始動
第15話 公介、初ダンジョン
政府がダンジョンと発表した頃はビギナーランクのダンジョンにはスキルという未知の力を獲得したい者達で、毎日溢れかえっていた。
しかし、流石に出現から約5年経過した今となっては、今日16歳を迎える若者達ぐらいしかいない上、ビギナーランクのダンジョンもかなり発見、認定されてきた事から、人はあまりいない。
大人でもビギナークラスの免許で停滞している者も多いが、ビギナーダンジョンに出現するような弱いモンスターではアイテムドロップ率が低い上、ドロップ品の価値も高値になりにくい為、実質未成年の小遣い稼ぎか、有用なスキルに恵まれず、開拓士を諦めた者のクラスである。
というより、Dクラスに昇格する為の、身体検査で断念する者が少なからずいる。
只でさえ、戦闘に使えるスキルは限られてくる上、魔力を高める唯一の手段である、透明な水晶もビギナーダンジョンではなかなかドロップしないことで、普通に働いた方が良いと思う者が多いのだ。
そして今日まさに16歳を迎え、ビギナーダンジョンに入場する者達の中に主人 公介の姿もあった。
(ビギナークラスの免許も持ったし、忘れ物はないな)
公介がやってきたダンジョンは港区にある、日本一有名なビギナーダンジョンだ。
都心部なだけあって、入り口の周りには、買い取り窓口や、武器の貸し出し場、シャワー室、更衣室など設備が充実している。
入り口に、スーツを着た者達が居るが、あれは言わば自社への勧誘。
自身のスキルが判明し、さらにそれが、世間的に当たりとされているスキルだった者達を自分達の企業へ勧誘するのだ。
今日は日曜日なだけあっていつもより人が多い。
企業のジャンルは様々。
スキルの種類が様々なのだから当然だろう。
個人でダンジョンで稼ぐ者ももちろんいるが、企業に入社すれば保険の費用を負担してくれる他、武器や防護服も会社から無料で支給される等、色々とメリットがあるのだ。
元々、ダンジョンで得た収集品は政府が買い取ることになっていたが、政府が全ての物を買い取るのは独占禁止法に違反するとの声が多数挙がったことで、政府が買い取ると指定したドロップ品以外は、個人間での取引が容易となった。
さらに、政府が指定したドロップ品の中でも、一部は企業や団体が買い取ることが可能である。
例えば、新たなエネルギー源に加工できる黒紫色の水晶は、ルール変更後も国が買い取ることになっているが、ガソリンスタンドなど石油を扱う企業の一部には、自社での買い取りを許可している。
(俺がこの後手に入れるスキル次第では、もうこの中の企業にスカウトされ、内定が決まる可能性だってあるのか)
もし公介が、手に入れた自分のスキルが直ぐ判明し、仕事に有用なスキルだった場合、入り口で待機している者達は、スキル次第で彼をスカウトするだろう。
(国立の専門学校だって夢じゃない...いや夢か)
去年国が設立した、[国立スキル科入隊候補育成専門学校]。
自衛隊に新たに設立された、スキル科に入隊する自衛官を育成する専門学校である。
任務は主に2つ、
1つ目は他の科同様、他国による侵略を受けた際に、防衛活動を行う。
但し重火器より、スキルを活用する戦闘を想定した部隊なのが、他とは違うところ。
2つ目は、ダンジョンがオーバーフロー状態になった際の対処。
だが、憲法で戦争を放棄している日本が、他国からの侵略を受けることはまず無い上、オーバーフローも頻繁に起こるわけではない為、入隊後も訓練がほとんどである。
そしてもう1つ国が設立した専門学校がある。
国立開拓士育成専門学校だ。
こちらは、将来開拓士として活動するもの達を育成する学校であり、卒業と同時にBクラス免許が交付される。
授業料は無料であり、太っ腹だが、その分入学の基準は厳しく、入学の時点でCクラスに匹敵する実力が実技試験で求められる。
その他にも、民間の学校もいくつかあるが、ダンジョン以外でスキルを生かすような職に就くことを目的とした学校のみで、開拓士を育成する学校は現在国立のみだ。
受付でチェックインを済ませた公介は、自分のスキルに期待を持ちながら、ダンジョンに入っていった。
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