第11話 アルテミス、両親の思いを知る

 森にある家に帰って来た私は、色々あって疲れているだろうからと外に行かせてもらえず、家の中でゆっくりすることになってしまい。


 つまらないので、イリスに顔を埋めて、モフモフして毛並みを堪能していた。


「アルテミス。そんな不貞腐れるな」


「そうよ。お父さんもお母さんもアルテミスの事が心配だから今日は、家の中に居なさいと言っているのよ。

 お利口さんのアルテミスならわかってくれるわよね?」


「お父様とお母様のお気持ちはわかります」


 今日は、トラブルに巻き込まれたし、初めて行った場所や会った人たちによる環境の変化で、精神的に疲れて体調を崩してしまわないかを心配してくれているのだろう。


 前世でも事故により、両親に大変迷惑を掛けたし、心配させた。

 そして両親より先に死んでしまうことになり辛い思い、悲しい思いをさせてしまった。


 なので、神様が長生きできるように色々と特別にしてくれたと言っていたけど、体調を崩さないという保証はないのだから今世では、自由気ままに楽しむつもりでいるが病気などで寝込んだりして体調面で両親に心配を掛けないようにしたいと思っている。


「マリアも賛成したから仕方なく了承したけどアルテミス、本当に良かったのかい?たまにとはいえ王城に行くことにして」


「私のことですし、私が決めたことなのでいいのです。

 私にも何かメリットがあるかもしれませんしね。

 それに公式の場ではないとはいえ、国王陛下と一度した約束したを今更、反故にできませんよね?」


「ロベルトとは、私が国王だった時から親しい関係だったからな。

 公式の場ならともかく今日のは、ほとんど私的な場だったからやっぱりやめると言ったとしても大丈夫だ」


 大丈夫なんだ……。

 でも一度した約束は守らないといけないよね。



「それに王城という所は、ロベルトや王妃、王太子のようにいい者ばかりがいるわけではない。

 圧倒的に腹に一物のある自分たちが私腹を肥やすしたり、どんな手を使ってでも自分の家を繁栄させようという者ばかりだ。王城とは魔窟なんだ。

 正直に言うとそんなところにアルテミスを行かせたくないんだ」



 私は、前世では一般人だったし、今世も王城で生まれはしたが、今は王城で暮らしていないから王城がどんな場所なのかわからない。

 でもお父様とお母様は、国王と王妃としての経験があるので、特にお父様は心配してくれているのだ。


「お母様は、なぜ賛成してくれたのですか?」


「私も心配はありますが、アルテミスをいつまでも森の中での生活だけでなく、森の外で人と関わってもらいたいですし、今後もし国にラルフェーリア王国に戻れた時にアルテミスは、王族や貴族と必ず関わることになるのですから今のうちから少しずつそういう環境に触れておいた方がいいと思ったからです」


 なるほどね。経験しておけば、風習が廃止されエルフの国に戻ることが出来た時に対応できるようにって思いがあったんだね。


 エルフの国に戻れば、お父様は元国王、お母様は元王妃なのだから私が一般の民として扱われるわけが無いもんね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る