まことの思い


 文化祭翌日、俺は保健室に来ている。

 保健医の諏訪先生に恋愛相談をしていた。


「じゃあ飯田君は、四葉ちゃんと夕月ちゃんとで揺れてるのね……って、揺れてるほどでもないかな」


 え?

 先生は何を聞いていたんだ?


「いや……その二人の間でゆれてるんすけど」

「でも、君は選んだでしょう? 夕月ちゃんのことを。四葉ちゃんよりも」

「……まあ、そうですけど」


 文化祭二日目の終盤。あのときは夕月が体調不良だったのだ。

 ほっとけなかったじゃないか。


「保健室にあの子をおいて、四葉ちゃんに会いにはいけたでしょ?」

「そりゃ……」


 たしかに、まあできなくはない。

 けど実際のところ、俺は四葉に会いに行くことをしなかった。


「夕月ちゃんの方が大事だったから、じゃない?」

「…………」


 ……そうだ。

 俺はあのとき、たしかに夕月の方が心配だった。


 四葉より、心弱いあの子を、ほっとくことができなかった。


「飯田君。人の心は、行動に反映されるって私は思うわ」

「行動……」

「うん。ほら、心って見えないでしょ? でも行動は見える。その人の本当の思いは、頭じゃ無く行動に出る物だと思うわ」


 先生は苦笑しながら俺に言う。


「飯田君、私とえっちするとき、遠慮無く中に出すでしょ?」

「え、まあ……」


 特に何も気にせず出していたな……。


「大事に思ってる女の子に、そんなことはしないよね」

「え……?」

「え」


 ……全員に普通にだしてるんすけど……。


「あー……」


 気まずそうに諏訪先生が目をそらす。


「それは飯田君、直した方がいいかもね……ごむはつけよ?」

「そ、そうっすね……」


 とにかく、と諏訪先生が言う。


「二日目に夕月ちゃんを選んだ、って無意識の行動が、君の本当の思いなんだ……と、背製は思います」


 ……ようするに、俺は四葉より夕月の方が好きだと思ってるってことか。

 どうなんだろうか、わからない。


 納得できるような、できないような。

 そんな俺を見て先生が羨ましそうに言う。


「そんな風に恋に頭を悩ませられるのは、若井うちだけよ。だから、しっかり悩みなさい」


 最後は先生らしい言葉でしめてきた。

 貞操観念ちょいゆるいけど、ちゃんと先生なんだなぁって思いながら、俺は最後に1回やった。


 いや、だって先生が誘惑してくるからさほら……。

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