32話 元カノ、壊れる【先行版】



 飯田 亮太が贄川にえかわ 四葉とともに、自宅で行為を繰り返してる、一方そのころ。


 みしろは真面目に授業を受けていた。


 ……否。


「(×××、×××ほしい♡ ご主人様の×××がほしいよぉ♡)」


 みしろの頭の中は、完全に壊れていた。

 亮太に性奴隷になると誓った、あの日から3日。


 みしろは返事をもらえず、放置されている状態だ。


「(ご主人様のあの×××で、わたしの×××を×××にしてほしい♡ ああ、×××、×××ほしいよぉ……)」


 もう頭の中は亮太でいっぱいだった。


 ……正確に言うと亮太の持つ×××(伏字)である。


「(ああ、×××好き♡ ×××ほしい♡ ああ×××♡ ×××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××)」


 既にまともな思考は失われていた。


 それも仕方ないことだ。


 みしろはもともと、人よりかなり性欲が旺盛だ。

彼女が女性を好きになる、という嗜好。


もしも男とやってしまうと、彼女自身の持つ巨大すぎる性欲が暴走してしまいかねないから。


無意識の防衛反応が、みしろを同性愛者にしていたのだ。


……そんな彼女が、亮太というオスを見つけた。

彼からもたらされる快楽によって、たくさんの女たちが堕ちていった。


その様を見て、みしろは限界を超えた。


もう頭の中は亮太でいっぱいである。


亮太に早く奴隷にしてほしいとばかり考えている。


日がな一日、亮太との行為を想像し、人前だろうと構わず妄想する。


家に帰っては部屋にずっとこもって繰り返している。


期待を持たされ、けれど肉欲を満たされない今、彼女はもう完全に亮太に思考を支配されていた。

 

「(わたしはなんて馬鹿だったのです……? 亮太君ごしゅじんさまを拒むなんてことをしてしまうなんて……。亮太君ごしゅじんさまは他の気持ち悪い男どもと違う、くらべものにもならないくらいの、素敵で最高なお人だったのに……私は、なんて愚かな……)」


 みしろは心から亮太を振ったことを後悔していた。


 ……とはいえ。


「(今すぐ亮太君に鞭で叩かれながらごめんなさいごめんなさいって謝りたい♡ ぐりぐりと頭を踏みつけられながらでもいいなぁ♡)」


 性欲にまみれたみしろの頭では、まともな思考は生み出されない。


「梓川さん、大丈夫ですか?」

「あえぇ……?」


 今は数学の授業中であり、教師から当てられていた。


「気分でも悪いのですか?」

「らいよーうれす……♡」


 大丈夫ですと、全然大丈夫じゃない表情で言う。


 もうずっとみしろは片手をスカートの中に入れていた。


「ほ、保健室にいってきなさい」

「♡」


 保健室、という単語だけでみしろはむらむらしてしまった。


 亮太が他の女を、保健室で抱いていたことを思い出したのである。


 ふらふらと立ち上がり、彼女は教室を後にする。


 そして気づけば保健室にいた。


「あ、梓川さん……? 大丈夫ですか?」


 みしろを迎えたのは、保健教諭の諏訪すわ 百合子だ。


 百合子はみしろの肩をつかむ、表情をのぞき込む。


「……♡」

「だ、大丈夫かしら……目が……と、とにかくベッドで休みなさい」


誰かに命令されたという事実が、彼女の被虐欲を刺激する。


 くたぁ、と脱力したみしろを連れてベッドへ。


「熱……は、ないけど。どうしたのかしら……?」

「ほ、しい……」


 保健室のベッドに寝てるだけで、想像がかきたてられる。

 ここで彼が女を抱いていたという事実が、みしろの性欲を刺激していた。


「何が欲しいの? お水?」

「亮太君の、お×××……♡」


 百合子は、眼を点にする。


「な、なんて?」


 真面目な印象のみしろからは、絶対に口にしないだろうワードを聞いて、耳を疑う。

 一度口にしたらもうだめだった。


亮太君ごしゅじんさまの×××でみしろの×××をいっぱいいっぱい、お仕置きしてほしいのぉ♡」


「は、はぁ……」


「あのたくましい×××を×××して、それをみしろの×××に×××してほしいの♡ それでみしろに侮蔑の表情を浮かべながらみしろの×××に×××で×××してほしいなぁ♡ それから」


「すとっぷすっとぷ! わかった! 君がど変態なのはよーーーーーーーくわかったからもうやめて!」


 百合子が止めてもみしろは構わず続けていた。

 こりゃあかん、と百合子はつぶやく。


「どんだけ欲求不満なのよこの子……飯田君からお呼ばれしたこと黙っておいたほうがいいかも」


亮太君ごしゅじんさまから!?」


 急に正気に戻って、みしろが百合子の肩をつかむ。


「あの人が私を呼んでいたの!? なんで!?」

「あ、え、うん。その……やるから、来いって」


 ……みしろは歓喜の涙を流した。

 やっとだ。やっと彼が自分を求めてくれる!


「今すぐ! 連れてって!」

「ええ!? む、無理よぉ……まだ学校が」


「はやくして! はやくご主人様にあいたいの! 早くめちゃくちゃに×××してほしいのぉおおおお!」


「わかった! わかったから、女の子が×××とか言わないのぉ!」


 かつて、天使と呼ばれた優等生は、もういない。


 天使は堕ちて獣となった。

 そして、愛する雄のもとへと向かう。


 腹をすかせた野獣となって。

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