淫魔と童貞 処女サキュバスとエロ漫画家

Ryu

第1話 淫魔と童貞

 田中拓巳たなかたくみは童貞である。


 女性が苦手というわけでもなく、人並みの、人並み以上に性欲は持て余している。

 しかし、童貞である。


 顔もブサイクというわけでなく、イケメンというわけではない。普通のどこにでもいそうな顔だ。強いて言えば金玉が少し大きい。

 しかし、童貞であるし、チンコも小さい。


 今年で28。親から彼女はできたか、結婚はまだか、孫の顔が見たいとフルコンボ。そのうち紹介する、曖昧な返事で逃げてやり過ごしている。まだまだ20代。収入もそこそこ。余裕のある男なのである。

 しかし、童貞であるし、実は収入もさほど良くない。もちろん彼女いない歴=年齢である。


 ある時、知人に『お前いつまで童貞捨てずにいるんだよw』と煽られたことがあるが、迷うことなく言い放った。

「無論、死ぬまで」

 我ながら完璧な切り返しだと今でも誇りに思っている。

 しかし、童貞である。


 死ぬまで童貞。それは強がりでも何でもない。本当に俺は生涯童貞を貫き通すつもりでいる。現に今生きていられるのは、自分が童貞であるが故だと思っている。


 しかし、死神は突如として現れる。


 頭からちょこんと生えている2本の角。

 ぴっちりと体のラインが浮き出る扇情的な格好。

 男に揉まれるために育ったかのような豊満な胸と尻。

 背中から生えている黒々と艶のある羽。

 大きな臀部から伸びるハート型の尻尾。


 これでもかと男を誘惑する悪魔。その悪魔は、俺のパンツを掴みながら神に縋るように懇願した。


「お願いですから、あなたの精液くださあああああああああああああああい!!!」


 俺の返事はもちろん決まっていた。


「嫌だあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


 深夜2時。俺は命の危機に瀕していた。いきなり現れたこの痴女はパンツを掴んでずり下ろそうと必死だ。俺はそれとは逆に力を入れて脱がされないように必死だ。


「いいじゃないですか! 減るものでもないでしょう!」

「減る! 将来性と収入と童貞という称号が死ぬ! くそっ! はなせぇ! 俺はまだこんなところでは死ねないんだあああああああああああああああああああ!!!」


 世界中どこを探してもこんな愉快な光景を見ることはできないだろう。


 どうしてこうなってしまったのか。俺の今日1日の出来事が走馬灯のように映像として脳内を駆け巡るのだった。



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