孤独



 私はずっとひとりだ。いつだってそう。誰も私を一番にはしてくれなかった。ほんとうの愛とか、真の友情とか、そういうものには触れたことがない。望んでいたはずのものはだんだんとどうでもよくなってくる。友達なんていらない。


「本当?」


 私の顔を覗き込む少女。私の唯一の親友だった。にこ、と微笑んで私の頭をわしゃわしゃと撫でる。


「私の前では本音言っていいんだよ」


 優しいその声が私の体中に柔らかく響いて、心をあっためていく。彼女がいてくれれば他には誰もいらない。何もいらない。それくらい彼女の存在は私にとって大きいものだ。


「本当はずっと寂しい」


 本当のことを言うと、そっと寄り添ってくれる。悲しくなったら、手を握って、抱きしめてくれた。彼女のあたたかさに私はずっと助けられていた。人目も憚らず、私達は抱き合ったままだ。だんだん涙が溢れてくる。どうして、こんなに満たされているのに。




 気がつけば私は遮断器の降りた線路にいて。踏切の前、彼女は立っている。私に手を伸ばして、語りかけてくる。


「早くこっちに来て!」


 なぜだか私は手を伸ばせない。自由が効かない。金縛りにあったみたいな感覚だ。電車が迫る。地面から振動が伝わってくる。体が揺れる。このままだったら死んでしまう。でも、それでもいいような気がした。ブレーキ音が耳いっぱいに鳴り響く。




 夢から覚めた気がした。いや、覚めてしまった。幸せな夢を見ていたはずなのに。私は踏切の前にいた。全部逆だった。彼女はもうそんなこと言わない。言えない。


「怖い」


 ただその一言は私の心を芯から冷ましていったんだ。




 あの手を、取ってしまえばよかった。

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