全てを見ていて

上野あき 無気力

マンションのロビーは家の中か否か

ごく普通のマンション


少しセキュリティーが高め


オートロック


出入り非自由


階段もエレベーターも非自由



マンションのロビーも








子供がロビーで泣くとその声は多くの部屋に届く


子供が巣立った家は「元気だな」と微笑みながら茶をすする

思春期の子供がいる家は「あんな頃もあったな」とこれから先の子育てに同情する

同年代がいる家は「あんな迷惑な事」とあざ笑いながら自分の子供を正当化する

子供がいない家は「躾が足りないんじゃないか」としわを寄せながらため息をつく




子供の親はどうにか子供を黙らせようとご機嫌を取る

子供の親はどうにか子供を黙らせようと怒る

子供の親はどうにか子供を黙らせようと口をふさぐ

子供の親はどうにか子供を黙らせようと







さて、この親はどうする?




どのような行動をとってもそれは子供を思ってのことだという話は嘘だ。

見栄のため虚言のために子供を叱り、時には暴力を。


恐怖で支配したとて成長するにつれ自我を持つそれは、支配者に勝る力を獲得し支配者を支配する。

又は、支配されたままこれが正しいと自分を支配し殻に閉じこもり成長を否定する。





あーーー。






あーーーーーーーーーー。





置いていった。



人前で気にせず泣き喚ける年齢の人は、大抵世界の8割以上が親だ。


その8割においてかれたらどうなる?


考えるまでもない


残りの2割以下には恐怖しかない。



その人は泣きながらそして鼻水を垂らしながら大きく口を開けて追いかける。

追いついた瞬間謝り、もう2度としないと誓う。



そして、はやくて次の日おそくても1週間後には同じことを繰り返す。




このロビーで泣いて子供は今回で35度目だ。


最初のころは泣きながら親の元に行き許しを得てたが、2度3度と繰り返すたび親の元にいくのが遅くなってる。


親が自分を見捨てていくはずがない


そう確信している。



10度目は4分37秒

15度目は6分03秒

20度目は7分47秒

25度目は6分47秒


なぜか25度目は早くなった。作戦か?



さて、30度目は何分何秒になるかな


4分49秒を過ぎたあたりで全身真っ黒の親が戻ってきた。


遅れてはいけない用事のようだ。

子供もそれなりにととなっと服を着ている。



子供の手をとり親は目的のため連れていく





子供は確信した。





自分は見捨てられることはないと。


自分は間違っていないと。



自分がこの家での1番であると。













しかし、25度目以降あの泣き叫ぶ子供の親はそれ以前と違う顔をしていたような







関係ない        か







これからも見続けるのみ

それ以上何もできない


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