第16話 食べ処牛


すると宗次郎は電話をしだした。

向こうから茉穂の母親の弾んだ声がする。

「えーえ本当じゃあコッチ

キャンセルするわよ。嬉しいわぁ」


一方泰真も電話中

「ありがとうございます

何名様のご予約でございますか?」

向こうからは女将の声がする。


「二人で「かせ」えっ!」

宗次郎は泰真のスマホを取り上げ

「5人でよろしく!!」


「え、お前もいくのか?」

泰真は宗次郎に問いかける。

宗次郎は笑いながら

「ああ、勿論」


泰真は又

「あ、え、あ、で、でも5人って何?」


「来てのお楽しみだ!

じゃあ店で待ってるぞ、6時だ

遅れるなよ。」



宗次郎は茉穂と泰真を置いて走り

去った。


泰真と茉穂はボーっとしていたが

顔を見合わせ

「ど、どういう事、アイツとどんな

関係なんだよ、二股していたのか?」


茉穂は言いにくそうに

「怒らない?」


「まさか本当に二股なのか?」

ドキッとして泰真は茉穂の顔をみた。


「二股って?なに?そもそも私達付き合ってないんじゃんか?」



「つ、付き合ってるぞ」

イキナリの告白飛び越しての交際

宣言か?

茉穂は下向きながら泰真の顔が見れない、まさか泰真と付き合ってたなんて

初めて知ったポッ。


「・・・付き合ってるだろ

だから食事にも行ったし・・

俺の事好きだからじゃないのか?」


泰真は茉穂の前にかがみこみ

茉穂の顔を覗き込みながら

確かめるように呟いていた。


その様子を見ていた大河は

昼休憩中に泰真が電話の彼女に

言ってた会話と同じだと笑った。

「クククヤバ」



「・・・と、兎に角

お店行かなきゃだね、

五人分大丈夫、辞めるなら

今だよ。」

そう茉穂が言うとピコーンと通知音が

・・・

母からLIN〇が来た。


"宗次郎から聞いたわよ

もう楽しみね。

パパにも連絡してもいいわよね"


「まだダメ絶対ダメ‼️」

そう返信した。



「あのね泰真

ヤッパリキャンセルしょう。」


「何でだ、俺は行く‼️

何人来ようが受けて立つからな

負けるか!!」



「・・・・・」



「なんだよ、俺がいやなのか?」


「ごめんなさい」



「俺とは付き合えないって?

言ってるのか?」


「ゴメン泰真今日くる5人は・・

そのぉ

家族だよ、さっきのは兄、兄貴なの!」


「ガ━l||l😱l||l━ンあ、兄貴?」

突然言われたらそりゃあーこうなる。


「うん、ゴメン、私28でしょ

だから当然結婚相手って誤解

されてるわよ。

家族にも期待されるだろうし

泰真に迷惑がかかる

まだ今なら引き返せるよ。」



「け、け、結婚?」

結婚と聞いて泰真は少し引いた

35までは独身でいたい。

自由でいたい願望がある、しかし

さっきのが兄貴なら

んな事言えないよな

どうしたら・・・



そんな少し迷っている泰真を見て

茉穂の迷いも消えた。

迷う位のものなら・・


「友達でいいよ

そう母親にいっておくし

だって私達恋人みたいな事

してないじゃん。

よおっしゃゃー食うぞー

肉、肉、高級肉ぅー行こ行こ🎶」


「お、おう。」

泰真はそう気弱そうに呟くと考え

込んでしまった。


ヤレヤレこうも萎むのか!

