第28話 謝罪

クロス「...な!?」


別の部屋からぞろぞろと出てくる人達、それを見るや否や彼女達はその人達の元に行き、ひたすら謝っていた

ごめんなさい

裏切ってごめんなさい

酷いことをしてごめんなさい


泣きながら、何かに祈るように謝罪していた。


フローズ「え!?....嘘、なんで?」


フローズはある人を見た瞬間、絶句していた


クロス「フローズ、あの人がどうかしたのか?」


そう聞くと、フローズは恐る恐る言った


フローズ「クロス、あそこにいるの、私の友人の婚約者なんだけど、....”自殺”したの」


クロス「......はぁ!?じゃあなんでいるんだよ!?」


そう言えばフローズとこっそりと会っていた頃に聞いたような気がする

婚約者を寝取られ、一族を潰されて、

自殺したと では何故その人物が今ここにいるんだ?


信者「それについては私の口から説明いたします。」


そう言って信者は話し出す。


信者「私達聖教会は、勇者様をいや

女神様を信仰しています。」


そう、だからこそこの宗教団体は権力が高く、勇者の冒険を陰ながら支えていたのだ。


そのため今回の屑勇者もそうだろうと思い、国王を筆頭に警戒していたのだ。


信者「しかし、女神様に信仰していますが、私達も1人の人間、勇者の悪行には我々も手を焼いていました」


しかし、勇者の悪行を知っていても、

女神様の意思だとか言って何もしなかった連中だ、どこからどこまで信用すればいいのだろうか?


信者「勇者様の行動は女神様の意思、その事を尊重すべきと、我々は言ってきました」


信者「だからと言って、人として勇者の行動を見過ごせる程、私達も狂乱に成程の信仰はありません。」


信者「なので、各国の聖教会に連絡をし、魔王を倒すまでの間、勇者の被害にあった者達の保護と治療をやるようにしました。」


信者「こんな事を見過ごせば、信者は減り信仰は無くなりますからね」


信者の話を一通り聞いて考える


つまるところ、聖教会は表では勇者サイドにいたが、実は裏ではこちら側の人間だったと、そう言いたいのか?


フローズ「でも、私の友人の婚約者は自殺したはず!なんで生きているの!?」


フローズは一通り聞いた後そう質問した


そうフローズは見たのだ、残酷だが友人の婚約者の死体も見たのだろう、顔が青ざめている。


そっと抱き寄せて、フローズを見るリスのように縮こまってこちらを見る

そうすると安心したのか震えが収まり

信者の返答を待った。


信者「フローズ様が見たのはきっと私達が作った偽物ですね。」


フローズ「偽物?あんなにもそっくりだったのに!?」


信者「はい、そうしなければ彼らは勇者の親と特に仲が悪い貴族でした、話を聞くと暗殺の話もありましたので、こちらに避難させました」


信者「因みにあれは、別の犯罪者に魔法で顔を変え、その後、首を吊らせたので、きっとそれを見たんでしょう。」


フローズ「....成る程そうだったのね、ありがとう」


信者「いえ、元はと言えば表立って行動しなかった私達が悪いのです、此度は本当に申し訳ございません」


そう言って深々と頭を下げる


クロス「まぁ、許せないところもあるが、貴方達聖教会がいなければ私達では彼女達をどうにもすることが出来ませんでした、こちらこそありがとうございます。」


クロスも頭を下げる、彼女達を許すかどうかは、その家族に任せよう、問題は


フローズ「.....クロス」


クロス「.....ああ」


ミク「............」

セシル「..........」

メミル「..........」


彼女達だ


————————————————————

勇者の魅了はとても強力だ、その為その呪縛から解放するためには、莫大な魔力と精密な呪術が必要だった。


ただ眼を斬るだけではその効果は消えない、効力は残り続ける

(ただし、これ以上の被害は目が見えるようなるまでは出ない)


あの時勇者にやった攻撃は相当神経を使っていた、攻撃を避けたり、わざと技をくらい、相手の精神を乱しその効力が最も壊れ易い時に狙ったのだ。


その方が効果はきれやすくなるからだ


......その代わり、本当は魅了を受けた者はゆっくりと精神を安定させながら戻るのだが、それが無くなり一気に来た為


今の彼女達のようになってしまったのだ


これは彼らの誤算で、ここまで酷くなるとは考えていなかった。


クロス「...............」


クロスの人生を狂わせた3人、嫌いではなかった、寧ろ好き"だった"


ただクロスは自由が欲しかった、好きな友達と遊び、色んな所を探検し、あの村で穏やかに暮らしたかった、ただそれだけだった。


彼女達の異常な束縛で彼の精神は壊れ彼女達に嫌悪感を抱いていた


だけど、彼女達を見て心が痛む、あの頃

の面影はもうない、彼女達が4職の職業に選ばれたのは、奇跡であり、

まさか肉体関係を持つとは考えていなかった。

(忘れてはいけないが、マンルは勇者だ、他の人達ならまだしも、一緒に冒険に行く仲間が妊娠したら魔王討伐どころではないので、流石に大丈夫だろうと考えていた)


彼女達に歩み寄る、ビクッと体から震えている、怖いのだろう拒絶されるのが、それ程の事を彼女達はしたのだから。


そしてクロスは近づいて、
























3人を抱きしめた





ミク「.....!」


メミル「......クロス?」


セシル「あ....ああ....」


クロス「...お帰り、皆んな」


その一言で彼女達は救われた気がした。

その言葉で帰って来ていいと、帰る場所があると、無いと思っていた

私達は大切なモノを捨てて来てしまった。

なのに、なのに....彼はクロスは


ミク「あ...え....えぐっ」ポロポロ

.......温かい


メミル「.....グスッウグッぅああ」ポロポロ

.......いつものあの感覚


セシル「ああああああああ」ポロポロ

......大好きだったのに!


