第21話 ソラ目線 トキの居ないローズガーデン


暴風雨の夜が来て 翌朝はそれが嘘のような晴天だった日


バラの花は散ってしまったかもしれないなあっと思いながら バラ園を歩いていた時にトキを見つけた。


人でないのはすぐに分かった だって まだ残っている強風に時折ふわりと体が浮いているし 身体が透けて向う側の景色が見えている。


仲間が出来た っと思った

んんんんん?

仲間? そう 幽霊仲間?人に見つけてもらえない仲間?


でも トキには名前があって 願いがあった。どちらも 僕にはないモノ


最初は 僕より長い間一人で彷徨っていた小さな女の子を母親の元に届けたいと

迷子を助けるような気持ちで トキをいつものテラスに連れて行った

ユキさんが考えてくれるって言ってくれた時は よかったっと思った


トキの願いが叶うまで トキを守ろうと手をつなぎ 

風の入らない場所を探して一緒にすごした。


無表情なチイだけど 気持ちが無いわけじゃない 喜んだり 悲しんだりしているのは分かる


ずっと 話し相手もいなかった ガーデンの門のあたりをウロウロするしかなかった僕にとって チイは大事な友達になった

友達?ともだち? だいじなともだち?


小さい女の子 トキの願いが叶うのは 僕の望みのはずだったのに

トキが おねーさんと仲良くなるのは なんだか楽しくない


そして 昨日 トキはおねーさんの家に行ってしまった

トキに「行かないって」言って欲しいと思ったのにさ


***


おねーさんもトキも居ないから 僕はバラ園を一人で、深淵を連れて歩く

深淵(コイツ)は トキが苦手だから 今日はなんだか嬉しそうに見えるよ


今日は誰も来ないだろうなあっと思うのに 気が付いたらテラスに向かっていた

テラスに理央さんとユキさんが居るのが見えた

あの二人も習慣で来ちゃったのかな? 

今日はトキが居ないから 理央さんに甘えちゃおう

理央さんにくっついていると安心するんだよなあ 人の温もり?っていうの?気持ちいいんだよな


ユキさんの目を盗みながら 理央さんの背中に飛びつく 

「ん?」

理央さんが何かを感じたように 襟元に手を入れて細い三つ編みを取り出して前に垂らす


**


「理央 ソラが来てる」

「そっか ソラ こんにちは 涼しくしてくれてありがと ちょうど君の話をしてたんだ」


理央さんがが首を回して でも 僕が居ないところに目を向ける

理央さんって 僕が居るところを見たのって 一番最初に門の所で目が合った?って思った時だけじゃないかなあ?

わざと?ってくらい 僕の居ないところを見ている


ユキさんが見ていた机の上の紙は 理央さんが書いたものらしく 綺麗な字が並んでいる

えっと 僕の話って言ってたから 僕の事なんだよね?


1 バディを連れている

2 トキよりも存在感がある

3 風に飛ばされない

?トキは死んでいる 自覚無 幽霊(仮)?

?ソラは死んでない? 生きてもいない ?

「生霊」? vengeful spirit  執念深い霊?


V何とかはよくわからないけれど 僕は死んでも居ない生きても居ない「生霊」というのが二人の結論?認識?らしい

生霊ってなんだよ? 執念深い霊?ってなんだよ?

僕は どうしたいって願いさえないくらいなのに 何に執着しているって思われてるんだろう?



「ねえソラ、 俺とユキ ソラ研究会 結成したんだけど何か教えてよ」


僕が理央さんの背中にベッタリくっついていたら 理央さんが正面の空間を見ながら僕に声をかけてきた 何も教えられるような事は思いつかないし そもそも 理央さんって僕の声って聞こえないでしょ?



「理央、 そんな研究会は結成してないけど?」

「ユキ 結成しておけば 俺の協力が得られる」

「なあ 理央 特にソラについては お前に主導権を握ってもらいたいと思っているんだけど?」

「ああ 大丈夫 今は ユキはトキ優先でいいよ」


いつも通りの二人の会話 いいなあ 見えて聞こえるって



***


トキがおねーさんの家から帰って来た。

嬉しいな  ずっと 僕と一緒に居て欲しい。

どこにも行かないで 一緒にガーデンに居ようよ


トキの好きなバラは ピンクの小さいバラだから

毎日 バラを数えよう


ちいの好きな人は おねーさんだから 

おねーさんが来たら 一緒にテラスでお話しよう


トキの一番の 望みはトキの家族に会う事

だから …

だけど それは無理 トキは僕の唯一の友達だから、唯一 ずっと一緒に居てもらわないとね


おねーさんもユキさんも理央さんも 帰るところがあって 待つ人が居て帰ってしまう でも トキと僕は 無い者同士 仲良くしようよ 


あれ? それは 正しい事なのか?友達は 僕の為にいるの?


おねーさん と ユキさん と 理央さん 皆 違う 

性別も 性格も 見えるモノも違う

でも 今 トキの一番の望みをかなえようと願ってくれている


僕だけが 参加したくない 僕が最初にお願いしたのに 

トキを大事に思う程 その願いが叶わないことを願っている


駄目だ ダメだ だめだ


がんばれ僕


僕がいちばん なりたくなかったものになろうとしている 

それが いやだったから僕は

あれ?僕は???? どうしたんだっけ?

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