第28話 進路
あれから約2年半後受験シーズンとなり、3人はそれぞれの道を歩む。
千尋は国立開拓士育成専門学校の試験を受け、合格。
かなり難関だが、公介や凛子達とビギナーダンジョンへ何度も出向き、透明水晶で魔力量を増やし、魔力制御の練習で火もかなり扱いこなせるようになったおかげだ。
凛子は民間の鍛冶スキル育成専門学校の試験に合格。
鍛冶スキルを持った者しか入れない為、倍率は高くなく、すんなり入学することができた。
そして公介は進学はせず、開拓者としてダンジョンでの活動に専念することにした。
千尋と同じ専門学校へ入学することも考えたが、卒業と同時にBクラス免許自動交付というのは、公介にとってさほどメリットでは無いからだ。
DクラスからCクラスへ、そしてCクラスからBクラスへ昇格する条件は意外と少なく、どちらも2つのみ。
1つはビギナークラスからDクラスへ昇格するとき同様、身体検査での合格。
そしてもう1つは、ドロップ品の買い取り額。
Cクラスに昇格するには、Dクラスになってから1千万円相当のドロップ品を得る。
そしてBクラスに昇格するには、Cクラスになってから3千万円相当のドロップ品を得る。
因みに自分で持ち帰り、政府以外の企業や団体、個人間で取引した金額も加算される。
以前は加算される額が半分だったが、政府がドロップ品を得られるように誘導しているとの批判が多く、同額となった。
但し、ダンジョン産の物を取引する場合は消費税の他にダンジョン税が5%かかるようになった。
ダンジョンの管理にもお金がかかるのだから仕方無いことなのだ。
加工や鍛冶スキルの使用を依頼する場合はかからない。
つまりDクラスからBクラスへ昇格するには、合計4千万円相当のドロップ品を得る必要があるが、ドロップ率上昇スキル持ちの公介にとっては、国立開拓士育成専門学校に4年間通うより早く到達できる為、わざわざ入学する必要が無いのだ。
とは言っても、Cクラスには特急券など無く、20歳以上にならないと取得出来ないが。
それに2人が学校に通っている間は、堂々と1人で活動できるメリットもある。
世界での大きなニュースといえばやはりWMデバイスの普及だろう。
購入代金はかからず、デバイスを使ってダンジョンで得た収入の1%をエイル社へ振り込むのが条件。
日本も法整備を行い、20歳以上のデバイス所持者は稼いだ金額にかかわらず身体検査に合格すれば、Cクラスまでの免許を交付出来るように改正した。
勿論身体検査にデバイスを使用することは可能。
因みに日本ではモンスターの強さをAAからビギナーまでの6段階に分けているが、これは国連が定めた基準で、モンスターの強さを最低でも5段階に振り分け、入った者が不幸な結果を招くことのないよう政府は対策をしなければならない、と各国に通告したのだ。
とはいえ国連が発表する前に発表したアメリカの基準も、これに則っていたことから、事前に国連とアメリカが決めていたことだったのだろう。
現在、各国は皆モンスターの強さに比例した免許を交付し、死亡リスクの軽減を図っている。
クラスやランクの名称が同じとは限らないが、強さの基準は同じ。
ダンジョン開拓者というダンジョンで活動する者を示す名称も各国共通である。
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