第9ー3話 Armchair Detective 安楽椅子探偵ユキ!
ノートの「レオナ」の下に お祖母ちゃんからのプレゼント と書いて考えるレオナにユキが続ける
「レオナちゃんのおばあちゃんは レオナちゃんの事が大好きだったから 最後の最後 あの世に行く前に君に会いたかったんじゃないかな?
で 深淵の入り口で 最後の最後までレオナちゃんを待っていて、やっと来た君を確認して、入った。でも あんまり粘っていたから 深淵が閉まる瞬間をレオナちゃんが見てしまった。
レオナちゃんを大好きなおばあちゃんの深淵なんだから怖いはずは無いんだろうけど……生まれて初めて人の死に向き合った事や いつもと違う周りの雰囲気に その深淵を怖いものと思ってしまった。
小さい子供が一人で対峙するには 怖すぎたんだろうなあ…死を怖い と思うのは普通のことだし ね?」
ユキが レオナの顔を覗き込むようにして 続ける
「そそっかしいお祖母ちゃんが慌てて 説明も出来ないのに危ない深淵を視わける能力を与えちゃって 小さなそそっかしいレオナちゃんがそれをただ怖がって
今の ひたすら 深淵を怖がるレオナちゃんになってしまった。これが僕の仮説。
レオナちゃんが 深淵をずっと怖いと思っていたのは、怖い深淵しか見たことがなかったからなんじゃないかな? 病院棟の方へ確認に行ってみる?
あそこで 僕に視える無害な深淵が君に見えなかったら 僕の仮説は正解って事になるでしょ?」
レオナは慌てて大きく首を振る わざわざ深淵を見に行くのはたとえ師匠が一緒でも嫌だ
「師匠は 探偵もできるんですね?…… 私 父にお祖母ちゃんにそっくりだと言われたことがあります」
レオナは 祖母の事を思い出す。
動物に好かれないレオナが 一度だけ 祖母と一緒に行った保護ネコ活動をしている場所で猫に触ったことがある。
ペットフードのツナ缶を人間用だと間違えて大量購入した祖母と保護ネコ活動しているグループに届けに行った時だ。初めて猫を抱いてご機嫌なレオナをみた祖母が、間違えて買ったことを棚に上げて「瓢箪から駒」だと笑っていた。
レオナの名前だって ちょっと小さめに生まれたレオナの事をなぜか未熟児だと勝手に思い込んで、強い名前をつけると 最初はレオとか勝(カツ)とかつけると大騒ぎしたと聞いたこともある
祖母の葬儀をきっかけに レオナの性格が変わってしまった事や、レオナ自身も祖母の深淵を怖がってしまっている後ろめたさがあって 家で祖母の話が出る事は殆どなかった。
今日、祖母の事を聞いてみよう。
多分 両親に聞いたら 面白い話が聞けるのではないだろうか?
確証も 裏付けも ない けれど ユキの推理は間違っていないと思えた。
おばあちゃんも 私もあわてんぼうだから おばあちゃんが心配して慌ててプレゼントしたから、わけわかんなくなっちゃったんだ。
ダメじゃん!おばあちゃんったら!!!
でも 大好き
昨日は 祖母に申し訳なくて 自分が情けなくて泣いた
けれど
今日は 祖母が大好きだと自信を持って言える事、自分が愛されていることが分かったのが嬉しくて、安心して 涙が出てきた。
汗拭きタオルに顏をうずめて泣く
今日の師匠は 最初から 頭をポンポンとして
「僕の 推理は当たりってことかな?」
と言った。レオナはそのまま 机につっぷして
「ちょっと 寝ていることにしてください」
とだけ やっと言った。
ユキは優しい目で そんなレオナをしばらく見ていたが やがて 傍らに置いてあった本を再び読み始めた。
しばらく泣いて 落ち着いたレオナがそっと顔を上げてユキを見ると、ユキは 隣で本を読んでいる
時々 蛍光ペンで印をつけながらページをめくるユキを見て そうかあ師匠も学生なんだなあっと思いながらしばらく見ていた。
レオナの視線に気が付いたのか ユキがチラリとレオナを見た。
ユキは優しい目で そんなレオナをしばらく見ていたが やがて 傍らに置いてあった本を再び読み始めた。
しばらく泣いて 落ち着いたレオナがそっと顔を上げてユキを見ると、ユキは 隣で本を読んでいる 英語の本? 時々 蛍光ペンで印をつけながらページをめくるユキを見て そうかあ師匠も学生なんだなあっと思いながらしばらく見ていると ユキがチラリとこちらを見た
「元気になった?」
「はい 10年ぶりに元気になった気がします 帰ったら祖母の事聞いてみます。裏が取れたらご報告させていただきます」
「おばあちゃんパワーって凄いんだよ 有さんは おばあちゃんが命を分けてくれて予定より2年長生きできたって言ってたんだ」
さらりとユキが言った 命を分けるって どういうことだろうかと思ったけれど ユキが言うなら本当なんだろうと レオナは自然と納得した
「顏 洗ってきます 師匠 ここで待っててくださいね」
レオナは カフェの洗面所で顏を洗って 鏡を見る いつもは、今朝までは、自分の瞳さえ見るのが怖かった鏡 なんだか 怖くない気がする。
そそっかしいおばあちゃんが 慌てて「見える力」を授けてくれたのに、私がカン違いしちゃったんだね
「でも おばあちゃんだって 安全な深淵も見えるようにしてくれたら よかったのに」
っと どこかにいるかもしれない祖母に言う
前髪を濡らしたままユキのもとに帰る。
冷房の効いた室内に比べると 日陰とはいえ外は暑い
ユキは 広げたままのレオナのノートを眺めていた。書きとるところを見られているノートだがじっくりと見られていると思うとなんだか恥ずかしい
「字も絵も下手な弟子ですいません」
言いながら レオナが座ると、レオナの書いた 半分黒い丸を指さしてユキがいう
「黒と白の勾玉が二つ向かい合っている図案知ってる?ここに ちょっと書いてもいい?」
太極と言われる図案をユキが書く、腕前は。。。レオナとあまり変わらないくらいの画伯ぶりだ
「あんまりうまく書けてないけど 分かる? 世界は全て 陰と陽で出来ているって考え だと思った 違ったらごめん でも 僕たちの深淵は 真っ黒じゃなくて この太極が 立体的になったような形をしているのかもしれないね? 」
レオナがノートの端に勾玉を書いて黒く塗ってみると ネコに見えなくもない 三角の耳もつけてみると見事に、猫から遠のいた 白猫ならどうだろうか?
ノートの端に 大小 様々な黒猫?白猫?が並んだ中にはオタマジャクシもいる それを見たユキが どれどれと 自分も その続きに 猫?を書いていく 正体不明の勾玉に二人で顏を見合わせて 同時に声を出して笑った
「元気になった所で 僕は時間切れだ。次の勉強会は土曜日はどうかな?」
ノートの猫もどきを見ながらひとしきり笑った後で告げるユキに レオナも笑いながら返事をする
「はい 土曜日のスクールの後でここに来ますね」
「あ そうだ お守りあげるね。 お土産にもらったものだけど岩塩 怖い深淵に遭遇したら使ってみて」
ユキが 親指程の瓶をレオナに渡す 中には2-3ミリ角のピンクの岩塩が三分の二程入っている。レオナにはそれが最強の武器に思えて 両手で押し頂いた
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