それに気づいた茉穂は母親に電話した。

「ママ、あのね泰真は

上司で恋人じゃないよ

さっきはね、誰かに言い寄られて

困ってるって心配してくれただけ

だから、お兄ちゃんって言わなかったから彼が誤解して困ってるって

思ったらしいの、残念だけど

彼じゃないんだー

うんうん分かった。」


その電話を聞いて泰真は少し

ホッとした表情を見せた。


それを見てちょっとムカついた茉穂は、はぁ〜と深い深ーい溜息を吐いた。


「じゃあコレで

私ママ達と合流するんで!」


「え?店はキャンセルしたん

じゃないの?」


「さっき泰真が予約した

お店に行きます。

確かスキヤキ専門店、食べ処牛

でしょ。」


「うん、いや、俺も行くよ❗」



「ダメ。

結納の日取りから結婚の日時まで決められますよ。

ヤバいですよ、逃げられませんよ

やたら嫁に出したがるし

結婚、結婚が口癖なんですから。」



「あ、ああ、そうなんだ💦」

そう言われて泰真は怯んでしまった。


「女は子供を産む期限があります

から、親は心配するみたいで

わらっちゃいますよね。」


泰真は頭をポリポリしながら言った。

ちょっと敬語が入るのは・・・

怒ってんのか?

多少ビビりながら泰真は言う。


「あ、ああ、気持ちは分かる。

じゃあ送るよ、それならいいだろう。」


「別にいいです。

バスもあるし大丈夫ですよ。」

茉穂は顔を顰めて断った


「でも、俺が悪いし」

バツ悪そうに泰真は口篭る。


「兄貴に見つかったら連行されて

色々聞かれますよ

いいんですか?」


「・・・」


迷うんかい・・

さっきの威勢は何処へやら結婚

チラつかせたら、しょぼんでしまった、そんな泰真に見切りをつけようと思ってしまう。


「じゃあ」

ペコっと頭を下げて茉穂は

バス停まで歩きだした。


話を聞いていた大河が現れ

「なにビビってんだよ。」

と笑った。


「俺、後五年は自由でいたい

折角の独身を楽しみたいんだよ。」



「そうか・・」


人の人生計画に口は出さない。

しかし後五年なら茉穂は33歳に

なる。泰真は自分の事だけで茉穂の

賞味期限なんか考えていない。


今は高齢出産は当たり前だが産むのと育てるのは違う。

体力勝負なのだ、走ったり、おんぶしたり、病気するなら夜通し看病

それに学校行事、クラブ活動


茉穂を泰真の人生計画に

ハメたいのならそれは無理だと大河

は思ったが泰真の五年を潰す訳にも行かない人それぞれ、その人の人生

泰真も茉穂が結婚したなら

若い嫁を貰えば彼の五年は

取り替え出来る。


自分の一生なのだから。

茉穂は決断出来ない泰真を諦める

だろう、それはそれで仕方がない。


泰真の選んだ独身生活なんだから



「牛は上手いか!

女将に俺の支払いにしてもらって

いるから沢山食べてこいよ。」

茉穂にLINEを送った、あれから

2時間が過ぎたからそろそろ

お開きになった頃だろう。


するとようやく返信が来た。

でもこの返信を打っているのは茉穂じゃない。



「ご心配無用ですよー

沢山食べました、母の知り合いの

息子さんも来て、なんと

高級和牛の支払い全部済ませて

もらいました。和気あいあいで

美味しかったでーす。てへぺろ」


「・・は?・・」


ガ━━Σ━━ン!!

知り合い?息子ってオトコ

聞いて無いぞ!!



「おい💢どういう事?」



「んー家族ぐるみのお見合い

テキナ」



「はあー💢つきあうのか?」

泰真は自分の都合も考えずヤキモチは人並み以上。


「んーそんな感じかも〜

だ、か、らw、アンタに奢ってもらってないし、でも沢山たべたっぺよw」



妹がトイレに言ってる時LINEが来た

アイツからだ・・

俺は最近珍しく骨のある奴だと思っていたのにタダの上司だったなんて

タダの上司なら俺が返信してやる。



バイバイー

と返信を全部終わらした所で妹が帰ってきた!


そしてブロックしてやった。

タダの上司の癖にナメやがって!そして茉穂には見合いさせるそう決めた。茉穂はアイツを好きなんだろう見ていればわかりやすい。


「諒佳、もう直ぐ産まれるね。」

茉穂は諒佳の腹に耳をくつっけて

「早く生まれてこーい」

と言っている、俺と諒佳の玉のように可愛い子供を見れば妹も結婚する気も起きるだろう。


要らぬ奴は片っ端から排除してやる。

妹は兄貴が守ると決まってる

俺が茉穂の相手は決めてやる。

茉穂は大事な妹だ!



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