進略侵化

フィラスト

プロローグ 異変

第1話 緊急会見

「ん?」




主人 公介あるじ こうすけはテレビを見てそう呟いた。


 テレビの左上には、14:05と映っているが、勿論そんなことで驚いているわけではない。

 彼が驚いているのは画面上に出ているテロップである。






 日本各地に謎の穴出現。

 崖田総理、5分後に緊急会見。






(穴?穴が出現ってなんだ?)


 公介は不思議に思い、スマホでSNSを開くと、というワードがトレンドに上がっていた。

 タップすると、その穴についての動画が多数投稿されており、動画には、確かに横が約10m、高さが約5m程のトンネルのような穴が不自然に出現している。


 奥は暗くてよく見えないが、かなり深くまで続いていそうだ。

 しかも、何故か横や後ろからのからの映像だと、そこには何もないように見える。


 そしてその動画には、




 中の映像も見せろ


 ダンジョンキター(゚∀゚)


 モンスターは?




 など、まるでゲームの世界から出現したとでも言いたげなコメントが流れていた。


 公介は馬鹿馬鹿しいと思ったが、実際にテレビのテロップに出ている以上、信じざるを得なかった。


 そんなことをしていると、いつのまにか時刻は14:10になっていた。

 画面が首相官邸1階、記者会見室の映像に切り替わり、それと同時に崖田総理が入室、画面中央に立つ。


 そして一呼吸置いた後、カメラに向かって話始めた。


「現在我が国を含めた世界中に多数の穴が出現しており、敵性勢力による侵略攻撃を受けている可能性があります。勢力の正体、攻撃の意図は未だ不明ですが、国民の皆様は近くに穴が出現したとしても決して中に入ろうとせず、慌てず警察に通報してください。SNSでは様々な憶測が飛び交っていますが、デマ情報に惑わされないようお気をつけください」


 そう言い終わると、総理は会見を終えた。

 画面には同じ映像が繰り返し流されている。

 長々と会見をする時間は無いということだろうか。

 現状と要点を簡潔に伝えただけの短い会見であった。




(ふーん......ま、いっか)

 公介は特に行動を起こそうとは思わなかった。

 穴の正体は気になったが、仮にネットで指摘されているようにダンジョンだったとしても現実で命を懸けて戦うことなんてしたくない。

 そもそも政府が入るなと言っている以上、今は政府に任せればいいと判断したからだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る