!」
あまりの痛みにふらついて胸を押さえる。その手に、激しく脈打つ心臓の鼓動が伝わってきて、テレーゼは一気に血の気をなくした。
心臓が、好き勝手に動いている‼︎
どくん……どくん……。
「いや!」
心臓が跳びはねているのがはっきりと伝わってくる。上に下に、右に左にと、勝手な方向に跳びはねているのだ。そして、やせた胸を突き破らんばかりの勢いで猛烈に脈打っている。
「ねえ、助けてってば! 医者でしょう! 移植したの、あなたでしょう ! 」
どくん……どくん……どくどくどく……。
「いやあぁああ––––––––‼︎」
鼓動が高鳴る。胸が痛くてたまらない。
「テレーゼ。どうやらあなたは心臓に拒絶されてしまったようね」
「どういうことなの……ッ!」
「そのままよ。その心臓はクーニアちゃんのために作ったもの。クーニアちゃんに合うように、ね。もちろんあなたに適合するように調整はしたのだけど、心臓があなたを拒否しているのね。それだけよ」
ジェノバの瞳が細くなる。そうして苦しさに喘ぐテレーゼを、どこか怯惚とした表情でながめて、クク……と嗤った。
「知っていたのね! こうなるって !」
ジェノバは答えない。テレーゼの苦しみの様子が彼女にはよほど美しいものとして目に映っているのか、悦に入っている。
「心臓に拒絶されるなんてッ! そんなことッ! ひどいわ!」
「そうかしら」
ジェノバがやっと口を開く。口調は今までとはがらりと変わっていて、全てが皮肉に満ちている。
「ひどいのはお互い様よ。あなたは自分の命のことしか考えていなかったでしょう? 人の命はどうなってもいいって思っていたでしょう」
「‼︎」
「死ぬのは一瞬よ。どうせ心臓が悪かったのだし、死期が少し早まったと思えばどうってことないでしょ」
「死!?」
テレーゼの表情がかたまった。その時。
一瞬テレーゼの動きが止まり、そして彼女の胸から鮮血が飛び散った。
心臓が、テレーゼの胸を喰い破ったのだ。
どくん……どくん……。
赤に染まった視界がテレーぜの最期に見た光景となった。
◆ ◇ ◆
ゆっくりと力をなくして倒れていくテレーゼの身体。その胸からは、真っ赤な血の色をした心臓が脈打ちながら見え隠れしている。
そして心臓は、地面に倒れたテレーゼの体を食り喰い始めた。
人の命。それをなんとも思わない愚か者。ジェノバはそんな恐か者たちが自滅していく様がなによりも好きだった。
「そう、最後まできれいに食べておあげなさい。そうして力をおつけなさい。あなたはクーニアちゃんの命なのだから。人の命をお金で買った愚か者を食べて、強くおなりなさい」
きれいな光景だった。ジェノバが愛する、最も美しい光景。
「一つ、教えてあげましょうね。どうしてわたしが『ハーレキン』なのかを。ハーレキンは無言劇の道化師よ。ハーレキンはね、なにも言わないのよ。あなたが破滅すると知っていても、ね」
ずるずる、ずるずる……ずる。
心臓がテレーゼの体をすすっている音が聞こえる。
ジェノバは、それをそのままにして部屋の外に出た。そこには一人の少女の姿がある。
「あら、クーニアちゃん。来ていたのね。ごめんなさい、気がつかなかったわ」
今日予約の入っていたクーニアには、ジェノバが事前に電話していた。心臓はあるから移植しに来なさいと。
「あの……心臓は……」
「あるわよ」
「でもわたし、知らないお姉さんに心臓売ってしまって 」
クーニアがうつむく。他人を思いやれる優しい子だ。
「気にしないでいいのよ、そのことは。彼女、心臓はもう要らないんですって。ドナーが見つかったそうなのよ。だからいいの」
ああそうなんですか、とクーニアはつぶやき、そしてはっとしたように顔をあげる。
「……お金 」
「お金はプレゼントですってよ。身も知らぬ自分に心臓を譲ってくれた優しさへのお礼ですって。受け取っておきなさいな」
心臓はクーニアに移植する。クーニアのために造った心臓は、きっと彼女を守ってくれるだろう。テレーゼの命もすすり、強くなって。
「わたしね、クーニアちゃんの手術を最後に、ここから立ちのこうと思うの」
「えっ? 出ていかれるんですか?」
「ええ」
この地でジェノバ・ハーレキンの名は結構広まっている。そろそろ潮時だ。
「また今度は別の場所に診療所を開くわ」
そう、そうしてそこでもまた、愚か者たちを捜すのだ。ジェノバが愛してやまない、とてつもない愚か者たちを。
「さ、クーニアちゃん。そろそろ、始めましょうか」
◆ ◇ ◆
クーニアの手術が無事に終わって数日。ハーレキン診療所は跡形もなくその場所から消えていた。最初からそこにはなんにもなかったように、完全に。
……次は、あなたの街に 。
「ええ、できてますよ。病気にかかりにくく、アルコール中毒にもならない受精卵を選んでおきました。エイズウィルスはもちろん、あらゆる病原菌に感染することはまずないでしょう。ガンの発生率も低くなっています。 え? 肉料理が好きで、甘党でらっしゃるんですか? では、サービスです。 ポルタトーリの遺伝子を発現させて差し上げましょう。ポルタトーリとは遺伝子を運ぶ人という意味の言葉で、 動脈硬化になりにくい特殊な遺伝子なんですよ。今のところ、世界でたった38人がイタリアにいるのみです。 どうです、すごいでしょう? お金は高くつきますよ。ああ、ポルタトーリの遺伝子はサービスですけど。え、お金にいとめはつけない? いい心がけですね」
<END>
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