裏切ってしまった、大切なものを全て失った

キスも初めても、最早初めてのところはない、それ程の事を勇者とヤった


なのに彼はクロスは、まるで何事もなかったかのように私達を抱きしめてくれた。


クロス「おいおい、おかえりって言ったんだから言うことあるだろ?」


いつもの口調で言う、ありがとう....本当にありがとう!!!


そう心で思いながら、息を吸い3人で一緒に言う


ミク•メミル•セシル

「「「ただいま!!!」」」


————————————————————

フローズ(.....どうやら他のところも大丈夫そうね、これも多分聖教会のお陰かな?)


フローズは他の人達を見ていてそう思った


もしかしたら許してもらえないところの方が多いのではないか?と考えていたが、聖教会が彼らに何かしたのだろう、洗脳や催眠ではないが、ここまで優しく抱きしめたり等しないだろう

(まぁ、一部では思いっきり殴られたりしてるけど、まぁその後仲直りしているが)


信者(..........無事に皆のところに戻りましたか)


彼女ら聖教会がしたのは、勇者が魅了を使い、操っている事を教えていた。


そして勇者が旅立つときを見計らって彼女達を捕まえ、魅了を解こうとしていたことを


4職の職業の剣聖、聖女、賢者には諦めてもらうが、それ以外ならなんとか出来かもと思い、裏で準備していたことを


それを踏まえて失敗する確率の方が高いが、それまで彼女達を待っていて欲しいと説得していたのだ。


しかし、クロスが英雄となり、

勇者マンルを倒し魅了を解いたことは

誤算だったが、彼らがいなければ

この結果にはならなかったかもしれない。


信者「ありがとうございます、英雄クロス様」


そう口にこぼし、この光景を眺めていた。


————————————————————

おまけ


友人(デボ)「アイン」


友人の婚約者(アイン)「....デボ」


婚約者のデボを見る、その姿はあの頃とは比べものにならない程にやつれてる、まるで世界に絶望したかのような


デボ「アイン」


無機質な声で俺を呼ぶ


アイン「なんだ」


デボ「私の事、好き?」


アイン「え?」


いきなりどうした、何故そんな事を


デボ「答えて!?お願い!?」


体が震え涙が滲んで見える


アイン「.....嫌いだな」


その言葉を聞いてデボこちらを見ながら笑い始めた


デボ「あ、あはは、あはははははははははははははははははははははもう無理だよね、そうだよね!私は貴方を裏切った目の前で裏切った貴方から貰ったものを目の前で笑いながら壊して、あまつさえ、あんな奴とキスまでして、それ以上のことももう数えられないくらいヤっちゃったもん、初めては貴方にあげるはずだったのに、こんな汚い裏切り者のゴミなんていらないよね?うんわかったじゃああ今から私し——」


早口で捲し立てる彼女を抱きしめる。


アイン「言葉が足りなかったな、すまない、今のそのゾンビのようなお前が嫌いなんだ、いつもの、あの頃のお前に戻ってくれるか?」


そう言うとデボは強く抱きしめ


デボ「うん.....うん!!」


泣きながらそう誓いそして


デボ「アイン!、アイン!!好き!!この世で1番!!!誰よりも愛してる!」


アイン「俺もだよ、デボ」


そう言って2人は強く抱き合った、もう2度離れないように、離れられないように、強く強く抱き合い、

口付けを交わした


デボ「ありがとう、アイン」


泣きながら、しかし先程まで消えていた目の輝きは少しずつ戻ってきている


アイン「どういたしまして、あ、思い出したけど」


デボ「?」


俺は顔をポリポリしながら顔を赤らめて言う


アイン「お前さ、前に誕生日会で間違って酒飲んだ日あったろ?」


デボ「うん」ぎゅゅゅーー


胸元に顔を埋め、デボは話を聞いていた。


アイン「お前は覚えてなかったけどな」


デボ「....うん」


アイン「あの時にキスしたんだよ『私の初めてのキス、アインにあげる~』って」


デボ「....うん?」


アイン「その後、お前布団まで運べ!って命令して運んで」


デボ「んんん!!?」


アイン「出ようとしたら、その....あの....襲われて?」


デボ「.............」


アイン「その一夜でいろんな事をされました。はい」


デボ「.............」


アイン「つまり~その~一応?お互いに初めてを捧げたんですよね~。」


デボが途中から喋らなくなった、怖ええ


デボ「」ボソ


アイン「ん?」


デボ「よがっだぁぁぁぁ」グスッ


アイン「.....デボ?」


ちょっお前鼻水!あー涙で服がぐちゃぐちゃに!


デボ「アインーーー!!!」


アイン「んおわ!?何どうした?」


俺の名を呼び手を首の後ろに回した


デボ「えぐっグスうぇぇぇぇぇぇん!!!!」


それ程までに嬉しかったのか更に強く抱きしめてくる、ちょっと苦しい


でも、ここまで泣いているデボは初めて見る、本当に辛かったんだな、俺も心が折れそうだったよ、本当に辛かったよ....本当に本当に....!!!


涙で視界が滲む好きな子の前ではかっこよくいたいがもう無理だ限界だ


アイン「ばがやろゔ!!!どれだげ!どれだげ、ギズづいだが!!」


デボ「ごめんなざい!!ごめんなざい!!」


2人は更に強く抱きしめながら何度も叫び、何度も泣き、疲れて倒れて信者に医務室に運ばれるまで続いた、

その時、2人の抱き合ったままで、

外そうとするが、外れず仕方なく

2人で1人用の布団に運んだが、

2人は抱き合ったまま気持ちよさそうに寝ていた。

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