第5話 ラヴィアン・ラヴァーズ

 ラヴィアン・ラヴァースと名乗った青髪の彼女は鼻息荒くふんすと力説する。

「【暗黒戦士ダークウォリアー】は全ジョブ最強の攻撃ステータスを誇り、両手剣に両手斧など威力とレンジを兼ね備えた有利武器を装備可能な前衛職だ」


 身長は150cm前半と言ったところか。大柄で屈強な鬼族オーガの中ではかなり小柄なほうなんじゃないだろうか。


「だが、暗黒戦士ダークウォリアーは少々、癖が強いジョブでな……パーティーボーナスが『メンバーのクリティカルダメージUP』という扱いずらい恩恵なのだ」

 彼女は一転してしゅんと肩を落とす。


「それに攻撃系のスキルを使うと、自分のライフが削られたり、防御力ダウンが発生したりと、デメリットが大きい諸刃なジョブなんだ……」


「ラヴィ。噂で聞いたんだけど、ジョブの特性上、被ダメが大きくなるせいでヒーラー系のジョブから敬遠されてるんだって?」

 彼女もまたアカデミーの有名人である。俺と同じく悪い意味での。

「その通りだが、はっきり言わないでくれジュノン……傷つく」

 ラヴィが悲しそうに長いまつ毛を伏せる。心なしかチャームポイントの角まで縮こまっている気がする。


「ラヴィを責めてるわけじゃないさ。俺たちはこれからパーティーを組むんだ。デメリットについては最初に明確にしておいたほうが良くないか?」


「そうだね。ジュノンくんが言うように後で発覚するのはトラブルの元だよ。落ちこぼれ同士、遠慮なくいこうよ」

 イケメンの好青年が柔和な笑顔で空気を和ませる。

「そうそう。今さらデメリットどうこう言ったところで他に選択肢なんてなくない? 学期末まで二週間しかないんだからさ」

「ええ。ジュノンさんのおっしゃる通りです……わたくしは誰とも組んで貰えず藁にも縋る思いでこの集まりに参加いたしました」

 猫耳のお嬢様が白いあごをこくりと動かす。


「分かった。なら最初に言っておく。スキルの使用を控えて通常攻撃のみで戦えばデメリットを抑えることはできる。だが、それだと他のアタッカーと比べてに著しく火力は低下する……暗黒戦士ダークウォリアーの強みは死ぬ。それだけは覚えておいてくれ……」


 ラヴィが申し訳なさそうに眉尻を下げる。

「気にすんな。欠点を分かってて組むんだからさ」

 鬼っ娘が長いまつ毛をぱちくりと上下させる。

「驚いたな。暗黒戦士ダークウォリアーになってからそんな優しい言葉を誰かにかけてもらったのは初めてだ」

「奇遇だな。俺も忍者ニンジャになってからこんな気の利いた言葉を誰かにかけたのは初めてだ」

 ようやくラヴィが小さく笑う。

「ジュノン。お前は良い奴だな」

「いや、俺は別に良い奴じゃない」

 俺は即座に首を振る。


「同じ落ちこぼれだから気持ちがよく分かるだけだ。もし忍者ニンジャが優秀なジョブだったら俺の元来のお調子者の性格からして殊勝な態度は取らなかったはずさ」


 俺の軽口に三人がくすくすと笑う。緊張が解れたのだろう。少しづつだが雰囲気が良くなってきている。


「では次はぼくが。ぼくはアルファヘルム出身のエルフ、エドウィン・エスティマだ。エドと呼んでよ。年齢は40歳と少し。ジョブは【自然術士ドルイド】だよ」

 

 立ち上がると想像よりも背が高い。エドの身長は190cm近いかもしれない。それと真っすぐに伸びたエメラルドグリーンの長い髪がとても印象的だ。






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