四章 匣の中の肖像
1
ジークハルトが王立学院への入学を間近に控えていた三年前の夏。彼は避暑地としても有名なウェーバー領に滞在していた。
互いの領地を行き来して
幼馴染に会える頻度も減ってしまうため、ジークハルトは会えない間の補給をするが如く、逗留中はどこで何をするにもニコラにべったりだった、そんな夏の盛りの頃。
それは、湖畔での読書に飽きてしまったニコラが唐突に始めた『
今よりもっとずっと小柄だった十三歳のニコラは「あぁ、そういえば」と何気ない調子で呟いた。
「王都の外れに、ウィステリアが外壁に張り付いた廃墟があるでしょう。あそこには、死んでも近付かないで下さいね」
───私でも、神様は祓えませんから。
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