第50話 ボロボロの町

5人が森を抜け出して数日、彼らは休息の為近くの町に立ち寄った。


いや、正確には"立ち寄ってしまった"が正しい


何故ならそこはもう町とは呼べない程崩壊していたからだ。


ミク「.....酷い」


メミル「.........一体何があったの?」


セシル「....義兄さん、フローズ様、これは」


クロス「.........わからない、内戦か、国同士の戦争か、または」


フローズ「レプリカ....いや、魔王軍と言ったところかしらね」


クロス「取り敢えず、町の状況を見よう、一体何が起きたのか知りたいからな」


ミク「そうね、行きましょう」


そう言って5人は町の中に入っていった


————————————————————

~町の中~


そこはまさに地獄だった、道の横には失業者、廃人、死体、子供、赤子と誰も助けようとせず、そのまま素通りしている、いや、助けられないのだ、歩いているものも五体満足でいる人はクロス達以外でほとんどいない。


しかも皆生気を失っており、体はとても細く赤子を抱いている母親はフラつきながらなんとか歩いている。


クロス「...............」


フローズ「..............」


ミク「...............」


セシル「.................」


メミル「.................」


誰も喋らなかった、いや喋れなかった、歩くたびにこちらに目を向けるもの達、どうでもいいのか、そのまま目線を逸らす人、自分たちが来たことに怒っているのか、睨みつける者様々な人達が様々な目線をこちらに向けてきている


ミク「..........クロス」


クロス「見るな、1人でも助けたらこの町全員を助けなければならない」


フローズ「今の私達にそれが出来る?」


ミク「それは.......」


ミクはそれ以上何も言えなかった、クロス達も辛いはずなのに、助けたいはずなのに、助けられるのはほんの僅か、そうなると今度はその助けられた者達が被害を受ける、救うのなら全員でないといけない、それはわかっている、わかっているけど........


クロス「まぁ、”今の”俺達だけどな」ボソ


ミク「?今何か言った?」


クロス「いや、何も取り敢えずギルドに行こう、何か情報を得られるかもしれない」


ミク「.....わかった」


周りの目線に耐えながら、彼らはギルドに向かった。


————————————————————

~ギルド~


クロス「中も同じか、誰かいないのか?」


フローズ「もしいれば、この町を救えると思ったんだけど」


ミク「え?」


今なんて言った?"救える"?この町をでもさっきの言っていることと違うような...


