第16話 課題
ワシルとの戦闘からの帰路も、
疲れ果てていたことに加え満身創痍だったため、厳しい戦いだったが、なんとか切り抜けることができた。
あまりの疲労困憊と怪我で、逆に無駄な動きが無くなったからかもしれない。
そしてようやく神社に帰り着いたのは、明け方だった。
「やっと、帰ってきた」
「………………」
小雪は無言だが、安堵と疲労が混ざった表情だ。
「おかえりー、遅かったねぇ」
僕らはワシルの件を報告した。
「ワシルクラスが出るとはねぇ……。討伐リストではこの辺りへの出没は報告されてなかったんだけど……。しかし無事でよかった。2人とも、まずはゆっくり休みなさい……って、もう寝ちゃってるわね。ハハ」
夕方頃、
小雪はすでに起き、活動しているようだ。
庫裡へ降りていくと、夕食の用意がされていて、
「夕方だけど、おはよう
「ありがとうございます」
食事中、
「ワシルは知ってのとおり、6血だね。一般に駆け出しの破邪士が相手にできるレベルじゃない。2人ともよく戦いました。その中で、2人とも課題が見えてきたんじゃないかな?まずは小雪から」
「私は、あらゆる実力が足りないと思いました。その中でも特に、心気が十分に刀に伝わらなかったことが、致命的だった。これができていたら、たぶん急所じゃなくても妖魔に決定的な攻撃ができた」
「ふむ。
「俺は……。本当にいっぱいありますけど、小雪と比べると体術もヘナチョコだし、心気弾も、一発が軽い。そして、心気の形状化。短刀を心気で伸ばした剣は強力だったけど、これにはもっと、可能性がある」
「そうだね。2人の課題は共通していて、まさに心気のコントロールにある。心気を身体に巡らせられれば、身体能力も飛躍的に向上する。武器にまとえば、攻撃力が格段に上がる。だからトレーニングといえば、わかるね?」
「心気をまとめる」
「そう! 明日からも、がんばっていきましょう。それと
「え、そういえば……、痛い!痛い!痛い!」
翌朝から
そして夜はやはり、2人で夜回りに出る。ワシルほどの妖魔は出ないものの、3〜4血程度の妖魔はいくらでもいた。
「
という
小雪の感覚では、4、5倍の数だという。しかし僕らは、日々なんとか、夜回りをこなしていた。
2ヶ月ほどが経った。
季節はすっかり秋めいて、頬を撫でる風も冷たく心地いい。
小雪はかなり心気を束ねられるようになっていた。
もう少しで、ビル何階分かだった心気の広がりは、長剣ぐらいの長さ、細さに収まりそうなくらいだ。
休憩中に、
確かに、訓練中の小雪の腰を見てみると、円を描くように振っている。
よく考えてみると、訓練中は両手は真上に上げ、足は踏ん張り、首も上に向けている。つまり、身体の動かせる箇所は腰ぐらいだ。
心気をまとめるとは、ねじり上げるような感覚が近いのだ。小雪もその感覚を、身体の残った可動部分で表現しているのではと、
ヒントを掴んだ気がしてうれしかったが、小雪の腰を、その近くにしゃがんで凝視している図を
腰の微妙な振り加減でそれが左右されるように感じるが、可動域が狭いせいで、すぐにやりようがなくなる。
ここからはイメージトレーニングの世界で、腰の振りはあくまで調子を取るもの。捻り上げるのは心の気なのだから、捻る量は体内でイメージし、膨らませていく必要があるようだ。
2ヶ月目にしてそんな結論に至り、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます