妹に悪女の汚名を着せられ、婚約者の第一王子を奪われ、婚約破棄の上に国外追放にされました
克全
第1話:婚約破棄追放
「もう、これ以上はオリビアお姉様だからと言って庇い切れません。
私に対する数々の嫌がらせや暗殺未遂は我慢できます。
ですが、クウィチェルム王子に対する暗殺未遂だけは絶対に許せません。
幾らクウィチェルム王子と結婚するのが嫌だからと言って、暗殺を企む事はないではありませんか、オリビアお姉様。
正式に婚約を解消すればいい事ではありませんか。
何故なのです、何故このような不忠な事をされるのです、オリビアお姉様」
豊満な胸をクウィチェルム王子の腕に押し付けながら、異父妹のサクスブルフがわたくしの事を非難しています。
このような茶番劇に付き合いたくはないのですが、自分の演技に酔ったサクスブルフに何を言っても無駄なのは、異父姉のわたくしが誰よりも知っています。
それに、貞操観念の全くないサクスブルフに籠絡されたクウィチェルム王子は、もうわたくしを処断する気でいる事が明らかな目をしています。
いえ、サクスブルフとクウィチェルム王子だけではありません。
今宵の舞踏会に招かれた全ての貴族や騎士が、わたくしを貶めようとしています。
このような状況で何を言っても、言葉を歪曲されるだけです。
そんな無駄な事をするよりは、さっさとこの国を出て行くだけです。
わたくしがいなくなってから、この国がどうなろうと知った事ではありません。
「黙っているという事は、言い訳もできないという事だな。
サクスブルフ嬢が言っている事を認めるという事だな。
私を殺そうとした事を認めると言う事だな。
王子を殺そうとした罪は重いぞ、オリビア。
本来ならば首を刎ね晒し者にしてやるところだ。
だが、ダグラス女伯爵家は、初代国王陛下が女系を護るように言われた特別な家だから、罪一等を減じて婚約破棄のうえで国外追放刑にしてやろう、感謝しろ。
何か言いたい事はあるか、オリビア」
ええ、本当なら言いたい事は山のようにありますよ、クウィチェルム王子。
ですが聞く耳を持たない者に何を言っても無駄でしょう。
これから地獄を見る者に何を言ってもしかたのない事です。
もし貴男が真っ当な王族で、王族の義務を知っていたのなら、このような事にな成らなかったでしょう。
いえ、クウィチェルム王子一人の責任ではありませんね。
ウェセックス王家の者全てに責任があります。
初代王の遺言を護らず、兄弟や甥叔父間で王位を争って国を乱した事。
今も王を名乗る王族が複数立っている状況が許されない事なのです。
僅かとは言え初代王の血が流れているわたくしにも責任はあります。
ですがその血よりも優先しなければいけない重大な事があるのです。
無念の死を迎えられた母上様やおばあ様、遥か古より受け継がれてきた母系の盟約を護らなければいけないのです。
そのために、この国の人々が滅ぶ事になってもしかたがないのです。
いえ、母上様が無念の死を迎えられてから、わたくしにはこの国に対する恨みしかないですから、喜んで見殺しにさせていただきましょう。
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