第19話 逃れられない災難 ※レナルド王子視点

「将軍は、一体いつ倒れた!? なぜ、私に報告がなかった!」


 レナルド王子が噛み付くような勢いで、部下を厳しく問いただす。その勢いに圧倒されながら、部下は報告を続けた。


「あ、え、えっと……。確か、一週間ほど前だったと思います。私が報告しなかったのは、既に知っておられるかと思って。いや。他の誰かが、報告していたはずです」


 部下の話を聞いて、レナルド王子は過去の記憶を振り返った。だが、そんな報告はなかった。おそらく、連絡ミスである。かなり致命的な失敗だった。


「わ、私の責任ではありません!」

「……」

「うっ……」


 レナルド王子は、言い訳する部下を睨んで黙らせた。睨まれた部下は、顔を真っ青にして何も言えなくなった。


 しばらく沈黙の時間が続いた。しかし、いつまでも黙っているわけにはいかない。確認しなければならない事もある。レナルド王子は怒りを抑えて、質問を再開した。


「それで、将軍の具合はどうなんだ?」

「か、かなり悪いようです」


 額から汗を流して、焦りながら答える部下。ずっと威圧されながら、報告の最中もずっと立ち続けるのは辛い。それでも、なんとか頑張って報告を続ける。


 そんな部下の様子も、一切気にしないレナルド王子。


「戦場には出られないのか?」

「それは、……わかりません」

「ふむ」


 手元に、将軍についての詳しい情報はない。将軍の現状を聞かれても答えられない部下は、わかりません、と言うしかなかった。それを聞いて、顎に手を当て考え込むレナルド王子。


 そして、結論を出す。


「調子が悪かったとしても、我々は彼を頼るしかない。彼の他に王国軍を任せられる人間も居ない。王国の状況も、かなり悪い。だから彼に、頑張ってもらうしかない」

「で、ですが……」


 レナルド王子の出した結論に、部下が何か言おうとする。だけど。


「文句があるのなら、別の案を出せ! それも無理なら、君が王国軍を率いて戦うか? 戦場に出ていけと、命じてほしいのか?」

「い、いえ。……わかり、ました。その様に伝えます」

「そうだ。貴様は、ちゃんと命令を伝えてこい」


 絶望の表情で部屋から出ていく部下。一人になったレナルド王子は、今後について更に考え込む。ラクログダム王国を立て直すために。


 これまでレナルド王子は、必死に努力してきた。それなのに、更に状況は悪化していく。不運の原因だと思っていたカトリーヌが、居なくなったというのに。


 だが彼は、その事に気付いていないふりを続ける。この先、必ず良くなると信じて諦めずに行動し続けた。

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