第44話 最終作戦会議
俺とミストルティアとの決闘(及びその後のギガントドラゴンとの戦い)からちょうど10日後。
「以上が最終作戦となる『夜明けの斬首作戦』の概要となる」
偉い人たちから小隊長クラスまで。
大講堂で行われたかなりの大人数が集まった最終作戦会議にて。
戦術盤を前に熱弁を振るっていた軍師メイリンが説明を締めくくった。
その内容とは要約するとこうだ。
現在、各地で同時に大規模反転攻勢を仕掛けている人類。
ドラゴン軍団が戦線を押し返そうと本拠地に残していた親衛ドラゴン軍団を各地に派遣した隙を突いて、逆に一気に大魔竜ドラグバーンの本拠地――ドラゴンズ・ハイランドに攻め込むのだ。
その中心はもちろん勇者である俺と、俺と同じレベルで強い竜姫ミストルティア、そして俺との合体技が使える≪盾の聖女≫リュスターナ。
この3人で大魔竜ドラグバーンを直接討ってこの戦争を終わらせるのだ。
あと個人的に感じることなんだけど、この世界の人たちって『斬首作戦』みたいな、日本人がちょっとドキッとするような言葉をわりと平気で使うよね。
もちろんこの世界は人類存亡の戦いの真っ最中だから、それはある意味当然なんだろうけれど。
それでも平和な日本にいた頃の感覚がまだいまいち抜けきっていない俺は、その都度ビクッと身体を震わせてしまうのだった。
ま、俺のナイーブな心の内はさておいて。
「大魔竜ドラグバーンとの直接対決には基本的にこの3人で当たってもらう。他はすべて陽動だ。異論はないね?」
「任せとけ」
「かしこまりした」
「うん!」
もちろん俺たち3人は首を縦に振る。
「それとミストルティア。改めて確認させてもらいたいんだが、残る四天王の最後の一人は本当に出てこないんだね?」
「四天王最後の一人ハイペリオルドラゴンは人類との共存をずっと主張していて、パパ――じゃないや、大魔竜ドラグバーンのやり方を良く思ってないから、間違いなく出てこないよー」
「その情報は本当に助かるね。ゲンブドラゴンとギガントドラゴンが死に、ミストルティアが味方になった今、これで事実上ドラゴン四天王とは戦わなくていいことになるわけだから」
「これは価値ある情報だよな。最後の四天王がいつ出てくるのか警戒する必要も無いし、それを抑えるための兵力も割かなくていい。ミストルティア、よくやったぞ。お手柄だ」
俺が優しく頭をポンポンとしてやると、
「えへへ、おにーさんに褒められちゃった♪」
ミストルティアが気持ちよさそうに目を細めた。
「話を続けるよ。親衛ドラゴン軍団も出払っている今、敵の本拠地には雑兵ドラゴンしか残っていない。四天王もいない。実質、敵は大魔竜ドラグバーンだけというわけだ」
「まさに最終決戦ですね……!」
リュスターナが真剣な表情でグッと握り拳を作った。
俺も同じ思いで、身も心もギュッと引き締まるのを感じる。
だがしかし、俺には一つだけ気になっていることがあった。
「なぁミストルティア、お前はいいのか?」
「んーと? いいってなにがー?」
ミストルティアが小首をかしげる。
「だって実の父親と戦うわけだろ? ためらいとか感じたりはしないのか?」
「あはは、そんなのまったくナッシングだし! ボクはパパなんかより好きな人を選ぶもん♪」
だけどそれはもうあっさりと言われてしまった。
しかもすごくいい笑顔で。
どうやらこれも俺のナイーブな心ゆえのいらぬお節介のようだった。
やれやれ。
俺もいい加減、この世界の住人の感性を理解しないとな。
「これで会議は終了だ。さてと、最後に勇者から一言いただこうかね?」
軍師メイリンがいたずらっぽく笑いながら俺を見る。
「え? 俺!?」
「やはり勇者の言葉ともなれば、皆をおおいに勇気づけるだろうからね。ぜひ士気高揚に一役買ってくれたまえ」
「そういうのをやるんなら、先にそうと言っておいてくれよな……そうしたら演説内容を考えておいたのに」
「こういうのはあらかじめ考えた着飾った言葉じゃなくて、リアルな生の声だからいいんじゃないか」
茶目っ気たっぷりで言いながらとびっきりのウインクをするメイリン。
まったくメイリンってやつは、ほんと考えに考え抜いたうえで最善の策を提示してくるよな。
俺はメイリンと入れ替わるように前に立つと、言った。
「長々としゃべるのはあまり好きじゃないから、短く端的に言うな」
俺はそこでいったん言葉を切ると、何を言うか頭の中で整理をしながらゆっくりと全員の顔を見渡した。
皆が皆、期待と決意のこもった瞳で固唾を飲んで俺を見つめている。
俺は大きく一呼吸してから力強く宣言した。
「大魔竜ドラグバーンは俺が倒す! どんな犠牲を払っても、どれだけ苦戦しようが、勇者の俺が絶対に倒してみせる! だからみんなも最後まで絶対に諦めずに戦い抜いて欲しい! さあいざ
高らかに宣言すると、俺は右拳を天に突き上げた!
「「「「「「「勝利を我らに!!!!」」」」」」」
それに呼応するように大講堂にいる全員が俺の最後のセリフを復唱しながら拳を突き上げる!
大講堂はもはや統制が不可能なほどの熱狂の渦に包まれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます