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僕の通う高校は、駅から徒歩十五分、バス停からなら徒歩四分の場所に位置する……どこにでもある他愛のない進学校だ。
だからと言って、僕が勉強に明け暮れているガリ勉かと言えばそうじゃない。
授業は時々惰眠を貪り、なんなら後ろの席だというのを利用して、授業中に新刊のラノベや漫画を読んでたりする。まぁ成績の方はお察しだけど、それなりに楽しい、退屈しない日常を貪っている。
僕、
日常を悲観することもない。別にたいそうな厄災に見舞われることもない。数少ないけれど友達もいるし、教室の隅っこで男子高校生トークに華を咲かせている。
ロリが良いとか、サドの先輩キャラが良いだとか、そういう高尚な談論を交わす二次元哲学者なんだ、僕は。
だから今日も僕は鞄の中に二、三冊のラノベを積めて、勉強なんか二の次で学生生活を謳歌しようとしていたんだ。
朝七時二十分過ぎのバスに乗り込み、乗客の波に飲まれつつ、右に揺れては左に揺れて。
そうしてバスを降りて、いざ教室へ行かんとしたのが悪かったんだろうか。
登校の道中に在る小さな地蔵の飾られた古い祠。
観音開きの扉なんてついていない開放的なスタイルだ。中にはにこやかに毎朝僕を見てくるお地蔵さまと、百合の花の生けられた白の花瓶があるばかり。
いつもなら気にも留めずスルーするが、今日はそうじゃなかった。
視線が吸い寄せられてしまったのだ。
祠の三角屋根の上にちょこん、と座り込む人影があったから。
寂しげにも、つまらなそうにも見える表情の女の子。小麦色の健康的肌色で、普段は快活にそこら中走り回っていそうだ。だがそういう雰囲気は今は失せ、物静かにそこに座りこむだけのアンニュイな雰囲気を纏っていた。
赤茶色のワンサイドアップが特徴的で、加えて魅力的なのは麗しい太眉だった。見る者に元気を与えてくれるようなその眉が、しょんぼりと八の字を描いている。
いや、そんなものよりもひと際目を引くものがあった。
彼女はふわふわフリルの黒いメイド服を着ていたのだ。
こんな道端、学校の近辺で朝っぱらからメイド服姿だった。
硬直し、唖然と見つめていた僕の視線に彼女はようやく気付く。
目をまあるく見開き、ちょっと唖然として。喜びをこらえきれないというにやつき顔で、人差し指を突き付ける。
「
そいつはうちの高校の有名人 有馬いろりで間違いなさそうだった。
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