139 このまま手を【切る】

「拓くんも私のことをばかにしてるんでしょ」

 彼女は包丁を握りしめて僕を睨んだ。

「ばかになんかしてないよ。一旦落ち着こう。包丁を置いて?」

 僕の言葉に首を横に振る。

 包丁を持つ彼女の手は細かく震えていた。

 僕は弱り切ってしまう。

「私だってリンゴぐらい切れるんだから!」 

 母さん早く帰ってきて。

 


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