第7話 風竜の謎
俺が何者であるか。
その正体を知ったメイジーとレイチェルの仲間たちに大きな動揺が広がった。
しばらくしてメイジーから「私たちの拠点に来ませんか?」という誘いを受ける。行くあても特にないので乗ることにしたのだが……拠点という言い方が少し引っかかった。
見るからにお嬢様で、レイチェルやハリスさんから「様」をつけて呼ばれる彼女の立場からすると、そこは「お屋敷」とかの表現がしっくりくるが、周りの仲間たちの格好はどう見ても屋敷の使用人というわけではなさそうなので、何か訳ありなのだろうと察する。
とりあえず、さっきの連中が仲間を引き連れて戻ってくる可能性もあるため、その場を離れることを優先した。彼らの拠点というのは、ここから離れた場所にあるらしく、到着は夜になるだろうとのことだった。
道中、俺は馬車の窓から見える外の景色を眺める。
風の里は跡形もなく消滅していた。
改めて、俺がいた頃とは違う時代に飛んできたのだと実感させられる。
同時に、消えかけていた帝国への想いが湧き上がってきた。
この世界で俺がやれること――もう少し冷静にこの世界の現状を把握して、それを見つけていかないとな。
馬車で移動すること数時間。
「着いたぞ」
同乗していたハリスさんの部下が言う。
馬車がとまってから外に出ると、
「えっ?」
思わずそんな声が出た。
風の里が見えなくなってから、これからのことについていろいろ考えていたため、外の景色は見ていなかったのだが……まさか、こんな場所だったなんて。
「驚きました?」
そう声をかけてきたのはメイジーだった。
「あ、ああ……」
対して、俺は気のない返事をしてしまう。
……だって、まさかこんな場所だとは――こんな荒れ果てた廃墟同然の場所だなんて、まったく想像していなかったから。
「さて、君はこっちへ来てもらおうか」
俺とメイジーの間に割って入るように、ハリスさんがやってくる。
「風の里の生き残りだというなら……いろいろと聞きたいことがある。そのタトゥーについても、だ」
「分かりました。俺もあなた方にいろいろと聞きたいことがあるので」
「いいだろう。情報交換と行こうじゃないか」
ハリスさんはこちらの提案に乗ってくれた。
これで、少しでもこの世界の現状を知ることができたらいいのだが。
俺は廃墟近くにあるテントへと通された。
そこで話し合いをするとのことだが――参加したのは俺とメイジーにレイチェル、そしてハリスさんと数名の部下。
少し緊張していると、
「もう一度聞かせてもらいたいのだが――これまで誰にも見つけられなかった風の聖窟に五十年……君は何者なんだ?」
ハリスさんは真っ直ぐに疑問を投げかけた。
「俺は風の里の人間で、名前はデューイ・ハウエルと言います」
「なるほど。では、デューイ。君は風の聖窟にいたと口にしたそうだが……そこで何をしていたんだ」
「帝国の狙いである風竜の魂を封じ込めるために入りました」
「「「「「!?」」」」」
俺の言葉を受けて、周りは騒然となった。
「風竜の魂を封印って……本当にそんなことをしたのか! あれこそが帝国を倒せる唯一の希望だったのに!」
激高したレイチェルに胸倉をつかまれ、迫られる。
って、ちょっと待て。
唯一の希望?
あの風竜の魂が?
――それなら、
「安心しろ、レイチェル」
俺が言おうとした言葉を、ハリスさんが先回りして話した。
「風竜の魂は死んでなどいない」
「し、しかし!」
「彼の右腕を見てみろ。そのタトゥーが何よりの証だ」
「えっ!?」
タトゥーの存在を知っているハリスさん。
そして、それを見たレイチェルやメイジー、それからハリスさんの部下である男たちも一様に驚いたような表情を浮かべていた。
彼らは……一体どこまで知っているんだ?
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