これからの沙羅ちゃんへ【スキージャンプ】

 北京五輪、ジャンプ混合団体の悲劇……

 高梨沙羅選手を含む優勝候補に挙げられていた4カ国合計5名が失格になりました。


 競技した直後に、スーツの測定を行った結果、規定違反となり直前のジャンプが取り消されると言う、今回の裁定……


 色々と思うところはあります。


 そんなの競技前に検査すればいいじゃん!

 失格者を出さないように運営する事はできたよね!

 検査対象がランダムの抜き打ちって不公平だよね!

 やるなら全員検査すればいいのに!

 測定方法がW杯と違うと言っている選手がいるけど、どうなってるの?

 ……


 昨日は会社をきっちりと定時であがり、即効で家に帰って風呂に入り、この競技が始まるのを万全の体制で待っていました。


 一本目、トップバッターの高梨沙羅選手のビッグジャンプ、期待度が俄然上がりました。そこで知らされた高梨選手、失格のニュース……


 今日一番の楽しみだったのに……

 この気持ちどうしてくれるんだ? 

 っとまぁ、私の事はどうでもいいです。

 別に何の努力もしていないのだから……

 やけ酒を飲んでおしまいです。

 だけど……


 腑に落ちないところは山ほどあります。

 だけど、これもオリンピック!なんですよね。


 オリンピックは、世界最高峰の選手達が集って、技を競い合う場ですが、必ずしも世界最高水準の運営体制になっているとは限りません。選手達が技を披露する、ゲレンデも、ジャンプ台も、スケートリンクも、超一流とは限らない……

 きっとオリンピックってそういうものなのでしょう。


 例えば、スキージャンプで言うならば、選手達が主戦場にしているのはW杯のシリーズ戦であって、オリンピックではありません。四年に一度だけの大会では技を磨く事は出来ませんから……

 当然、選手達はW杯の基準に則って競技をしている訳です。

 W杯でも当然ながら、スーツの測定は行われます。たまに規定違反で失格になる選手が居る事も事実です。

 でも今回の様に多数の選手が失格になると言うのは異例な訳で、という事はW杯のシリーズ戦とは異なる運営方法がなされていた事は間違いないでしょう。

 そして、そのオリンピックの基準や運営方法が優れているわけではない。

 オリンピックには魔物が棲んでいる、なんて言われますが、その所以は、ここに在るのかもしれません。


 今回の件は、これから検証がなされていく事でしょう。

 グレーな部分がクリアになっていくかもしれません。

 でも、運営しているのも人間な訳で、そこの責任をいくら追及しても結果は覆らないでしょうから、今後に活かされればそれで良いと思います。


 それよりも、私が注目したいのは高梨沙羅選手の今後についてです。

 ネット上では同情の声が数多く挙がっているようです。


 沙羅ちゃん、かわいそう……


 そりゃそうです、まだ幼さが残る頃からずっと世界のトップで頑張ってきた選手のあんなに悲しそうな姿を目の当りにした訳ですから……


 でも私は、声を大にして言いたい。

 いくら同情したところで、彼女が救われるものではない、という事を。

 かわいそうな人、と多くの人に思われる事こそ、彼女を苦しめるんじゃないかと。

 今回の不運は、輝かしい彼女の功績の中の僅か一コマに過ぎない訳で、決して彼女の活躍を汚すものではありません。

 


 メダルを獲得できなかった責任なんて感じる必要ないよ……


 もちろん、その通りです。

 でも、いくらそう言われたって、責任を感じてしまうでしょう。

 だって、経緯はどうであれ、得点がゼロだった事に変わりは無いのだから。

 でも試合が終わった後、駆け寄ってくれたチームメンバーが居ましたよね。

 同級生の小林陵侑選手、ハグしてましたね。

 辛い思いを分かってくれる仲間がそばにいます。

 彼女の傷を癒す事が出来るのは、一緒に戦っている仲間とスタッフ、あとは時間です。


 私は、この先の沙羅ちゃんを応援したい!

 この状態で競技を続行して欲しい、なんて言うのは酷な事かもしれませんが、オリンピックの後も戦う場所は残されています。

 今シーズンのW杯はまだ終わっていません。そこで戦う姿が観たい!


 ここで終わって欲しくない。

 ここをゴールにして欲しくない。

 誰かの為に頑張らなくても良いから、自分の為に頑張ってほしい。

 そしてまた、競技が終わった後の笑顔が観たい。


 この試練を、乗り越えられなくても良いと思う。

 みんなの期待に応えられなくても良いし、この先のストーリーがハッピーエンドにならなくてもいい。エピローグになったって構わない。

 でも、もう一度、笑顔を魅せてほしい。

 弾けるような笑顔じゃなくてもいい。

 はにかむような笑顔でも、苦笑いでも何だっていい。

 だけど、今回の涙でだけは、終わって欲しくない。


 私の身勝手な、切なる願いです。

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