39話 進化した亮太【先行版】
俺がみしろを抱いてから、数時間後。
「…………」
彼女はベッドの上で失神していた。
体からは力を抜いているはずなのに、筋肉がけいれんしている。
ドンドンドン……!
部屋の外から乱暴なノック音がした。
誰だろうか、と思ってドアの近くまでいく。
『動くな! 警察だー!』
ドア向こうからそんなセリフが聞こえてくる。
「! りょ、亮太君……どうしよう……」
ベッド脇に座っていた、全裸の
「きっと姉さんの声が響いて、通報が入ったんじゃ……」
「いや、大丈夫だよ」
たぶん、違うから。
『犯人に告ぐ! さっさとでてこーい! 出てこないとりょーちんがおっぱいフェチだってバラすぞー!』
ガチャ。
「誰がおっぱいフェチだ」
そこにいたのは、ショートカットの美少女、
彼女は俺……というか、俺の下半身を見てにっこり笑う。
「りょーちんのサイクロンマグナムのバッテリーは、レース後でもフル充電だね♡ よっ、絶倫!」
「誰がサイクロンマグナムだ」
「まぐなむとるねーど!」
といいながら俺の股間を触ろうとしてきたので、ひょいっと避ける。
「んで、やったか? 性欲モンスターは討伐した?」
「ああ、あそこで伸びてるよ……」
「ほほう、では失礼」
ひょこっ、と四葉……そして後ろから
「ゆりちゃんも現場検証? それとも夜のおかずを拝借に? んもー、あんたも好きね~」
「ち、ちちがうわよ! あんだけ騒いだんだから、体調が心配なのっ!」
諏訪先生がみしろのもとへやってくる。
「ありゃー、これは……やりますねぇ!」
四葉がぐっ、と親指を立てる。
眼下には気絶中のみしろ。
「あ、梓川さん大丈夫しっかり……! い、生きてる……わよね?」
先生が脈を測ったりしてみしろの状態を確認する。
ホッ……と安堵の息をする。
「とりあえず無事ね。水分補給が必要かな」
「あー、こんだけ色んなもん、体から出しちゃねー」
四葉がぐっしょり濡れたベッドを見やる。
その間に諏訪先生はいったん部屋から出て行った。
「これ全部みしろんの?」
「ああ……」
「うひー、えっぐ。りょーちん容赦なさすぎひん?」
「いつも通りやったんだがな……」
普段、
「経験値つんでパワーアップしたんじゃね?」
「かもしれんな……」
そんなつもりはなかったが、みしろはだいぶ早い段階でノックアウトしていた気がする。
「無自覚股間無双か。次回作はこれでいくか。しかしまた運営とBANレースは避けたい……次は正統派ラブコメを書きたいかな」
「おまえは誰に何を言ってるんだ?」
ややあって。
諏訪先生はみしろの面倒を見ている。
ぬるま湯で彼女の裸を拭っている。
「ほいじゃアタシはこのびしょぬれぐしょ濡れベッドをどうにかしとくから、りょーちんはお風呂入ってきな」
「いいのか?」
「おうよ。疲れてるんしょ? いったん風呂入ってリセットしてきな」
ありがたい。正直みしろので色々と汚れてしまったからな。
「あ……」
ちら、と四葉が
「ゆづちゃんよ、我らがご主人様のお背中を流す大臣ににんめーします」
「なにそれ……?」
困惑する
「ままま、積もる話もあるんだろーよ。だからお風呂で語り合ってきなって。大丈夫、この部屋とみしろんの世話は任せときな」
「四葉ちゃん……」
「ゆりちゃんが全部やってくれっから」
「あたしが全部やるの!?!?」
突然話を振られて、驚愕する先生。
「なに、やなの?」
「贄川さんも手伝ってよ! 気絶してる子って結構重いのよ?」
「やー、あたし非力な一族に産まれた、か弱きレディだからなぁ。お姉ちゃんもお兄ちゃんもみんなモヤシだしよー」
確かこいつの兄貴ってゴリラじゃなかったか……?
というかお姉ちゃんいたのか。
姉貴もあんなターミネーターな感じなのかな……。
「アタシは現場監督やっから。ゆりちゃん後処理よろ」
「手伝ってよ!」
「りょーちーん、この子犬が言うこと聞きません」
「誰が子犬なのよっ?」
……二人で話したいこと、あるって顔だ。
四葉はそれを察して二人きりにしてくれたのだ。
「先生」
「わかりましたご主人しゃまぁ♡ ぜーんぶ後片付けやっときましゅぅう♡」
まだ何も言ってない……!
「ほいじゃ、いってらりょーちん、ゆづちゃん」
ひらひら、と四葉が手を振る。
ぽん、とそのまま俺の肩をたたく。
「まー、あれだ。うん。他の子のことはとりあえず、考えなくて良いから」
にしし、と笑いながら四葉が言う。
「ゆづちゃんの思いに、真摯に向き合ってやんなよ。あたしとかゆりちゃんとか、そこのセックスモンスターのことは、二の次でいいからさ」
そう言って、四葉は俺たちを送り出してくれたのだった。
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