第11話 能力研究
「おはようリュスターナ。昨夜はよく眠れたかい?」
俺はちょっとカッコつけてキザっぽく言うと、リュスターナにグッドモーニング・キスをした。
「ちゅ……ん……ちゅ♡ あ、ん♡ もう、勇者様ったら朝からお元気なんですから……ちゅ♡ んっ♡」
朝一からリュスターナと濃厚なキスをして、俺はまたさらに幸せな気分になっていく。
なんかもう、幸せの大盤振る舞いだな。
さてと今日も一日、勇者として頑張るか!
というわけで朝からリュスターナと仲良しチュッチュした後。
朝食を食べ終えた俺は、お城にある訓練場に来て剣を振っていた。
もちろん聖剣≪クラウソラス≫を使いこなすための訓練だ。
時に遠距離ビームを撃ったり。
時にパワーを込めた一撃で地面に大穴を開けたり。
必殺の≪アルティメット・ソード≫を使ってみたり。
俺は格闘ゲームの練習モードみたいに色々と技と威力を試しながら、聖剣≪クラウソラス≫と勇者の力を見極めていった。
そんな俺の訓練を遠巻きに見ていた兵士たちは、始まってからずっとざわざわとざわめいている。
「おい、あれを見ろよ!」
「聖剣≪クラウソラス≫だってさ! すげーな!」
「本物なのか?」
「そんなのただの兵士の俺に分かるかよ。だけどあの人間離れしたスゲー技の数々を見れば、まぁ本物じゃないか?」
「うわっ、なんて威力なんだ! 地面に大穴があいてるぞ!?」
「今度は遠距離ビームだって!?」
「マジすげぇ!」
「俺感動したわ!」
「あれって俺にも使えるのかな?」
「ばーか、あれは神に選ばれた勇者だけが扱える勇者専用武器だってーの」
「だよなぁ」
「うぉっ! 今度は空を飛び出したぞ!?」
「すげー、空中戦もできるのか!」
「これならドラゴンの得意な空からの攻撃にも余裕で対処可能だ!」
「これならマジで大魔竜ドラグバーンにだって勝てるんじゃないか?」
「ああ、一筋の希望が見えてきたな」
「勇者様と聖剣≪クラウソラス≫は俺たち人類の希望の星だ!」
「勇者様ばんざーい!」
「「「「「勇者様ばんざーい!」」」」」
などとワイワイ楽しそうに盛り上がっている。
話題の中心は俺なので、正直ちょっと気持ちがよかった。
まるで人気アイドルにでもなったかのような気分だ。
しかしまぁ、実際に使ってみてわかったんだけど。
聖剣≪クラウソラス≫には、この前使った≪アルティメット・ソード≫を超える強力な必殺技は存在しないようだった。
「つまり≪アルティメット・ソード≫が俺の最終奥義ってことだな」
もちろん、それ以外にも強力な攻撃手段は多くあった。
例えば≪ホーリー・バルカン≫。
これは聖なる光の弾丸を一気に大量に撃ち出す必殺技だ。
やや燃費の悪い技ではあるものの、多数の敵を同時に狙い撃てるのでドラゴンの大軍団と戦う時には重宝しそうだ。
他にも広範囲を覆う≪ホーリー・ネット≫という技は便利そうだった。
威力はやや低いものの、聖なる光で編んだネットをクモの巣のように広範囲に張り巡らせることで、相手の移動を制限するとともに触れた相手に少しだけダメージを与えるのだ。
これなら相手が空を飛んでいても問題ない。
上手く進路に置いて引っかけて動けなくしてやろう。
いやまぁ今の俺は空も飛べるので、そういう手段を用いなくても空中戦闘を余裕でできちゃうんだけどさ。
それでもこの技を上手く使えば、空中戦をかなり有利に戦えるはずだ。
他には≪ホーリ・ヒール≫という回復スキルもあった。
これは文字通り聖なる光によって自分や味方を回復する治癒スキルだ。
これもなかなか便利なので覚えておいて損はないだろう。
他にも聖なる力をビームにして打ち出す遠距離攻撃の≪ホーリー・ビーム≫などなど技がいくつかあったのだが、
「ふぅ、とりあえずはこんなところかな?」
あとは実戦の中でいろいろ使いながら応用していくとしよう。
俺は聖剣≪クラウソラス≫の試用訓練に充分に満足したので、訓練を切り上げてお城の中へと戻った。
その時、勇者と聖剣≪クラウソラス≫の存在に勇気づけられた兵士たちが、声を合わせて勝利の凱歌を歌って俺を見送ってくれたのが、ちょっと嬉しかった。
ブラック社畜として働く中でずっと抑えつけてきた承認欲求――人として本来持っている自己肯定感という本能が、十年ぶりに満たされていくのを感じる。
安心してくれ。
勇者の俺が、みんなも世界も守ってやるからな!
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