第44話 大当たりではないか
ブラッディミノタウロスを倒すと、部屋に宝箱が出現した。
「ダンジョンの攻略報酬だね」
「何が入ってるっすかね! ……あ、また魔物が化けてるって可能性も」
嬉々として近づこうとしたガイザーが、ミミックのことを思い出して慌てて動きを止める。
セレナがきっぱりと首を振った。
「その心配は要らない。さすがに攻略報酬でトラップなど、今まで聞いたことないからな」
「え? 何度かあったけど?」
「……え?」
「正確には、実は第二のボスがいて、宝箱を開けた瞬間に、床が崩れてそのボス部屋に落とされるってパターン」
第二のボスどころか、第三、第四のボスがいることもあったなぁ、と呟くエデル。
「だんだん君が言うダンジョンというのは、私たちが考えるダンジョンとは別物なのではと思えてきたのだが……」
ともあれ、目の前の宝箱には何の危険もなさそうだ。
エデルが開けると、中に入っていたのは一辺がニ十センチほどの立方体の新たな箱だった。
何の装飾も施されていない、ごくごくシンプルなそれを取り出し、眺めるエデル。
「アイテムボックスみたいだね」
「アイテムボックスだと!?」
セレナが目を丸くした。
「大当たりではないか! 今までも色んな攻略報酬があったが、ここまで貴重なアイテムは初めてだぞ!」
「ダンジョン探索が大いに捗りますね!」
リンも嬉しそうに言う。
しかしそこでハッとしたように、
「い、いや、よく考えたら、今回の攻略は完全に君だけの力だ。これまで部の探索中に手に入れたアイテムなどは、部の所有ということにしていたが、さすがにそういうわけにはいくまい。その報酬は君個人のものとすべきだろう」
「た、確かにそうですよね……私たち、何にもしてませんし……」
二人そろって、エデルのものだと主張する。
だがそれをエデルは断った。
「いや、あげるよ?」
「なに? 遠慮することはないのだぞ?」
「遠慮じゃなくてさ。単純にアイテムボックスが要らないんだ」
「……?」
首を傾げるセレナに、エデルは言う。
「だって、自前の亜空間に保管しておけばいいし」
「そ、そういえば、君は時空魔法が使えるのだったな。だが、その容量にも限界があるだろう? ならばアイテムボックスを所持しておいた方が……」
「容量はあるけど……だいたい王都がすっぽり収まるくらいかな?」
「は?」
スペースは大いに余っているのである。
「見た感じ、これの容量はせいぜいこの部屋の半分ぐらいだね。正直、あってもなくても一緒かな」
「こ、この部屋の半分……相当な大容量だと思うが……確かに、王都と比べたら……」
「ついでに言うと、アイテムボックスが必要なら、自分で作ったらいいだけだし」
「作れるのか!?」
「うん。魔道具の作り方は、じいちゃんから教わったしね」
今もエデルの亜空間の中には様々な試作品が眠っている。
その中には、もしかすると自作のアイテムボックスも入っていたかもしれない。
「というわけで、はい」
「本当にいいのだろうか……?」
「もし要らないっていうならオレが貰うっすよ!」
「……君にやるくらいなら部で貰っておこう」
部屋の中央には、ダンジョンの外に転移することが可能な魔法陣が浮かび上がっていた。
それを使って、四人は一気にダンジョンを脱出する。
「ぶ、部長!?」
地上に出ると、探索部のメンバーたちの姿があった。
「ぶ、無事だったんですか!?」
「ああ、見ての通りだ」
「一体、何があったんですかっ? 壁の中に消えていったかと思ったら全然戻ってこないし、壁はどんなに頑張っても壊せないし! 今はいったん態勢を整え直して、改めて救援に向かおうとしていたとこだったんですよ!」
「心配かけてすまない。ええと……何から説明したらいいのか、説明しても信じてくれるか分からないが……我々はダンジョンボスを倒して、転移の魔法陣を使って脱出してきた」
「……へ?」
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