学校で一番仲の悪い金髪ツインテールの後輩が俺の義妹になりました。
倉之輔
第1話 金髪ツインテールの後輩
俺の一番好きな髪形は『金髪のツインテール』だ。なぜ好きか、皆まで言うな。漢のロマンのひとつだからに決まっているだろう。
だが『金髪ツインテール』といえば幼女のイメージが強いだろう。しかし!俺にはそんな事関係ない!可愛ければそれで良いのだ!
そして、そのツインテールにも俺のこだわりがある。髪の長さは腰の辺りまで、髪飾りは黒のリボン、結ぶ位置は耳の真上の位置七センチ。これが高校二年の俺、「佐野陵矢(さのりょうや)」の思う一番ベストなツインテールだ。
「陵矢先輩!ちゃんと胸付近に打ち返して下さいよ!打ちづらくてしょうがないじゃないですか!」
俺の通う高校にはそのこだわりを忠実に再現した女の子がたった一人だけ存在する。それがこの後輩の「莉緒(りお)」という女の子だ。俺と莉緒は同じバドミントン部に所属している。
「お前だってちゃんと打てよ!お前なんて二十回に一回くらいの確率だろ!」
うちのバドミントン部は男女混合で練習するため、莉緒が入部して俺は練習相手を任されてた。
「私はまだ初心者レベルだから良いんです!先輩は中学からバドミントンやってるんだから毎回打てて当然のレベルじゃないんですか!?」
「俺はそこまでバドミントン極めたつもりは無い!」
最初の莉緒は素直で礼儀正しく優しい印象だった。だから俺も優しく接していた。
だがペアを組んで半月が経ったが、俺達の仲は何故か悪くなっていく一方だった。
「あー!もう!休憩します!疲れた!」
莉緒はイライラした表情でラケットを立て掛けて座り込んだ。
「まだ五分もやってねぇんだぞ!早く立て!」
「じゃあ先輩ちゃんと打ってくださいよ」
「打ってねぇのはお前だろ!下手くそ!」
「ちょっと!下手くそはさすがにおかしいと思いますよ!?」
「下手くそに下手くそって言って何が悪い。悔しかったらさっさとラケット持って立てよ」
「なんであんたみたいなクソ人間が私の練習相手なんですか!?」
「誰がクソ人間だ!先輩に向かって!これは俺が決めた事じゃねぇし文句言うな!」
「チェンジで!この人チェンジでお願いしま〜す!」
「ここはキャバクラじゃねぇわ!」
こんなやり取りを俺と莉緒は飽きもせずに毎日のようにやっている。
「いいから、さっさと練習再開すっぞ」
俺は軽くシャトルを莉緒に打った。
「とりゃぁぁぁぁぁぁ!」
掛け声と共に莉緒が打ったシャトルが勢い良く俺の顔面に飛んできた。
俺はそのまま後ろに倒れ込んだ。
「よっしゃぁぁぁぁぁ!」
莉緒は敵の総大将でも討ち取ったかの如く、大きなガッツポーズをして喜びを顕にした。
「……莉緒、てめぇ……殺されてぇのか?」
「悔しかったらやってみろって言ったのはそっちでしょ」
「誰も人の顔面狙えとは一言も言ってねぇ!」
「悔しかったらやり返したらどうなんですか?」
先程の報復だろう、莉緒が挑発してきた。俺の顔にシャトルが当たった跡が残っているのか、莉緒は笑いを堪えるに必死だ。
「……そうだな、今日という今日はもう許さねぇ」
俺はラケットを置き、莉緒に向かって走った。そして莉緒も逃げる。
「ちょ!何するんですか!?」
「なーに、ちょっとお仕置するだけさ」
俺は莉緒を捕まえ、足で身体を固定して逃げられないようにした。そして俺は両拳を莉緒の頭に力強くグリグリと当てた。
「い、痛い!痛いです!やめて下さい!」
「全部お前が悪いんだからな!これくらい当然の報いだ!」
「そ、そんな……勘弁してくださいよ〜!」
こんな事を毎日繰り返していると、周りの人間からは「お前ら付き合ってんじゃねぇの?」などと言われたりするが俺はあんなのと付き合うのなんて真っ平御免だ。
だが、莉緒の金髪ツインテールは完璧だ。白く透き通った肌、そして大きなブルーの瞳、これも申し分ない。
問題は性格だ。購買とか廊下で会うたびに俺に蹴りを入れてくる女だ。こんなムカつく女と一緒にいたくない。今は部活だからしょうがなく相手してやってるだけに過ぎない。
これで性格が完璧なら今すぐにでも彼女か妹にしたいね。金髪ツインテールの美少女に『お兄ちゃん』なんて呼ばれたら最高だろ。俺の夢だ。全世界の男の夢だ。
――――そんな俺の夢の実現が間近に迫っていた事をこの時の俺は知る由もない。
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