そう考えていると、奥から人らしき影が出てきた


受付嬢「.......いらしゃいませ、すいませんが、また後で来て来れませんか?」


この女性の状態も酷い片目に包帯を適当に巻いているのか、血が止まっていない、体もボロボロで最早今立って喋っているのが奇跡としか言えない。


フローズ「すいませんがそうはいきません、実は貸していただきたいものがあるのですが」


受付嬢「貸して欲しいもの?そんなものもうないと思いますけど」


とても皮肉に言ってくる、それは仕方ない事だ、町がこんな状況でこんな事を言うのだ、頭のおかしい連中と思われても仕方ないだろう。


フローズ「大丈夫です、壊れていなけば、なんとかなるものなので。」


受付嬢「はあ、一体何を貸して欲しいのですか?」


そう言ってこちらを見る


クロス「水晶はありますか?俺たちはベンディ王国の者です、ここは丁度ベンディ王国の最端にある町ですが、もしかしたら繋がるかもしれません」


受付嬢「!?....少々お待ちください。」


そう言って奥に戻る


それを待っていたと言わんばかりに、ミク達は声をかけてくる


ミク「さっきから何がしたいの?助けるなと、言いながら結局助けているじゃない」


クロス「俺が言ったのは"1人でも"だ、1人助けてしまうと、なんでこいつは助けて俺はダメなんだと襲う奴もいる」


フローズ「だからこそ、変な希望を持たせないで、こっそりとやるの、わかった?」


ミク「そうだったんだね、ありがとう」


メミル「でも、なんでギルドに行ってまで水晶を?」


セシル「町長の家に行けば良かったんじゃないの?」


クロス「町長もそうだが、基本ギルドは他のギルドと連携を取る為に水晶を持っているのが基本だ、それがなければ、ブラックリストの人とかわからないからな」


ミク「それなら、最初っからそれを使えば町は守られたんじゃないの?」


フローズ「そうなのよね、そこがわからないの」


クロス「もしかしたら連絡の出来ない何か事情があるかもしれないが、それはきてから聞こう」


そうやって暫く待つと受付嬢が水晶を持ってきた


受付嬢「どうぞ、こちらが水晶でございます」


クロス「ありがとう、ところで聞きたいことがあるんですけど、よろしいですか?」


受付嬢「...なんでしょう?」


クロス「何故水晶があるのに使わなかったんですか?これがあれば助かったかもしれないのに」


受付嬢「........」


クロス「?」


フローズ「.........クロス」


クロス「なんだ?フローズ?」


フローズ「.....この水晶、呪いがかけられてる」


クロス「何?」


呪いが?一体何故?


クロス「どう言う事ですか?」


それ聞こうと受付嬢に話しかける。

しかし


受付嬢「..........それは........」バタン


ついに限界が来たのだろうそのまま気を失って倒れた


クロス「!?まずい!メミル!セシル!」


助ける助けない関係なく体が動いてしまった、助けてしまうと、それを誰かが見たら面倒な事になる、しかしこの状況を知る為にはやむを得ないだろう。


メミル「わかった!」


セシル「うん!」


そう言って2人は受付嬢の側にきて回復させる.......はずだった


メミル「きゃあ!?」バチっ!


セシル「何!?」バチっ!


駆け寄った瞬間何かに弾き飛ばされる2人慌ててクロスが駆けつけ受付嬢を見ると


クロス「どうした!?....!これは!?」


彼女の周りに禍々しいオーラが漂っている、これはまさか!?


クロス「っ!?」バッ!


ミク「え?ちょ!クロス!?」


慌てて外に出るクロスに驚くミク


フローズ「............嵌められたね、これは」ギリッ


ミク「嵌められた!?」


苦虫を噛み潰したような顔をして言うフローズ、どうやらこの2人は何か感じ取ったのだろう


ミク「ねぇ、フローズ様」


フローズ「何?」


ミク「クロスとフローズ様は何かわかるのですか?」


フローズ「わかるって何が?」


ミク「今この村に起きている事です」


フローズ「ええ知っているわ」


ミク「!?なんですかそれは!」


慌てて聞くミク、それはそうだろうメミルとセシルが回復魔法を使おうとしたら弾き飛ばされる、それを見て慌てて外に出るクロス、嫌な予感しかしないが、聞かないよりはマシだろう



フローズ「レプリカよ」


ミク「!?.....やっぱり」


フローズ「ええ、ここはレプリカによって襲われ、その時に呪いかけられている」


ミク「呪い?」


フローズ「ミク、メミル、セシル、クロスが外に行ったわ、私達も出ましょう、それに出ればわかりますから」


ミク「.........わかりました」


そう言って4人は外に出る


————————————————————


フローズ「クロス」


外に出て空を見上げるクロスに声をかける


クロス「フローズ、それに皆んな」


それに気づきこちらを向く、するとミク達が声をかけてくる


ミク「ねえ?クロス今この町はどうなってるの?」


メミル「私達が回復をかけようとしたら弾き飛ばされるし」


セシル「これがレプリカの仕業なら一体何がどうなってるの?」


どうやらフローズが少し説明をしてくれたのだろう、そして今起きている事を説明する


クロス「ああ、これを見てくれ.....はあ!」ザン!


空に剣を振り斬撃が空高く......行かず、途中でバチュンと音を立てて消える


ミク「これは?」


クロス「結界だ」


メミル「結界?」


ああ、と言って周りを見る


クロス「この町はレプリカの結界で外に出られないんだ、多分水晶もその影響で使えないんだろう」


ミク「じゃあなんで私達はここにはいれ.........まさか!?」


それに気づき、ミクは青ざめる


クロス「そう」


フローズ「レプリカの人形となった者が一時的に結界を解き、私達が入った瞬間再び張ったんでしょう」


レプリカ本人がいるなら今頃来るはずだ、それがないと言うことはまたあいつに魂を売った者なのだろう


クロス「しかも俺が全力でやった斬撃が消えるほどの結界、中々の実力者だ」


そう言って冷や汗をかく


メミル「てことは私達は」


セシル「もしかして」


メミルとセシルも焦りながら言う


クロス「ああ、俺達以上の実力者によってこの町に囚われたって事になるな」


クロスはそう焦りの声をあげながら言った


————————————————————

続く


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