第10話 パーティーボーナス略してパボ

 初ダンジョンの俺たちパーティーはまさしく初心者のように1階層から攻略を始める必要があった。

 当面は『ファストダイブ』が可能になる5階層突破が目標となる。

 ファストダイブは踏破済みの階層をショートカットできる非常に便利な機能だ。しかし、どの階層にも任意で移動できるわけではなく、一定の階層ごとに設置されている『ルナロッサの女神像転送ポイント』にしか対応していない。

 そんな無限迷宮に足を踏み入れて俺たちが最初にしたのは各々のパーティーボーナス略してパボの確認だ。


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◆NAME:ジュノン・ジュリアス

◇JOB:【忍者ニンジャ

◆LEVEL:14

◇ABILITY:〈隠密〉〈影縫:壱〉

◆PARTYBONUS:〈俊敏性UP〉

◇ASSET:〈投擲強化Ⅰ〉

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◆NAME:ラヴィアン・ラヴァース

◇JOB:【暗黒戦士ダークウォリアー

◆LEVEL:11

◇ABILITY:〈サクリファス〉〈デスパレードⅠ〉

◆PARTYBONUS:〈クリティカルダメージUP〉

◇ASSET:〈両手武器強化Ⅰ〉

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◆NAME:エドウィン・エスティマ

◇JOB:【自然術士ドルイド

◆LEVEL:10

◇ABILITY:〈癒しの木漏れ日Ⅰ〉〈妖精の羽ばたき〉

◆PARTYBONUS:〈マナ持続回復量UP〉

◇ASSET:〈回復持続時間UPⅠ〉

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◆NAME:ルルーシャ・ルブラン

◇JOB:【呪術師シャーマン

◆LEVEL:7

◇ABILITY:〈楔の呪縛Ⅰ〉

◆PARTYBONUS:〈敵の攻撃命中率DOWN〉

◇ASSET:NOTHING

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 パボこそがダンジョンでパーティーを組む最大の利点と言ってもいい。なんと四人分の恩恵が無条件でパーティー全体に反映されるのだ。


「全体的に悪くないじゃん。自然術士ドルイドの〈マナ持続回復量UP〉とかすげー助かる」


 魔力マナとは万物を構成する主要元素だ。この世界のあらゆる事象や行動に対価として支払われる。当然アビを使用すれば相応のマナが俺たちの肉体から失われる。

 失ったマナを人間は食事や睡眠などで補う。さらには大気中から持続的に取り込み補完しているのだが、エドのパボはそのマナの自然回復量を増やしてくれるという優れものなのだ。


「派手ではないけど、どんな場面においても決して腐ることのない汎用はんよう性の高いパボだと思うよ」

 褒められて嬉しそうなエドとは対照的にラヴィが暗い顔で肩を落とす。

「ふむ……やはりあたしのパボが一番の役立たずだな」

「ラヴィ。気落ちするのは早いって」

 小さな身体をさらに小さく縮める鬼っを間髪入れずに励ます。


「確かに『クリティカルダメージUP』は前提として『クリティカルを発生させる』という条件をクリアする必要はある。ただ『クリティカル発生率を高める』こと自体はそこまで難しくなくない?」


「だね。その手の効果が付与された装備品は低階層でも割とドロップするらしいね」

「だよな。極端な話、その手の装備で全身を固めちまえばラヴィのパボが大化けする可能性だってあると思う」

「なるほど! 要はやりようということですね!」

「……ふむ。そう考えると少しは希望が持てるか」

 ようやくラヴィの口元がほころぶ。

「そうそう! レベルが上がって習得するアビによっても状況が好転するかもしれないしな!」

「少なくともレベルを上げて状況が悪くなることはないよね」

「ああ。じっとしていても始まらない。とにかく俺たちはやるしかないんだ。なら希望があるほうがモチベーションが上がるじゃん」

 ただの気休めかもしれない。アイテムドロップにしても覚えるアビにしても運頼みの要素があまりにも大きいからだ。

 それでも、俺は前向きになれる。なぜなら今の俺は一人じゃないからだ。

 皆が小さく笑う。嫌われ者の俺たちにとって今はそれだけで十分なのだ。

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