第24話 目覚める力
最後の時を迎えようとしていたその時、拠点へ引き返したはずのレイチェルが戻ってきた。
先ほどの砲撃はレイチェルたちが行ったものなのか。
ハリスさんたちは無事なのか。
メイジーたちはどうなったのか。
疑問は次から次へと浮かんでくるが、ひとつひとつ聞いている時間はない。
「物好きだなぁ、あんたも。わざわざ燃やされに来るなんて」
周りの帝国兵たちが砲撃に怖気づいて逃げ惑う中、アイゼルだけはジッとこちらを見据えている。さすが、聖竜の力を宿しているだけあって、度胸もある――というより、こちらとの実力差が、あの自信を支えていると言っていいか。
レイチェルの加勢は頼もしいが……それでも、こちらが圧倒的に不利である事実に変わりはない。
どうやったら、アイゼルを倒すことができるだろう。
「くらえっ!」
当然ながら、相手はこちらに考える時間など与えてはくれない。
炎竜の魂によって生みだされた炎による連続攻撃。
俺とレイチェルはかわすので精一杯だった。
「ま、魔法とは違うのだな」
「そうだ。あれが聖竜の力だ」
「デューイにもあるのだろう?」
「あるにあるが……現状、俺はあそこまでうまく使いこなせない」
それが、俺とアイゼルの決定的な差。
向こうは炎竜の力を俺以上に引き出している。
攻撃手段の手数の違いが、如実にそれを表していた。
「ちょこまかと逃げ回りやがって……これならどうだ!」
アイゼルは生みだした炎を放つ――が、標的は俺たちじゃない。
周辺の木々へ炎を燃え移らせるためだ。
「なっ!?」
あっという間に燃え広がっていく炎。このままでは、森全体が真っ赤に染まるまで時間の問題だ。ヤツめ……強硬手段に打って出たな。
「さあ、どうする? その風で炎を払いのけるか?」
「くっ……」
ダメだ。
今の俺の力では、ここまで燃え広がった炎をかき消すほどの風を生みだせない。しかし、このままでは……五十年前の面影を残す里が、完全に消えてなくなる。それどころか、俺たちだって――
「っ!?」
絶望的な状況に焦っていると、右腕のタトゥーが強く光りだす。
まるで、俺を鼓舞するような温かい光だった。
「あ? なんだぁ?」
敵も困惑する強い輝き。
それに合わせて――強力な魔力が、俺の全身を駆け巡った。
「これは……」
これまでにない、強い魔力――どんなことでも可能にしてしまうのではないかと思えてくるほどの頼もしさを感じる。
「ど、どうなってやがる!? なぜヤツがこれほどの力を!?」
突然の強大な魔力に、さっきまで余裕の態度だったアイゼルも思わずうろたえる。
俺自身、なぜこのような力が生みだされたのか……明確な理由は不明のまま。
――けど、
「負けるな」
右腕に宿る風竜が、そう後押ししてくれているとしか思えない。
「デューイ!」
こちらの魔力が増大していることに気づいたレイチェルが、声を弾ませながら俺の名を口にする。
……分かっているさ。
ここから反撃開始だ。
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