第13話 アルテミス、新たな神獣と契約する

 私は、フェニックスの話を聞いて、涙が溢れてきて泣いてしまった。


 色々な思いが駆け巡って、嬉しさ、寂しさ色んな感情が入りまじった涙だ。


「どうしたんだい?アルテミス」


「どうしたの?」


 急に泣き出した私の元にやって来て、お父様とお母様が泣き出した理由を聞いてきた。

 イリスも心配そうな顔している。


「グスン……私を助けるためにお父様とお母様が国を出る原因になった風習が……グスン……廃止になるかもと聞き……グスングスン……お父様とお母様が国に戻れるのと姉様に会えるという嬉しさ……グスン……最近、森からも出れるようになり出会った人々、森に住む魔獣や動物のお友達と……グスングスン……別れなければならないという悲しさが沸き上がって来て、涙が出てきてしまいました……グスン」



 私はみんなに涙の理由を涙ながらに説明した。



「そうか。アルテミスは、優しい子だね。

 まだ廃止されたわけじゃないから今すぐカルディナ王国を離れるとかではないからね。

 でも、いつ離れることになってもいいようにたくさんいい思い出を作っておけばいいんだよ。

 それにラルフェーリア王国に戻ったとしてもカルディナ王国は友好国だから二度と来れないわけじゃないからね。安心しなさい」



「そうね。いつまでもその優しさを持ち続けてね。それに風習が廃止されるのであれば、カルディナ国王の提案は、とてもアルテミスのために役立つわね。賛成しといて良かったわ」


 お父様とお母様が泣いている私を慰めてくれた。

 優しい二人の子として生まれて本当に良かった。


「あと一つ聞いてもいいですか」


「なんだい?」


「なあに?」


「フェニックスってハイエルフやエルフにとって特別な存在なのですか?」


「そうだよ。フェニックス様は、ラルフェーリア王国の守護神獣様なんだよ。

 私たちハイエルフやエルフたちを護ってくれている存在だね」


「そんなことないよ。ラルフェーリア王国の初代国王だったルシファーとの契約で、何かあった時にちょっと手助けをしてあげているだけだからね。

 まあ、ルシファーのどんなことがあろうと子供は大切にという想いを無下にするような風習を作ったラルフェーリア王国に対して、僕も我慢の限界だからこのままだと守護神獣の役目を辞めるつもりでいるけどね」


 初代国王のルシファーさんは、フェニックスにとって大切な存在なんだね。


 今のままだとフェニックスが守護神獣を辞めてしまう。

 そうすると何かあった時に助けてくれなくなってしまう。


 ラルフェーリア王国には、お姉様も叔父夫婦と従弟もいるのだ。


 お父様とお母様に連れられ生まれて直ぐに国を出た私には他のハイエルフやエルフたちのことまでは考えられないけど、身内が困るようなことはない方がいい。


 それにフェニックスの大切な初代国王が愛した国なのだどうにかしてあげたいと思った。



「そうだ。アルテミス。アルテミスはルシファーに似ているから僕と契約しようよ。

 そうしたらアルテミスがラルフェーリア王国の王にならなかったとしてもラルフェーリア王国の守護神獣を続けてあげるよ」


「よろしくお願いします」


 私は、フェニックスの提案に迷うことなく即答した。


「じゃあ、名前を付けてくれるかな」


「初代国王と契約していたなら初代国王から付けてもらった名前があるんじゃないの?

 名前を捨てることになっちゃうと思うんだけどいいの?」


「大丈夫だよ。ルシファーとは魔力だけによる契約だったから名付けはされてない。

 アルテミスとするのは、魔力と名付けの契約だから最も強固な契約だよ。

 魔力は、僕の怪我を治してもらった時にもらったからあとは名付けだけだよ」


「じゃあ、ルクス」


「うん。気に入った。今日から僕はルクスだ。

 カエサルとマリアも今後はそう呼ぶようにね」


 こうして私は、新たな神獣との契約を完了した。

 あとはラルフェーリア王国の風習が廃止されれば、ラルフェーリア王国は大丈夫だね。


 初代国王ルシファーからルの一文字もらって、フェニックスのクスを合わせてルクス。

 我ながら安易な名前にしたものだ。

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