第73話 英雄アリアケによって世界は救われる!
73.英雄アリアケによって世界は救われる
「スキル・スタート」
俺は目前で今まさに現実になろうとしている、世界の破滅の危機に対して、何ら慌てることなく詠唱を開始する。
「
醜悪な怪物から、ついには海洋を呪う汚物にまで成り下がったビビア・ワルダークの融合体は、自らの哀れな様子には頓着がないようで、気持ち悪い音色のようなものを上げる。
だが、
「何を嗤っている、ビビア・ワルダーク」
「
何かを言いかけようとするが、
「……なぜなら、呪いという、世界を破滅させるレベルの、実体なき
「
俺がそう言うと、汚物は驚嘆のような音を上げる。
俺は「フッ」と思わず口の端を上げて、
「一般に神に近しい者ほど、実体なき概念に近い。ならば……」
俺は哀れなワルダーク、そしてかつての勇者ビビアの成れの果てを哀れみ、見下ろしながら、
「この地上にて最もその存在に近い俺から、たかだか、呪い如き卑小な概念存在になったくらいで、本当に逃げられると思ったのか?」
「
真実を言い当てられ、呪いの粘度が増す。
触れてすらいないのに、熱を感じさせるほどの憎悪の塊。これがこのまま海洋を汚染すれば早晩人類は滅亡する。
まさに世界の危機だ。
だからこそ、
「≪
俺はスキルを使用した。
それは俺たち賢者パーティーが、神に近い者たちの集まりだからこそ発動できる究極のスキル。
神龍、神槍、聖女。そして、神に選ばれた俺という存在。
俺から見て左にコレット、右にラッカライ、そして前方にアリシアが陣形を組む。
『神は世界を四方に分かち、力を合わせ、世界を守っている』
そう、このスキルは始祖神話の再現。
俺たちが神のような力を振るうことを現実化する規格外のスキル。
だが、俺を慕い、彼女たちのような選ばれし者たちがそろわなければ、決して発動しない、通常ならば単なる死にスキルでもある。
「ぬおお、わしらの力が溶け合ってっ……!」
「はい、お姉様! 一つになっています!」
俺自身には敵を倒す直接の力はないかもしれない。
だが、
「いいですよ! いいですよ! さあさあ、やっちゃってください、アリアケさん!」
「思いっきりぶっぱなすのじゃ、旦那様!」
「先生、わたしの先生! さあ、今です!」
「ああ」
俺は彼女たちの言葉に頷く。
そう、俺自身に力はなくとも、俺を心から慕って付いてきてくれる存在たち。
俺自身に完全な信頼を預けてくれる者たち。
そんな彼女たちとともにあれば、俺自身にはむしろ力は不要だ。力などなくても、信頼さえあれば、
「世界の危機を救うことなど造作もない!」
そう、
「喰らうがいい! 哀れで醜悪なるビビア・ワルダーク! 力などなくとも、俺のように仲間との絆さえあれば、お前たちが画策する世界の破滅など、簡単に回避できるものと知るがいい!」
仲間なき、哀れな者どもよ!
「
最後に、かつての弟子ビビア・ハルノアの声が聞こえたような気がした。
だが、それはきっと感傷であったろう。
彼は俺に感謝こそすれ、恨むような理由はないのだから。
「消え去れ! 海洋呪怨生命体ワルダーク・ビビア・ポセイドン! この真の賢者アリアケ・ミハマの前から消え失せるがいい!」
俺は最後の言葉を放つ!
「
その瞬間、
まさに神たる俺を中心に世界に光が満たされた。
「ぶびいいいいいいいいいいいいい! あああああああああああああああああああああああああああああああ!?? あびあばあああばあああああああああああああああああ!?!?!?!」
神の放つ光によって、呪いの塊、ワルダーク、そしてビビアたちが消え去っていく。
光に影が飲み込まれ、浄化されて行くのだ!
「なんて、美しい光なんだ・・・」
「あれが賢者パーティー・・・」
「アリアケ・ミハマ様の真の力・・・。世界を救う力なのか・・・」
俺たちの戦闘を見ていた大衆から、感動とも畏怖ともつかぬ声が次々と漏れる。
そして、数十秒続いた光の浄化が終わった後には、ただ穏やかな平和な海が広がっていたのだった。
それはまさに、俺……アリアケ・ミハマが率いる賢者パーティーの活躍によって、世界の危機が回避された瞬間であった。
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